オーナーインタビュー
更新2017.12.10
クリームイエローに惚れ込んで。「ボルボ850 T-5R エステート」オーナー、森太一さんにインタビュー
松村 透
それまでは、どちらかというと無骨なモデルが多かった感のあるボルボ。しかし850シリーズは、都会的でスタイリッシュなデザインが日本でも人気を博し、街中でも頻繁に見掛けたように思います。
▲ボルボ850シリーズが現役だった頃、リアガラスにはこの"SIPS(Side Impact Protection System)"のステッカーが貼られていました
その850シリーズにおいて、もっとも記憶に残る1台は「ボルボ850 T-5R エステート」ではないでしょうか。クリームイエローのボディカラー、5本スポークの専用デザインホイール。1995年に限定販売されたボルボ850 T-5Rは、エステートとセダンボディが用意されましたが、特に人気があったのは前者だったことはいうまでもありません。当時、ウィンドウフィルムを施工するショップでアルバイトしていた筆者も、何台ものボルボ850 T-5R エステートに「リア5面」のフィルムを施工しました(正規輸入車のセダン(MT車)にフィルムを施工したこともありました)。
今回は、そんなボルボ850 T-5R エステートを大切に所有するオーナーさんを紹介します。
── オーナー紹介&どんな仕事をされているのですか?
▲現在もフルオリジナルのコンディションを保つ森さんのボルボ850 T-5R エステート
社会人になってからは、最初は会社員として勤務していました。その後、父親の仕事を手伝うようになりまして、市の公共工事の仕事(主に下水道)を担当していました。現在は関連する資格を取得して、不動産関連業を営んでおります。
── 現在の愛車を手に入れたきっかけを教えてください
▲リアゲートに貼られたエンブレムも健在。文字のすき間に詰まりがちな汚れもありません
私は若いときからクルマが大好きでした。日本車の、それも中古車をメインに乗り継いでいたんです。正直いって輸入車には興味がありませんでした。
▲若かりし森さんが大切に所有していたいすゞ ベレット1800GTとダットサン・フェアレディ2000(SR311 前期型)。当時の写真はアルバムに収められ、大切に保管されています
確か、25〜6才のときに旧車の面白さに目覚めてしまいまして、いすゞ ベレット1800GTやダットサン・フェアレディ2000(SR311 前期型)を所有しました。ダットサンSR311は13年くらい所有した思い出深いクルマなんです。
── 現在の愛車に乗ろうと思ったきっかけを教えてください
▲真横からボルボ850 T-5R エステートを眺めていても、古さをまったく感じさせないデザイン
結婚して子どもが生まれたのを機に、泣く泣くSR311を手放しました。次は何に乗ろうかと考えたとき、スバル レガシィ ツーリングワゴンがいいなと思ったんです。当時、レガシィ ツーリングワゴンといえば「和製ボルボ」のようなイメージを抱いていました。そのなかでも、私はイエロー(*BG5型に設定された「カシミヤイエロー」)が気に入ったんです。しかし、もともとこの色のレガシィ ツーリングワゴンは数が少ないため、次第にボルボにも興味を持つようになっていきました。
「イエローのボルボはないかな・・・」
▲専用のリアスポイラーも当時のまま
そんな気持ちで調べて見つけたのが、クリームイエローのボディカラーを纏ったボルボ850 T-5Rだったんです。妻も輸入車には興味がなかったんですが、なぜかボルボとアウディは好きだというんです。意を決してボルボ850 T-5R エステートを探してみたところ、運良く巡り逢えたのがこの個体です。
── ボルボ850 T-5R エステート自体、かなり希少ですよね。所有してどれくらいですか?
▲リアからの眺め。このデザインに憧れ、魅了された方も多いはず
所有して13年になります。このボルボ850 T-5R エステートを手に入れたときは、新車から4回目の車検を迎えたあたりの時期で、まだ中古車市場でも見掛けることがあったんです。最近は、中古車市場だけでなく、街中でも見掛ける機会が減りましたよね。どこへ行ってしまったんでしょうか・・・。
── とても22年前のクルマとは思えないほどきれいなボルボ850 T-5R エステートです
▲当時のコンディションを保つ室内。22年間で実走行7.5万キロ(!)という貴重な個体なのです
ありがとうございます。意外に知られていないことですが、塗装面にクリアが吹かれていないんです。そのため、購入時に専門の業者さんでコーティングを施工しました。以来、水洗いのみで済ませています。汚れが目立つだけでなく、塗装もデリケートなので、基本的に雨の日は乗りませんし、海辺に出掛けたら帰宅後すぐに洗車です。現地にいるときから「今夜は帰宅したら洗車しなきゃ・・・」とそわそわしています(笑)。
── 手に入れて良かった点、苦労している点を教えてください
▲最高出力240ps、2.3L 直列5気筒エンジンを搭載するエンジンルームもご覧のとおり
・良かった点
「長距離の運転でも疲れない」そして「よく走る」ことでしょうか。あと、ボルボ850 T-5R エステートのボディカラーと、運転していて楽しいクルマであることも気に入っています。
・苦労している点
エアコンの故障や燃料タンクおよびパワステオイルからの漏れ、給油口が開かなくなった等のトラブルを経験しました。前述のように塗装面がデリケートなので、どうしても気を遣います。
ボルボが好きだといっていた妻は、このクルマ特有の車内の匂いが苦手らしく、あまり乗ってくれません。娘はクルマ酔いするのですが、ボルボは平気みたいです。ちなみに、息子はクルマ好きなので、父親としては嬉しいですね。
── 予算抜きで、欲しいクルマBEST3は? (上がりの1台も含む)
▲5本スポークの専用デザインホイールは17インチ
実は・・・欲しいクルマは手に入れてしまったので、いまはないんです。そのため「乗ってみたいクルマ」というくくりでチョイスしました。
・3位.ポルシェ911
・2位.日産フェアレディZ(S30)
・1位.マクラーレンの現行モデル
・上がりの1台(ご自身にとって究極の1台とは?)
ボルボ850 T-5R エステートと、もう1台所有しているいすゞ ジェミニ イルムシャー(JT190型)があれば、自分としては「上がり」です。
▲森さんが「もう1台の上がりのクルマ」と語る、1989年式いすゞ ジェミニ イルムシャー(JT190型)。苦労のすえにようやく探しあてたという、フルオリジナルの2オーナー車(!)だとか
このジェミニを選んだのは、若いときに乗っていたいすゞ車にもう1度乗ってみたい・・・。そう思ったときに購入を考えたのがジェミニでした。半年くらい探しつづけて、専門店のホームページに公開されたのを見つけてすぐに連絡し、即決しました。こうしてようやく「街の遊撃手」を手に入れたときは嬉しかったですね・・・。
── あなたにとって、愛車はどんな存在ですか?
▲ドアを開けると、ボルボ特有の匂いが色濃く残る車内。癒しの効果あり?
「心が落ち着く場所。癒しの存在」でしょうか。
▲助手席側のダッシュボードに貼られた1994年グッドデザイン大賞受賞を記念するエンブレム
私にとって、ボルボ850 T-5R エステートは、運転して楽しいけれど、落ち着けるクルマなんです。運転していて安心感が得られます。そしてジェミニは、元気や活力を与えてくれる存在です。まったくキャラクターの異なる2台ですが、私にとって理想的な組み合わせです。これからも、できる限りきれいに、そして長く乗りつづけたいです。
── 補足:貴重なボルボ850 T-5R エステートを所有する森 太一さんにお会いしてみて
▲森さんの個体は、当時のステーションワゴンでは定番だったウィンドウフィルムが貼られていない貴重な個体
現役当時は、限定車とはいえそれなりの頻度で見掛けた印象があるボルボ850 T-5R エステート。しかし、最近はその姿をめったに見なくなりました。そんな、もはや文化財の領域に入りつつあるボルボ850 T-5R エステートを所有する森 太一さんは、本当にクルマを大切に所有されていらっしゃることが、実車を拝見し、インタビューを通じてひしひしと感じてきました。海沿いに出掛けた際には、なるだけその日のうちに(遅くとも翌日には)、水洗い洗車をして、ボディに付着した塩分を洗い流しているのだとか。
▲洗車用品や純正エアクリーナーも専用の棚できちんと保管されています。保護用に敷かれたゴム製のマットの下には、美しい状態を保った純正フロアマットが姿を現します
オーナーはクルマを選ぶことができますが、クルマはオーナーを選ぶことができません。嫁ぎ先によってその後の運命が大きく変わってきます。日本に上陸を果たした多くの個体が姿を消してしまったいまとなっては、このボルボ850 T-5R エステートは、ミントコンディションを保ったまま、後世に語り継がれる1台として存在して欲しいと強く願うばかりです。
── オーナープロフィール
お名前:森 太一さん
年齢:49才
職業:自営業
愛車:ボルボ850 T-5R エステート
年式:1995年式
ミッション:4速AT
[ライター・撮影/江上透]