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更新2020.06.13
なぜ、旧いクルマのデザインは秀逸なのか?[part5:大人になって改めて気づく…。小さなクルマの魅力とは?]
ユダ会長
小さなボディーに動力系はもちろんのこと、居住空間を含めたすべてを凝縮した空間に詰め込むのは、普通の車両を作るより難儀なのは言うまでもない。
それでも、なぜこれほど小さなクルマの人気は衰えることなく、いまだ需要があるのであろうか?
今回は小さなクルマについて書いていこうと思う。
コンパクトに作る難しさ
子供の頃の筆者は、小さなクルマに興味が持てなかった。
いや、その「小さいクルマ」の意味すらわかっていなかったのかもしれない。
例えば、ランボルギーニ カウンタックは小さなクルマとは言い難い。しかしV型12気筒エンジンをあのコンパクトなボディーに収めるために、ミッションを前方に置く設計などで、当時のメーカーの試行錯誤の結果生まれたモデルだ。ゆえに、驚愕的といっていいほどのアイデアで作られたデザインともいえる。
当時、そのようなことは知る由もなく、またコンパクトなイメージもまったくなかったが好きでたまらなかった。
12気筒エンジンを搭載したクルマは、今では衝突安全性も含めると、当時より肥大化したデザインになってしまった事実は否めない。
しかし、年齢を重ねていくうちに、コンパクトななかに収める難しさと美しさを認識するようになった。気付けば英国のライトウェイトという分野にたどり着いていたのかもしれない。
ただ英国のライトウェイトオンリーな嗜好かと言えばまったく語弊がある。ただ単に小さなクルマが好きなのだ。
小さなクルマの楽しさとは?
小さなクルマの最大の魅力は、やはりその軽さとシンプルな構造にあると著者は考える。
モアパワーを求めれば、当然のように受け皿もそれに見合った装備が必要となる。
車体剛性にしろ、ブレーキにしろ、足回りにいたるまですべてにおいてアップデートが必要不可欠だ。
小排気量のクルマは、絶対的なパワーはなくても、シンプルな構造の受け皿で充分にキビキビとした走りを実現できることが魅力的である。
そして、まずいちばんの魅力は「軽さ」に尽きる。
パワーウェイトレシオなど数値的な問題だけでは語れない楽しさがあるのだ。
ボディーのサイズも相まって、背中でリアタイヤの挙動をしっかり把握できる喜びは、速さの追求だけでは語れない走りの楽しさだ。
また、それが非力なエンジンであっても、街中でも上まで「ぶん回せる楽しみ」はストレスとは無縁だ。
大げさに言えば、その気になればアクセルを全開で走ることも可能で、そのクルマのポテンシャルを大いに発揮できるのだ。
それがサーキットやジムカーナなどであれば、さらに楽しさを堪能できる。
ストレートが短い筑波サーキットなどでは、特に大排気量のクルマを後ろからカモる(?)なんて姿だって見ることがある。
そんな光景は見ていて爽快感しかない!
そして、もう一つの大きな魅力はシンプルな構造ゆえのメンテナンス性の良さだ。
構造がシンプルであれば、オーナー自らメンテナンスする場合でも、手順を覚えてしまえば容易な部分が多い。
ブレーキにしろ、足回りにしろ、面倒な部分はあっても極端に難しい部分は少なくなる。
もちろん、小さなボディーに無理やりに色々と詰め込んでいるため、エンジンを含めて精密になったり、バラすのに面倒な部分が増えていくものもある。
※著者はオースチン・ヒーレー・スプライトMk3、MGBの両車いずれも、クラッチ交換のたびにミッションごとエンジンを何度もおろした経験がある
小さなクルマの洗練されたデザイン
さらに、小さなクルマのデザインには決して「かわいい」だけでは語れない素晴らしいデザインが詰め込まれている。
いまだに人気の衰えないクルマには、その要素が万人にも受け入れられているからだと著者は考える。
英国車であれば旧MINI、イタリア車であれば旧フィアット500は、その代表格ではなかろうか。
ともに英・伊両国の大衆車で女性にも人気のクルマであるが、デザインが優れていなければ、ここまで大ヒットしたとは思えない。
両車とも一番のデザインの魅力は、そのお国柄をしっかりと反映したデザインにあると思う。
MINIは無駄のないデザインのなかに60年代の英国らしい、きちっとしたディテールが素晴らしく、フィアット500はイタリアでしか出せない流れるようなラインが随所に見られる。
余談ではあるが、著者は現在フィアット500をフルレストア中である。ボディーをレストアしたことで初めて気付かされるデザイン性の素晴らしさもある。
特にフロントマスクとリアエンドへの流れるデザインはフィアットらしい秀逸なデザインだと思っている。
ここまで長く大衆車として愛されていたクルマは決して小さく作られただけではなく、愛されるデザインであったからなのは間違いないだろう。
また、フィアット600をベースとした、イタリアの宝石とまで言われているアルミボディーの「アバルト750GTザガート」や、MINIをベースとしたキットカーでFRPボディーの「マーコスMINI」はど、色々な派生型としてのパフォーマンスを高めたモデルも存在している。
これらは性能はもちろんのこと、著者が愛してやまない素晴らしいデザインである。
現在、前述で述べたような小さなクルマは衝突安全性などもあり、かなり大きくなっている。大きくならざるを得ないのかもしれない。
フィアット500にしろMINIにしろ(特にMINIは)現行モデルは小さなクルマとは言い難い。
最近は海外で日本の軽自動車が見直されているという話を聞く。
小排気量で軽くて小さなクルマ…。
案外ここから日本が中心となって、またムーブメントが起きれば楽しいのであろうが(難しいかなぁ…)。
なぜ、旧いクルマのデザインは秀逸なのか?過去の記事はこちら
https://current-life.com/column/yuda-columm-part1/
https://current-life.com/column/yuda-columm-part2/
https://current-life.com/column/yuda-columm-part3/
https://current-life.com/column/yuda-columm-part4/
[ライター・撮影/ユダ会長]