ライフスタイル
更新2016.05.06
もしもゆとり世代の若者から「ベンツ欲しいんですけど、買っていいと思いますか?」と聞かれたら
松村 透
筆者なら「もし、何とかなるなら、男の60回ローンを組んででも手に入れて!」と答えます。
ゆとり教育世代の定義は明確ではないようですが「1987年4月2日生まれ~2004年4月1日生まれ」という説に基づくと、アラサーから義務教育の世代まで、幅広い層がこれに該当します。少なくとも、成人している彼ら(彼女)たちは、ことあるごとに「これだからゆとり世代は…」といわれることに敏感になっているように感じます。
せめて自分だけはそういわれ(思われ)ないようにしよう、と努力している(気に掛けている)方が大勢いる、というのが率直な印象です。
そんな空気を読むことに神経を使いつつ、欲しいクルマがそれなりの価格帯となると、どうしても世間体を気にしてしまうそうです。それがメルセデス・ベンツであれば、割と手頃な価格の中古車であったとしても関係ないことも理解できます。。
もしもこれが親目線だとしたら複雑な心境なのかもしれませんが、職場の後輩や飲み仲間…等々。20代の若者から、メルセデス・ベンツに限らず「ちょっと背伸びしたクルマが欲しいけど、どう思いますか?」と聞かれた際に、ぜひ以下の(もちろんそれ以外)の事例を話しつつ、ポンと背中を押してあげてください。
1.いままで頑張った自分へのご褒美に…では遅いときもある
これは若くして会社を興し、1代で何十人もの従業員を抱える企業にまで成長させた、ある経営者の方のエピソードです。会社を経営していらっしゃる方であれば「常に企業を成長させ、従業員とその家族を養っていく」ことの大変さは身に染みて理解できるのではないかと推察します。筆者も「今月も無事、みんなに給与を支払えた…」と安堵する何人もの経営者を見てきました。
そんな経営者の方が60才になったのを機に、念願だったポルシェ911を新車で購入しました。ついに若いころから憧れていたポルシェオーナーとなったのです。しかし、手に入れて初めて気づいたことがあります。クルマが想像以上にスポーティすぎたのです。確か、雑誌の記事などでは911も乗りやすくなったと書いてあったはず…。それは日々、スポーティなクルマに接している方の印象に過ぎません。
これまで大型セダンを中心に乗り継いでいた社長さんにとって、911はあまりに過敏すぎたのです。高速道路を走っていると、背後にスポーティなクルマたちがぴったりと張りつき「もっと飛ばせ」とあおってくる…。そんなことが続き、やがて乗ること自体に疲れてしまった経営者の方は、1年ほどで911を手放してしまったのです。
加齢とともに腰や膝が痛み、重いクラッチ、長時間バケットシートに座り、ローポジションを強いられるのは辛い。乗り降りが大変…等々。年齢的に、気持ちはまだまだ前のめりでも、体がついてこないこともありそうです。お子さんの運動会でお父さんたちが張り切って徒競走に出てみたものの、足がもつれて転倒…そんな光景を思い浮かべてしまいます。
2.結婚したらさらにチャンスが遠のく
既婚者の方であればイメージしやすい例だと想像します。一家の大黒柱になった(なってしまった?)以上、犠牲となるものが必ずあるはず。そのひとつがクルマ選び。仮にお子さんがいる3人家族だとして、2シーターのクルマを買って良しといってくれる天使のような奥様が日本にどれくらいいるでしょうか。おそらくそれは、何かの拍子に、天使のような悪魔の笑顔(?)になることはほぼ確実です。ましてや、家族会議なしでクルマを買ってしまったら…。
独身時代に購入しておけば、そのまま所有することを許可してくれる…かもしれません。少なくとも、いかにこのクルマが自分にとって必要か必死で訴える余地はあります(それを一蹴されることもありますが…)。そうなったときに、クルマまたはパートナーを選ぶかは本人次第です。※結果、クルマを選んだ人を何人か知っています。
いまは、空前の猫ブームのようです。スーパーにある掲示板などで猫の里親募集の張り紙を見たことがありませんか?里親だし、簡単にゆずってくれるのかと思いきや、実際はそうではありません。お金を払えば買える(この表現は使いたくありませんが)ペットショップの方がよほどハードルが低いのです。
特に、独身男性には譲ってもらえないこともしばしばです。それは何故か?独身男性が結婚するとき、相手の女性が猫嫌い(またはアレルギー)などの状況に置かれたら、最後の最後で女性を選んでしまう傾向があるから、とのことです。反対に、女性は男性よりも猫を選ぶのだとか。私と愛猫をまとめて面倒見てくれない相手なんて、こちらから願い下げということなのでしょう。話しは逸れましたが、どう転んでも、男性は女性に合わせるしかないようです。奥さんの尻に敷かれることが夫婦円満の秘訣…なのかもしれません。
3.欲しいと思ったときがタイミング。来年は分からない
もしかしたら転職しているかもしれないし、業績不振で給与が下がることがあるかもしれない。もう、そのクルマが欲しいとは思わなくなっているかもしれない。他の趣味に没頭しているかもしれない。古いクルマだと、あっという間に値上がりして手の届かない存在になっているかもしれない…。
まるでディーラーのセールストークのようですが、夜、寝られなくなるほどもし本当に欲しいクルマがあるとしたら。それは思い切って始めの一歩を踏み出すタイミングです。
いまは、新社会人の方はなかなかクルマのローン審査が厳しく、親御さん等の保証人を立てる必要があると聞きます。現金で買える(しかも、それでもまだ預貯金がる)ならなおさらです。
4.買わないで後悔するより買って後悔する方が100倍幸せ!
筆者の同級生で、20代の頃からBMWが欲しいといっていた友人がいます。30才を過ぎたある日、ある程度お金が貯まったので、新車のBMW Z4を買いたいんだけど、どう思う?と相談を受けたことがありました。それから数カ月間、吟味に吟味を重ねて、ついに念願のZ4をオーダーしたのです。納車後、真冬にZ4の屋根を開け放ち、筆者の自宅に乗ってきたときの満面の笑みはいまでも忘れられません。
この友人、Z4が大事(心配)なあまり、すぐさま自宅敷地に蛇腹式の車庫を構え、それでも心配だからと高額なセキュリティシステムを導入します。
そんなとき、彼に出逢いが訪れます。あれとあれよという間に、知り合ったその彼女と結婚することが決まりました。その彼女は友人に大きな決断を迫ります。「このままでは家計をひっ迫するBMWを何とかして!」。Z4を大事にするあまり、クルマに掛かるエンゲル係数が高すぎたのです。悩んだ結果、断腸の思いで友人は愛しのZ4を手放し、めでたく結婚しました。いまでは可愛いお嬢さんと家族3人で仲良く暮らしています。
あるとき、友人は筆者にこういいました。「買ってすぐに売ることになっちゃったけど、あのとき無理してZ4を手に入れて良かったよ」。結局友人は、1年半ほどで愛しのZ4を売却しました。もう10年以上前のことですが、いまでも忘れられない1台のようです。友人は現在、日本車のSUVに乗っていますが、またいつかBMWを買うんだと、日々頑張っています。
5.必要なのは鈍感力?
たとえそれが格安の中古車であったとしても、ゆとり世代の若者がメルセデス・ベンツに乗ることに対する妬みのような視線は避けられません。そして不思議なことに、自分の耳に入るころには何らかの尾ひれがついていることも珍しくありません。
実際にはデリケートな問題が絡むことがあるので安易なことはいえませんが、自身で稼いで手に入れたクルマです。努力したり、行動したからこそ手に入れることができたのです。同時に、遊んだり、寝る時間がなかったなど、何らかの犠牲を払ってきたはずです。
車種は伏せますが、日本でも数台しか存在しないある輸入車のオーナーさん(自営業)が「毎日、9時から5時まで働いているだけで、こんなの(クルマのことです)買えるわけないよ。その人たちが遊んだり、お酒を飲んでいるときにこっちは必死になって働いたからこそ買えたんだし。いかにも簡単に買ったように思われるけど、それはいまのおれしか見ていないだけ」と仰っていました。そこで「必要なのは鈍感力」だと悟ったそうです。
余談:若くしてベンツに乗ったからこそ出逢える人がいる
今回は一例としてメルセデス・ベンツを挙げましたが、これはBMWでも、アルファ ロメオなどでも同様です。ちょっと背伸びしてでも惚れ込んだモデルを手に入れることで出逢える人がいると確信しています。一回り以上、年長の友人っていいものです。クルマに関するアドバイスはもちろん、人生の先輩として叱咤激励してくれることもあります。同世代の友人たちとはまた違った世界を知ることができます。その扉を開くことができるパスポートの役割をベンツが果たすのだとしたら、ゆとり世代の若者が思い切って手に入れていいと思うのです。