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オーナーインタビュー

更新2021.08.29

新車から18年、総点検修理費は約890万円!「2003年式フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32」オーナー、KINLEIさん(55才)

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松村 透

去る2021年6月、フルモデルチェンジされた新型フォルクスワーゲン ゴルフ(ゴルフ8)が日本でも発売されました。


今回取材させていただいたKINLEIさんが所有する愛車は、最近では街中で見掛ける機会が少なくなりつつあるゴルフ4。そのなかでも限定モデルとして当時争奪戦が繰りひろげられた「R32」です。


このゴルフ4 R32を当時新車で手に入れ、今日まで18年間所有するというKINLEIさん。



▲オーナーのKINLEIさんと、手に入れて18年になるという、フォルクスワーゲン ゴルフ4  R32

今回、これまでに掛かった整備費用などを含め、20年近く1台のクルマと誠実に向き合ってきたオーナーさんならではの、貴重なエピソードを伺うことができました。


── オーナー紹介&どんな仕事をされているのですか?



▲印象的なヘッドライト。ゴルフ4デビュー当時のカタログの表紙でも強調されていました

機械メーカーで製品の使い方を教えるインストラクターをしています。


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── KINLEIさんの愛車について教えてください



▲分かる人には分かるスペシャルモデルらしい佇まい。さりげなく主張するところが魅力でもあります

2003年式フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32です。新車として手に入れて以来、現在まで所有しています。


── ゴルフ4 R32の存在を知ったきっかけを教えてください



▲V6 3.2リッターエンジンが押し込まれたエンジンルーム。18年前のクルマとは思えないほど隅々まできれいなことに驚かされます

たしか、自動車雑誌の現地レポートだったと記憶しています。


「ディープブルーパールエフェクト」という名のブルーメタリックのボディーカラーが印象的でしたね。それと、ゴルフにV6 3.2Lエンジンが搭載されるという仕様にも魅力を感じました。ただ、現地価格で500万円くらいと予想されていたので、これは買えないなと諦めていたんです。


そのR32が日本でも限定発売されると聞き、最寄りのディーラーに行ってみました。当時ものすごい反響でしたよ。試乗車が全国のディーラーを行脚しているような状況で、訪れた店舗にはカタログしかありませんでした。記憶では3ドア・左ハンドル・MTの仕様で車両本体価格は395万円。先着順であっという間に完売となったそうです。


その後、右ハンドル・5ドアの仕様が発売されると聞いたのですが、こちらも予約が殺到していて…。一応キャンセル待ちにエントリーしてみたんです。


それからしばらく経ったある日、ディーラーから「キャンセルが出ましたので、KINLEIさんいかがですか?」と連絡があり、即決しました。


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── いちどは諦めかけたにも関わらず、購入権が回ってきたときのお気持ちは?



▲サービスアドバイザーの方から譲っていただいたものを含めると、ゴルフ4 R32のカタログは3部保有しているそうです

もう…「ただただ嬉しかった」の一言に尽きますよね。予約してから手に入れるまで、約1年掛かりましたから。


困ったことに、納車待ちの間にそれまで所有していたゴルフ3 GTI16バルブの車検が切れてしまい、R32が納車されるまではクルマなし生活となってしまったんですけれどね。


ゴルフ4 R32のキャンセルが相次いだ件について…これはあくまでも推測ですが、いざ「こういうクルマ買うんだけど…」とご家族に話を持ち掛けた方たちが、「MTじゃダメ!」と反対を受けて、泣く泣くキャンセルしたのではないかと考えています。


── 当初、懸案事項だった支払いに関してはクリアできたのですか?



▲サイドからの眺め。エアロパーツと18インチホイールが足元を引き締めます

ローンを組みましたよ(笑)。でも、このときはある程度まとまった金額を頭金として用意しました。購入した時点で30代半ばでしたし「3度の食事を2食に減らして切り詰め…」というわけではなかったです(笑)。


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── それから18年経ちました。当時から長く乗るとを決めていたんですか?



▲美しく磨き上げられたゴルフ4 R32に近寄ってみると、バンパーには「走り屋の勲章」が

それが全然(笑)。


最初の愛車がゴルフ2 CLI、その次がゴルフ3 GTI16バルブで、いずれも6年4万kmくらいのペースで買い換えていたんです。


車検が1年残っているあたりでディーラーに下取ってもらうなり、買い取り業者に買い取ってもらうなり…そのくらいの気持ちでした。


R32が発売された時点でゴルフ4としてはかなりモデル末期でしたから、ゴルフ5 R32にしようかなと思っていたくらいです。これまでゴルフ2、3、4と乗ってきていましたしね。


── なぜゴルフ5 R32に乗り替えなかったんですか?



▲正規輸入車に貼られるステッカー以外のものはボディパネルのどこにも見当たりませんでした

希望に合致する仕様がなかったことが理由のひとつに挙げられます。使い勝手を考慮すると、買い換えるならゴルフ5 R32の5ドアと考えていました。しかし、日本仕様のトランスミッションにはMTの設定がなく、DSGのみだったんです。受注生産だった3ドアのR32はMTのみだったですが…。



▲エンジンを始動すると、左右2本出しマフラーからはV6 3.2リッターらしい、重厚なサウンドが

それと、カタログモデルとなったゴルフ5 R32と比較して、ゴルフ4 R32は乗り心地はハードだと感じました。ゴルフ4 R32からゴルフ5 R32に買い換えた方曰く「4の方が、スパルタンでおもしろいよ」と。実際に私も試乗してみましたが、刺さらなかったのは事実です。カーグラフィック誌の小林彰太郎さんに言わせると「物騒なクルマ」なんだそうです(笑)。


その後、ゴルフ6や7にも試乗しましたが、室内に響く音が4気筒のそれなんですよね…。やはり6気筒NAエンジンの音っていいなぁと改めて思いましたね。


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── R32は乗り手を選ぶ?



▲使い込まれたステアリング。使用感が確認できる数少ないポイントのひとつ

そこまでではないと思いますが、クラッチミートは独特というか、慣れが必要かもしれません。


電子制御スロットル式で、アクセルをちょこっと踏んだだけで回転がビュンってあがっちゃうんです。トルクのあるエンジンなので、空冷時代のポルシェ911のように、先にクラッチ繋いで、そこからアクセル踏む流れをマスターしていれば問題ありませんよ。


── 輸入車に乗ろうと思ったきっかけを教えてください



▲迫力あるフロントマスク。このクルマが高速道路で背後から迫ってきたら…

職場の同じ部署の人たちの影響が大きいですね。


バブルのときに会社の同じ部署の人たちが輸入車に乗りはじめたんです。ゴルフ2乗りの先輩や、プジョーの405、アウトビアンキのアバルト、アルファ ロメオのアルフェッタを手に入れたりとか。ある日、ゴルフ2オーナーの厚意で運転させてもらったら「似合うんじゃない?」みたいなこといわれて(笑)。じゃあ自分も買ってみようかなと思うようになり、25才ぐらいのときにゴルフ2 CLIを新車で購入しました。



▲あっという間に抜き去られ、この後ろ姿を見送ることになるのです

実家にもクルマがあったし、それまではずっとバイクの方がメインでしたから。このときは「俺もようやくクルマを持つようになったか」と思いましたね。


実はバイク趣味はいまも継続中です。現在はヤマハMT09トレーサーと、通勤用にヤマハ セロー ファイナルエディションを所有しています。オフロードは自分でコントロールするのがおもしろいし、リッターバイクは「1回降りちゃうともう2度と乗れないよ」と周囲からいわれているので。


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── 失礼ながらいままで故障したことはありましたか?



▲これまでの書類をすべてファイリング。これ、愛車を大切にしている方あるあるです

大きなトラブルだとハルデックスと、ディスチャージヘッドランプのイグナイター(片側10万円!)が壊れたことですね。


それと、あるときデフロスターを使ったら雪が舞うようにスポンジが出てきたんです。経年劣化によるものだと分かり、エアコンのダクトを交換することになりまして。入院中にディーラーから「ブロワーユニットにもスポンジ使ってるんですが、どうします?」と連絡があり「お願いします」と(笑)。結構な出費になりました。周囲からは呆れられましたよ。


── そこまでして修理代にお金を掛ける理由はなぜですか?



▲普段からエンジンルームをきれいにしていないとこのコンディションは維持できません

「6気筒のMTのクルマだから長く乗りたい」という想いがありますね。


それと、ディーラーのサービスアドバイザーの方から「とことん付き合います」とおっしゃっていただけたのも理由のひとつです。


このR32を納車したときに担当していただいたサービスアドバイザーの方が転勤するたびに追っかけています(笑)。所属していたディーラーが引っ越しをするときに出てきたR32のカタログを「これは絶対KINLEIさんに渡すものだと思って、取っておいたんですよ」といって渡してくださったり。実は2部持っているんですけどね(笑)。私以外にもそのサービスアドバイザーの方が転勤するたびに「追っかけている」オーナーさんがいらっしゃるみたいですよ。


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── いままでにかかった整備代は?


18年間の総額は8,876,466円、1年あたりに換算すると485,052でした。一見するとすごい金額に思われるかもしれません。これまでに掛かった点検修理費用の明細をExcelファイルにまとめています(*画像参照)。



▲これまで掛かった費用をExcelファイルにまとめて管理(データ提供:KINLEIさん)

しかし、数年おきに300万くらいのクルマを買い替えていたらもっと高くつきますよね。1台のクルマを長く乗る方が経済的なんです。


── 手に入れて良かった点、苦労している点を教えてください



▲「R32」であることを識別できるエンブレム。こちらの自己主張もあくまでも控えめ

●手に入れて良かった点


ひとつはゴルフの限定モデルだという優越感がありますよね。それと、6気筒のエンジン&MTミッションの組み合わせ、ディープブルーパールエフェクトのボディーカラーですね。実は、このクルマとトゥアレグW12とにしか設定されていない専用色なんです。



▲特別なボディーカラーである「ディープブルーパールエフェクト」。真夏の日差しを浴びて美しく輝きます

●苦労している(してきた)点


◎1つめは先ほどお伝えしたディスチャージヘッドランプの一件です。


※一連の流れ
・オートレベリングのモーターが壊れて、騙し騙し調整して使っていた
    ↓
・とうとう調整代を使い果たしてしまう
    ↓
・まだ部品があるということで、ヘッドライトを交換することに
   ↓
・熱で変形していて、新品のヘッドライトだと熱で変形したカプラーには入りませんとディーラーから連絡
   ↓
・その結果、カプラーも交換
   ↓
・それでもまだチラついて点灯する
   ↓
・バルブが保証期間なので交換することに
   ↓
・それでもまだチラついて点灯する
   ↓
イグナイターを交換


苦労しているという点では、13年越えの重課税ですね。3リッターオーバーですから、元々58,000円の15%増しで66,700円です。この金額は家族持ちには堪えると思います。


あとは「壊れたらもう部品がないかもしれない」という不安との戦いもありますね。


◎2つめは「ガッサ!(ガサッ!ではないです)」という異音に悩まされたことです。


何年か経った頃、低温時に、サスペンションの動きと関連がありそうな「ガッサ!」・・・という異音がするようになりました。
 
暖気が進むと消えるので、しばらく様子を見ていましたが、毎年、冬の恒例行事で、冷間時に「ガッサ」という音がするんです。
 
車検や12カ月点検のときに、マウントラバー、ブッシュ類の点検を依頼しても異常は見つかりませんでした。初回登録日の都合上、10月上旬に入庫するので、現象を確認してもらうこともできず、長年、悶々と過ごすことになるのです。
 
あるとき、某車情報媒体の記事で「スタビライザーのブッシュが経時劣化で硬化し、それが原因で異音がする」という記述を見て、すぐさま主治医に連絡し、交換。長年の悩みから解放されました。
 
R32以外にも、
・ボーラ V6 4MOTION
・同世代のアウディA3 スポーツバック 3.2 クアトロ


などで同様のお悩みをお持ちの方、原因はおそらくこれです。


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── ゴルフ4 R32の部品はまだ出ますか?



▲すでに絶版となっているケーニッヒ製バケットシート。蒸れ防止のクッションで通気性を確保しているそうです

センターコンソールを含めて内装関係はもう出ないといわれています。


ガラスはまだ出てくるかもしれません。ちなみに、運転席側のガラスシールドを交換したら工賃が5万円でした。


── 不躾ながら、予算抜きで、欲しいクルマBEST3は何ですか?



▲アガリのクルマはこのR32!と語るKINLEIさん

→3位.フォルクスワーゲン ポロ WRC仕様のベース車両のようなモデルがあれば


→2位.E46 BMW M3


→1位.ポルシェ911(997フェイズ2)。PDKでなるべくベーシックなモデルがあれば


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── では、KINLEIさんにとって「アガリの1台とは?」



▲取材時に気づいたのですが、プライバシーガラスではないにも関わらず、ウィンドウフィルムも貼られていないのです

このR32です!


── ようやく日本でもゴルフ8が発売されましたが、印象はいかがですか?



▲ゴルフ4の特徴的なCピラー。ゴルフ8のCピラーもこのラインに近いものを感じますね

実際に試乗してみたんですが、好印象でした。まごうことなきゴルフだなと思いましたね。


低速トルクがあり、電動パワステがかなり自然なフィーリングになったことが印象に残っています。


しかし、買い換えるかと聞かれたらそれはないと思います。その理由は「車幅」です。全幅1800mmは私の生活圏では大きいと感じるんです。


もし、次にフォルクスワーゲンで乗り替えるとしたらポロでしょうね。


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── EUでは2035年にガソリン車の新車販売が禁止となります。日本もいずれは・・・



▲KINLEIさんのミニカーコレクション。これも貴重なアイテム

生活圏内にガソリンスタンドがあるうちは乗ります。


電気自動車に乗らざるを得ない状況になったら考えますが、その前に解決しなきゃいけない問題がいっぱいありますよね。


── 最後に、KINLEIさんにとって愛車はどんな存在ですか?


 



▲現在の走行距離は12万8000キロを超えたあたり

「相棒とか生活におけるパートナー」です。代わりになるクルマは他にありません。


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── 取材後記



▲KINLEIさんの洗車道具。グリオスガレージを中心にそろえているそう。しかも、これは一部だというから驚きです

リアのトランクには常に洗車道具が搭載されているKINLEIさん。愛用していのはグリオズガレージ社のものが中心。


「洗車を怠らず、大切に使いつつ、愛車を過保護にはせず道具としてきちんと接する」KINLEIさんの姿勢が垣間見えます。


新車から長きにわたって1台のクルマと付き合うオーナーさんには共通の特徴がいくつかあります。そのひとつが「あらゆる明細をファイリングする」こと。もちろん例外もありますが、車種やオーナーさんの性別、世代に関係なく当てはまるような気がします。



▲リアシートの背もたれ部分にも「R」の刺繍が!

もちろんKINLEIさんのそのひとり。なかでも圧巻なのは「点検修理費用合計額」というExcelファイルを作成し、新車購入後の初回点検から現在までのあらゆる記録と金額を管理していらっしゃること。,


新車で購入してから18年、これまで掛かった総費用は8,876,466円。年間にならすと485,052.8円。金額だけ見ると驚くかもしれませんが、数年おきに新車のゴルフを買い替えていたら、これ以上の出費になる可能性が高いのです。



▲汚れが溜まりやすいリアゲート周りもご覧のとおり。これで屋根なし駐車場(ボディーカバーは使わず)だというから驚きです

1台とクルマと長く付き合う。それは環境にもお財布にも優しい、といえるのかもしれません。いちクルマ好きとして、長く付き合える愛車と出会えたKINLEIさんに尊敬の念を抱きつつ、とてもうらやましく思えた取材となりました。


── オーナープロフィール



HN:KINLEIさん
年齢:55才
ご職業:会社員
現在の愛車(年式およびグレード):2003年式フォルクスワーゲン ゴルフ4 R32


[ライター・撮影/松村透]

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