
コラム
更新2019.10.26
旧車のレストアについて考える[part2:オーナー自ら作業する“意義”とは?]
ユダ会長
今後、レストアを考えている方にとって何らかのヒントになれば幸いであることはもちろん、経験者の方にとっては「トホホな記憶や体験」を共有できる機会になればと思っている次第である。
旧車を維持するための方向性を見出す

以前、こういう話があった。
知人が購入したばかりの英国車をとあるショップに修理を依頼した際、見積もりの合計がとんでもない金額になったのだという。そこで修理を断ったところ、「修理するカネがないんだったらそんなクルマに乗るな」といわれたそうだ。確かにもっともな意見ではあるが、少しばかり言い方が乱暴な気がしないでもない。余談だが、筆者も以前そのショップにパーツを注文したことがあり、本国の10倍ほどの請求が届いて驚いたことがある。
最近はさすがにこの手のショップは少ないと思うが、かつてはこんなことがまかり通っていたのかもしれない。もちろん、件のショップは時代の流れのなかで淘汰されていく運命にあったことはいうまでもない。
ところで「旧車は道楽」と世間一般では思われているかもしれないが、実際に余裕を持って維持できている人が何割いるであろうか?

多くのオーナーは、自分のクルマを維持するために頑張って働き、他のぜいたくを切り詰め、クルマに情熱を注ぎ込んでいるのが現実だ。そうなると、維持をしていくうえで「できることは自分でやる」という流れが自然とできあがるのはもはや必然かもしれない。その結果「素人にはできない部分を専門のショップ任せつつ維持していく方法」がスタンダードになりつつあるように思う。その一方で「趣味の一環として」自らレストアや修理を行う御仁がいることも記しておきたい。
修理の基本とは?

前回、修理とレストアの違いについてまとめた記事があるので、紹介しておきたい。
https://current-life.com/column/yuda-restore-columm-part1/
「クルマを元の状態に復元する」という点において「壊れたものを元の状態に直す行為」とは同義語ではないが、話を進めていきたい。
まず、クルマが動かなくなった場合(あくまで旧車に限った話だが)、基本的に「ガス」「空気」「電気」この3つのどこかに問題があることが多い。電気を例に挙げると、まずは「プラグに火が飛んでいるか?」から順に確認していくことになる。次に「プラグコード」→「ディストリビュータのポイントやローター、レギュレータ」→「コイルから電気がきているか」→「イグニッションキーまでの配線やキーシリンダー」…といった具合に、修理の過程でのセオリーはすでにできあがっている。
このように、ひとつひとつの基本的な確認を行っていけば原因を追求できることが多い。また、長く乗り続けることで、故障しやすい部品や消耗パーツは自然とインプットされていく。その結果として、常備薬のごとく故障しやすい部品や消耗パーツをトランクなどに積んでおくことでトラブルに対処できるようになる。
ちなみに、ベルトが切れたから女性のストッキングを脱がせて代用した…といった都市伝説のような話を聞くが、「それならベルトの予備を積んでおけ!!」といいたい(笑)。
旧車を買って、まずやっておきたいことは?

消耗品のチェックと交換はいうまでもないが、旧いクルマだけに、想定外なことが起こりうることも知っておきたい。英国の旧車で多いのは、油圧のブレーキスイッチ、ヒーターのバルブ、ディストリビュータのローターなどだ。交換した形跡がなければ対処しておくことをオススメしたい。筆者も、現在の愛車であるMGBを購入後、すぐに交換したヒーターバルブは動かず、さらに中が完全に詰まっていて、冷却水の流れを遮断しており、まったく機能していなかった。そこでラジエターを外して中を洗浄し、ウォーターポンプからホース類もすべて新品に交換した。このあたりの部品は海外から直接購入すれば全部あわせても$120くらいで収まるので、破格値的に格安なのだ。
この例に限らず、クルマによって近年のクルマでは考えられないような消耗品の話も多々話を聞くが、現在ではネットで調べれば、この種の情報も簡単に手に入るようになってきた。それだけに、以前よりは格段に維持が楽になったと感じている。
自分でレストアすることの意味とは?

旧車と長く付き合うには、そのクルマを「どれだけ深く知ることができるか?」が大切になってくる。すべてをショップ任せにすることも否定はしないが、出先でトラブルが起きた場合の対処方法を知っておかないと、マイナートラブルのたびにローダーを呼ぶことになり、その都度ショップへ運ぶ必要が出てくる。購入した直後だとそのクルマの特有の癖のようなものが分からないだけに難しいところではあるが、さすがにトラブルが連続すると維持する行為そのものが苦痛になり、結果として手放すことになる結末も容易に想像がつく。

維持するための修理は、前述でも述べたように「レストア」とは意味合いが異なってくる。ひとつひとつ、そのクルマの特質を捉えていくことで逆に維持が楽しくなり、自然と愛着も湧いてくる。それも必ずだ。最近ではボンネットを開けたことがないというオーナーが多いなか、あえてディープなクルマと暮らすことは、人生を謳歌するうえで楽しみがひとつ増えるのではないだろうかと思っている次第だ。
[ライター・撮影/ユダ会長]