ドイツ現地レポ
更新2020.02.25
希少なワーゲンバスでベルリン観光!極上のVW・T1で様々なサービスを提供する「T1-Berlin」をご紹介
守屋 健
では、このT1をこれからどのように使っていきますか?どんなときに乗りますか?
こう質問されたとき「晴れの日を選んで乗る」「ガレージで保管して、少なくとも月に一回はエンジンに火を入れる」「毎日の足としてガンガン使う」など、いろいろな意見が出てくると思います。しかし「このクルマの素晴らしさをみんなで分かち合いたい」と願い、個人で乗る以外の方法を考える方はどのくらいいるでしょうか?
今回のドイツ現地レポは、T1と出会ったことで、ベルリンで観光サービスを始めたチーム「T1-Berlin」について紹介します。
1965年製ワーゲンバスに乗って
「T1-Berlin」は、フォルクスワーゲン・T1・サンバ、いわゆる「ワーゲンバス」と、タイプ1を1台ずつ所有する小さなチームです。
T1はドイツでは「Bulli」の愛称で親しまれ、サンバはそのバスタイプ。「T1-Berlin」が所有するT1は1965年製で、大小20以上の窓やサンルーフよる非常に明るい室内が特徴です。この個体は40年以上アメリカのカリフォルニアで使用され、700時間以上もの時間を費やしてフルレストアが施されたのち、2014年にドイツに里帰りを果たしました。
一方のタイプ1「ビートル」も同じく1965年製で、オリジナルの状態をできるだけ残しながら、注意深く維持されています。現代的なカーオーディオはグローブボックス内に収納して、インテリアの雰囲気を崩さないようにするなど、そのこだわりは細部に及びます。
「T1-Berlin」は、この2台を使って「観光ツアー」「ウェディングサービス」「イベントサービス」の、3つの業務を行なっています。
「観光ツアー」はT1を利用して、ベルリンやその周辺都市であるポツダムの観光名所を回るガイドツアーです。ワーゲンバスの広い車内を利用して、大人7人まで乗車可能です。コースは「2時間コース」「1時間コース」、そしてオリジナルのルート構成とホテルへの迎車までを含めた「プライベートコース」の3種類が用意されています。
「2時間コース」「1時間コース」の集合場所は、ベルリンの観光名所の一つ「ベルリン大聖堂」前。英語・ドイツ語・スペイン語に対応した運転手兼ガイドが、渋滞が最も少ないルートを選んで、ベルリンについての歴史やエピソードを交えてガイドしてくれます。価格は「2時間コース」が大人1人39ユーロ、「1時間コース」が19ユーロで、燃料代など追加料金はかかりません。
「プライベートコース」は最長6時間までのガイドツアーで、例えば2時間で278ユーロ、6時間で695ユーロなどと、時間単位で決められています。ベルリンだけでなく、周辺の街への小旅行も可能なプランです。
ワーゲンバスのトコトコとしたエンジンを聴きながら、光の入る明るい室内から街の景色を楽しむ…。ベルリンでも現在「特別な体験ができるガイドツアー」として密かに注目を集めており、各種のレビューサイトでも非常に高い評価を得ています。
ビートルも随伴しての「ウェディングサービス」
「T1-Berlin」の提供するサービスのもう一つの柱が「ウェディングサービス」です。T1で新郎新婦をホテルから教会まで送迎し、その道中をビートルで随伴することも可能。さらに、T1を本物のバラで装飾したり、車内を飾りつけたりと、利用者の希望に応じてきめ細かく装飾を選べるのも大きな特徴です。
また、ドイツの結婚式では欠かせないお酒のサービスも「T1-Berlin」には用意されています。「ワーゲンバスのラゲッジスペースは、ワインの提供には最適な高さに設定されています!」とウェブサイトに紹介されていて、お好みのお酒や人数に応じてのワイングラスなどを準備してくれます。見た目が非常に可愛らしいT1やビートルによる「ウェディングサービス」は、若い人にはもちろん、年配の方にも特に好評で、SNSでの拡散効果も相まって、今非常に注目を集めています。
クラシックカーをみんなでシェアするということ
また、上記のサービス以外でも「イベントでの出展時に利用したい」「映画や写真の撮影に使いたい」といった細かな要望にも対応。「T1-Berlin」は確かに小さなチームではありますが、顧客のサービスに柔軟に、きめ細かく対応することで、じわじわと知名度を上げてきています。
非常に状態のいいクラシックカーを所有していても、ただただガレージに入れておくのではなく「このクルマの素晴らしさをみんなで分かち合いたい」と願い、こうしたサービスを始められる人はどれくらいいるのでしょうか。所有者の視点で見れば、不安な点は少なくないはずなのですが、一方で「T1-Berlin」を利用した人の多くは「本当に特別な体験ができました。ありがとう!」というメッセージを残しています。
貴重なクラシックカーを博物館に入れるのではなく、個人でただ乗るだけではなく、「みんなで体験をシェアする」という価値観は、筆者にとって非常に新鮮で、新たな視点を与えてくれました。「T1-Berlin」のような素晴らしいサービスが今後も長く続いていくよう、筆者も何かの機会に利用して、応援していきたいと思います!
[ライター・画像/守屋健]