車悦
更新2023.11.22
“自動車のヴィルトゥオーソ” それがメルセデス・ベンツ W124
中込 健太郎
“自動車のヴィルトゥオーソ”それが「W124」。
いやむしろ…
以前「This is サイコーにちょうどいい…」というミニバンのコマーシャルがありました。サイコーにちょうどいいって、W124にはかなわないよ。そんな風に突っ込んだりしたものです。第二回目の今回はW124を取り上げたいと思います。
音楽では完成の域に入った演奏家のことをヴィルトゥオーソと言ったりします。イタリア語で「博識、達人」を意味するそうです。クルマではどんなクルマが成り立つだろうか、振り返った時、W124とそのシリーズは、これに相当するのではないでしょうか。
( ※編集部追記:当記事は過去にメルマガ配信した記事です)
メルセデスベンツ最後のミディアムクラスにして、最初のEクラスであるこのクルマ、1985年~1995年まで製造されていた、メルセデスベンツの中型乗用車です。実は私のカーライフ、自分で最初に購入したクルマはこのW124でした。モデルは300E4MATIC、4輪駆動のセダンでした。子供のころから読みふけっていたカーグラフィック誌の長期テストでそのタフネスさ、世の中のメルセデスベンツ像をよそに「ガンガン使える実用車」を背中で示してくれたような毎月のレポート。ほぼ毎月300キロ以上の距離をコンスタントに重ね。危なげなく今月までの健康なコンディションが、翌月以降も普通に期待できる「安定」というより、むしろ「悠久」を感じさせるほどの耐久性には驚かされたものです。
そんなクルマに一度乗ってみたいと思っていた中で突如現れたクルマでした。べつに4MATICではなくともよかったのですが、イメージとしてはワゴンの方がイメージが強く、セダンの4MATICの存在を知りませんでした。そんな珍しい、しかもコンディションの良い一台の出現は見過ごすわけにはいかず、購入に至ったのでした。5年間4万キロほどほぼノントラブルで走破、京都日帰りなども何度か体験。どこまでも走って行きたい。いつまでも走っていたいと思わせるキャラクターに「これがメルセデスなのだ…」と実感したものです。
デザイン的にもイタリア人デザイナーブルーノサッコによる、メルセデス・ベンツ内製のデザイン。イタリアの、たとえばランチアなどにも決して負けない、エレガンスを持ちながらシンプルで飽きのこないもの。空力的にも優秀で機能美ともいえるこのデザインは場所を選ばず、冠婚葬祭からカジュアルなシーンまで、幅広く対応。
登場当時はそこそこ大きな車と認識されていましたが、日本でいうところの5ナンバーサイズを幅、全長ともにすこしだけ逸脱したに過ぎないこのクルマ、けっしてもてあますことがないばかりか、今では相対的にコンパクトなクルマの部類に含まれる一台でしょう。凛としたデザインは運転席からしっかりと四隅を把握でき、細い路地でも、物理的に車幅以上の道幅であれば、怖気づくことはないでしょう。
ただこのクルマの感心させられるのは、このクルマには絶妙な「ちょうどいい」にあふれているということです。ここまでの万能性、汎用性、耐久性はお話しましたが、内装もたぐいまれな、まるで建築資材のような重厚な操作感のスイッチなどあるのですが、けっして華美ではなく、豪華でもない。しかし、「ぱちん」とハザードスイッチをONするたびにそのしっかりとしたタッチに「メルセデスに乗っている」という自覚が芽生えますが「異次元」を盛り込もうなどとは決してしないところに感心させられるのです。絶対に背伸びはしない、必要以上に見せつけない。ここのぶれないけじめのようなスタンスには心の底から感心させられるのです。「さりげなさ」に似ているのですが、さりげなさ過ぎて、強く心打たれるのでさりげないのかさりげなくないのか、分からなくなるほどです。
少し、ここへ来て流通相場が上昇している気配があります。コンディションの良いものだけが残り、淘汰されていることもあるでしょう。そうはいってもせいぜい100万円程度。ワゴンでも200万円ほど、カブリオレで250万円程度くらい見ればよいのではないでしょうか。V8の特別な500E/E500も一時の法外な相場は影をひそめた感はあります。そのくらいの価格で購入できるクルマ、いったいどんなクルマがあるでしょう?新車ではコンパクトカーも買えない価格で、メルセデスの傑作が手に入るのですからいい時代です。
冒頭ヴィルトゥオーソの話をしました。音楽の世界でのヴィルトゥオーソは「権威」になります。しかしW124はいつまでも人々に愛され、むしろ時を重ねるほどフレンドリーな存在になっているとすら感じさせてくれるのです。そういうことを考えるとヴィルトゥオーソを超えた佳作。そんな存在なのかもしれませんね。何位か、何番目かではなくW124そんなクルマだと思います。そして私にとっては再び欲しいと思わせるクルマ。それがW124シリーズといえるのではないでしょうか。
[ライター/中込健太郎]
いやむしろ…
以前「This is サイコーにちょうどいい…」というミニバンのコマーシャルがありました。サイコーにちょうどいいって、W124にはかなわないよ。そんな風に突っ込んだりしたものです。第二回目の今回はW124を取り上げたいと思います。
音楽では完成の域に入った演奏家のことをヴィルトゥオーソと言ったりします。イタリア語で「博識、達人」を意味するそうです。クルマではどんなクルマが成り立つだろうか、振り返った時、W124とそのシリーズは、これに相当するのではないでしょうか。
( ※編集部追記:当記事は過去にメルマガ配信した記事です)
メルセデスベンツ最後のミディアムクラスにして、最初のEクラスであるこのクルマ、1985年~1995年まで製造されていた、メルセデスベンツの中型乗用車です。実は私のカーライフ、自分で最初に購入したクルマはこのW124でした。モデルは300E4MATIC、4輪駆動のセダンでした。子供のころから読みふけっていたカーグラフィック誌の長期テストでそのタフネスさ、世の中のメルセデスベンツ像をよそに「ガンガン使える実用車」を背中で示してくれたような毎月のレポート。ほぼ毎月300キロ以上の距離をコンスタントに重ね。危なげなく今月までの健康なコンディションが、翌月以降も普通に期待できる「安定」というより、むしろ「悠久」を感じさせるほどの耐久性には驚かされたものです。
そんなクルマに一度乗ってみたいと思っていた中で突如現れたクルマでした。べつに4MATICではなくともよかったのですが、イメージとしてはワゴンの方がイメージが強く、セダンの4MATICの存在を知りませんでした。そんな珍しい、しかもコンディションの良い一台の出現は見過ごすわけにはいかず、購入に至ったのでした。5年間4万キロほどほぼノントラブルで走破、京都日帰りなども何度か体験。どこまでも走って行きたい。いつまでも走っていたいと思わせるキャラクターに「これがメルセデスなのだ…」と実感したものです。
デザイン的にもイタリア人デザイナーブルーノサッコによる、メルセデス・ベンツ内製のデザイン。イタリアの、たとえばランチアなどにも決して負けない、エレガンスを持ちながらシンプルで飽きのこないもの。空力的にも優秀で機能美ともいえるこのデザインは場所を選ばず、冠婚葬祭からカジュアルなシーンまで、幅広く対応。
登場当時はそこそこ大きな車と認識されていましたが、日本でいうところの5ナンバーサイズを幅、全長ともにすこしだけ逸脱したに過ぎないこのクルマ、けっしてもてあますことがないばかりか、今では相対的にコンパクトなクルマの部類に含まれる一台でしょう。凛としたデザインは運転席からしっかりと四隅を把握でき、細い路地でも、物理的に車幅以上の道幅であれば、怖気づくことはないでしょう。
ただこのクルマの感心させられるのは、このクルマには絶妙な「ちょうどいい」にあふれているということです。ここまでの万能性、汎用性、耐久性はお話しましたが、内装もたぐいまれな、まるで建築資材のような重厚な操作感のスイッチなどあるのですが、けっして華美ではなく、豪華でもない。しかし、「ぱちん」とハザードスイッチをONするたびにそのしっかりとしたタッチに「メルセデスに乗っている」という自覚が芽生えますが「異次元」を盛り込もうなどとは決してしないところに感心させられるのです。絶対に背伸びはしない、必要以上に見せつけない。ここのぶれないけじめのようなスタンスには心の底から感心させられるのです。「さりげなさ」に似ているのですが、さりげなさ過ぎて、強く心打たれるのでさりげないのかさりげなくないのか、分からなくなるほどです。
少し、ここへ来て流通相場が上昇している気配があります。コンディションの良いものだけが残り、淘汰されていることもあるでしょう。そうはいってもせいぜい100万円程度。ワゴンでも200万円ほど、カブリオレで250万円程度くらい見ればよいのではないでしょうか。V8の特別な500E/E500も一時の法外な相場は影をひそめた感はあります。そのくらいの価格で購入できるクルマ、いったいどんなクルマがあるでしょう?新車ではコンパクトカーも買えない価格で、メルセデスの傑作が手に入るのですからいい時代です。
冒頭ヴィルトゥオーソの話をしました。音楽の世界でのヴィルトゥオーソは「権威」になります。しかしW124はいつまでも人々に愛され、むしろ時を重ねるほどフレンドリーな存在になっているとすら感じさせてくれるのです。そういうことを考えるとヴィルトゥオーソを超えた佳作。そんな存在なのかもしれませんね。何位か、何番目かではなくW124そんなクルマだと思います。そして私にとっては再び欲しいと思わせるクルマ。それがW124シリーズといえるのではないでしょうか。
[ライター/中込健太郎]