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更新2023.11.22

クルマの神様に初詣!東京オートサロン2022を振り返る

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中込 健太郎

このところ様々なイベントや行事がオンライン開催になっています。カスタムカーやアフターパーツなど最新の自動車の話題で盛り上がる東京オートサロンもリアルでの開催は2年ぶりのこと。


とにかく会場に足を運ぶことができたのはありがたい限りでした。こんなに開催そのものに「ありがたい」と感じたクルマのイベントはちょっと初めてかもしれません。


今回はそんな2022年の東京オートサロンを振り返ります。



会場にはBMW Z8が。これもクラシックカーという感じではないものの、貴重な存在ですし、近年取引価格の高騰している名車でもあります。個人的にはかなり印象的というか「拝めて嬉しかった一台」。


●elfブースにはタイレルP34が!



会場内でまず目についたのは「elf」のブース。タイレルP34がど真ん中に鎮座していました。


外車王SOKENでもたびたびご紹介している綿引雄司氏がハンドメイドで手掛けたタイレルP34が、東京オートサロン会場のelfブースにサプライズ展示されていたのです。



このタイレルP34がかつてF1に参戦したのは1976年のこと。筆者の生まれる前年のことですからだいぶ前のことです。もちろんリアルでその活躍を目の当たりにしているわけではありません。けれども、その個性的な6輪の出立ちはもちろん知っていました。


とはいえ、広い会場の中ということもありますが、どうしても、トラックの後輪タイヤのようなイメージがフロントの2軸のタイヤが重なってもっと大きいクルマのような気がしていましたが、実物はかなりコンパクト。それもそのはずで、元々軽量コンパクトなボディでもしっかりと接地を確保するためのアイデアがなした奇跡のフォルムなのですから。しかし、だからこそ、そのサイズ感とは裏腹な強烈な存在感を放っていました。



今ではTOTALグループの一角を担うオイルブランドelf。二輪の世界での知名度は圧倒的ですが、4輪用のオイルや添加剤も展開していて、それをさらに認知させたいというのが、今回のオートサロン出展の最大の目的とのこと。・・・であれば、ヒストリーやイメージの点でタイレルP34は適役かもしれません。



綿引氏がハンドメイドで創り上げたF1マシンなので、フォーミュラに参戦したマシンそのものというわけではもちろんありませんが、コックピット内部を覗き込んだりすると、叩き出されて整形された仕事には魂が宿っているようなオーラを感じ取ることができました。


クルマそのもの以上にクルマを想い、クルマを通して熱意や情熱を発散し合う場と言っても過言ではない祭典ともいえるのが東京オートサロン。elfのモータースポーツでの足跡を象徴する一台として、クラフトマンシップで復元したタイレルP34を並べることは、玉座に本物を飾る以上のアツいものが感じ取れる展示のようにも感じました。




筆者的には、以前のフランス車のボンネットを開けたときに現れるオイルキャップや、整備での注意を促すステッカーに明記されていた「elf」のロゴが思い出されました。また選択肢としてもっとポピュラーな存在になるといいなと思いました。


近年二輪向けオイルという印象が強い「elf」TOTALグループの代表的ブランド。その関係でシューズなどライダー向けを中心にアパレルのラインナップも充実。ライダー向けのシューズはやはり足でキック、変速できるように補強されています。



▲こちらは旧車向けのオイル添加剤も充実している


▲旧車向けのオイル添加剤も充実している


▲もちろんタイレルP34、そのフォルムが目を引くが、コックピットから中を覗きたくなる。非常に細かく、また形にする際の苦心の跡が、クラフトマンシップの熱意のようなものが伝わってくる

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●タロットのリーディング?なルノーブース


最近オートサロンは、メーカーの出展も増えてモーターショーのようになっているとの声も聞かれることもしばしばです。しかし今回は最近よく出展していたブランドの面影がなかったりして、こうなると少し寂しい気もしました。



そんな中、ルノーはしっかりとブースを出展し、人気のアルピーヌA110Sアセンションとハイブリッドニューモデルアルカナなどが紹介されていました。


アルピーヌは筆者の周りでも、その取り回しの良さとバリュー、安価ということではないもののそのバリューに見合った価格で実際に購入した人が少なくないモデルです。


その最新ラインナップのフラッグシップ「A110S」のフル装備の限定車。その限定数は30台。アルカナはF1のトランスミッション技術などを惜しみなく盛り込んだ輸入車唯一のフルハイブリッドモデルです。



思えばルノーの歴史は古く、その中で、FF、FR、RR、4WDなど「いかにして動力を大地に伝えるか」をそれぞれの方法で極めて来たようなメーカー。その動力の部分での「果敢な攻め」なのかな?と実はちょっと気になるモデルだったりします。しかもクーペSUVモデルと言いつつもそれはすなわちハッチバックの中型車。車検を切らせてしまっているがハンドリングで衝撃を覚えたラグナオーナーとしては、その系譜のクルマなのかどうかもやはり気になるところです。


しかし、今回のルノーの市販車2台、上昇を意味する「アセンション」とタロットのカードの分類も意味する「アルカナ」の揃い踏みで、新年早々タロット占いのリーディングでも聞いているかのような気持ちになってしまったのです。



しかも「運気上昇なのでもっと攻めるべき!」と言われたような気がします。まあ、運気上昇と言われた気になって悪い気はしないし、オートサロンでこれに気づいたということは、クルマの神様の御加護も引き続きあるかな?と勝手に解釈できたことが、実は一番の収穫だったようにも感じられたほどです、勝手な話なのですが(笑)。


●時代を超え、地域材と現代のセンスで紡ぎ出される遊び心「FAFビーチカーシリーリーズ」



以前バモス・ホンダベースのビーチカーを埼玉県産の木材でクルーザー風に仕立てたFAFビーチクルーザーを拝見しましたが、今回はダイハツ・フェローバギーベースの「ビーチバギー」とスバル360デラックスベースの「ビーチバン」が展示されていました。


FAFは軽自動車用リフトアップスプリングを手がけるフォレスト・オート・ファクトリー。ここがプロデュースして埼玉県比企郡ときがわ町の高村クラフト工房と共同で製作しているシリーズ。どこか懐かしく、軽自動車の小さなボディにキラリと光る魅力を与えて高い質感に仕上げられていて、毎回思わず足が止まるのです。


「かわいい」の一言で片付けるのは惜しいほど小さな遊びグルマとして完成している印象です。中でもビーチバン、今回のオートサロン全体の中でも心に止まった一台といえます。



ウッド張のラゲッジスペースに加えて、切り取られたルーフに桟のように渡された板が木漏れ日のように日光が車内に差し込みます。


こんなクルマ楽しいだろうな。運転しているときのことを思わず想像してしまうような楽しさがありました。小さなクルマ、密を避けてのパーソナルモビリティ。



今こそこういうクルマ、遊び心だけでなく、ベース車両たちも、その価値をもう一度見直されていいのではないでしょうか。



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●「一緒に写真撮ろう!」自工会会長は若者に声をかけた(NATS/日本自動車大学校)


オートサロンでマストなのはNATS/日本自動車大学校ブース。



今回も楽しいクルマを色々展示していましたが。印象に残ったのはNATS Law Limoでした。いわゆる先代のセンチュリーのリムジンです。


原型とどめているのであまり面白みがないかと思いきや、半年ほどの期間、実工期では120日ほど要したと言うストレッチセンチュリーはなかなか手の込んだものでした。


単なるニコイチ(2台を使って一台を完成させる)ではなく、ドアのみを2枚買い足して、それを継ぎ目のわからないように溶接したそうです。



ルーフはガラス張りながら、これはホンダエアウェイブのガラスルーフを2台分用意し、嵌め込んだ後にその曲率に合わせて縁の目貼りを行ったとのこと。ぱっと見、AピラーからCピラーへかけてのルーフのフォルムはオリジナルのラインを崩さず残しています。


カラーはホンダ・CR-Vの純正色。落ち着いた赤にしたいと言うのがコンセプトで、ボディを継いだ部分も自然に連続的に塗られています。ていねいに貼られたレザートップのみならず、下部のゴールドのストライプペイントなど細部の細工も抜かりない造り込みでした。


ハイドロユニットも仕込まれていて、運転席横のスイッチでピョコピョコと上げ下げすることもできるようにしたのだとか。オリジナルのボディメイクが芸術的な仕上がりなので、もちろんそれを大きく凌駕して、と言うわけではないかもしれませんが、なかなか負けていない。若い意欲とこだわりの詰まったリムジンでした。


そんなこだわりのクルマを見ていると、取材クルーがやってきて、そのうちの一人が「社長のご存知のセンチュリーとはまた違いますよ」と言って男性をそのセンチュリーのリムジンの車内に促しました。


豊田章男・トヨタ自動車社長とトヨタイムズの取材チームのようでした。しばらく学生さんと話したあと「一緒に写真を撮ろう」と学生さんたちと記念写真を撮ったりしていました。



▲豊田章男氏の周りには常に多くの人が集まっていた。ファンや業界関係者、取材人いろんな人が後を追い、周りを囲む。「クルマの話をしよう」という姿勢。こういう人がいるだけで嬉しくなるというものだ

トヨタ自動車社長であると同時に、日本自動車工業会会長でもある豊田章男氏もこの日会場を練り歩いて、限られた時間だったでしょうが、おそらく誰よりも楽しんでいたのではないでしょうか。



その姿や背中をも見せるように。来場者のみならず会場ですれ違う人たちに。特にこんな、次の時代の自動車業界の中心になる人たちとのコミュニケーション。こういう光景もオートサロンならではではないでしょうか。


●将来はレンタル風洞も!


オートサロンというと、煌びやかなカスタムカーなどのイメージがありますが、その一角で、工学部出身の筆者からすると妙に研究室的な雰囲気を放っていた一角がありました。GT-Rが風洞の前に置かれています。日本風洞製作所は自動車用風洞試験システムを作っている会社です。



「もちろん、オートサロンにでているエアロメーカーやホイールメーカーの商品、効果はあるでしょう。しかしその効果をより高め、最適化したり、ユーザー様視点でも、そういうものを購入装着したのち、効果を最大限に引き出すセッティングができるようになります。特に車両が載っている風洞天秤という台、これがなかなか高精度です。この装置を使えば、効果のピーク値をしっかりと引き出すことができます」とのこと。



その意味では、ちょっと毛色の違うブースではありましたが、オートサロンの本質を作り出すような会社と言えるかもしれませんね。


「ゆくゆくはこうした装置をレンタルで利用できたりすると、より簡単に、更なるパフォーマンスアップのお手伝いができるのではないかと考えています」とのこと。楽しみですね。


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●KINTOで旧車の体験も‼︎


北ホールではTOKYO OUTDOOR SHOWが併催されていました。最近では、クルマでどこに行くか?何をするか?と言ったクルマのある暮らしと非常に近い関係の体験・ライフスタイル系のコンテンツも増えてきました。そんなのを紹介するエリアで、オートサロンの来場者はそのままもれなく見学できます。



その一角にはKINTO、トヨタが展開するクルマのサブスクリプションですが、そのブースがありました。初期費用なしで利用できるプランや、中途解約がいつでも無料でできるプラン(※諸条件あり)など、クルマのある暮らしのハードルがかなり下がりつつあることを来場者に紹介していましたが、そこに、綺麗にレストアされたダルマセリカが展示されていました。


なんでも、KINTO利用者が特別な体験として旧車を体験できる機会も今後は用意できるようにしたいということのようで、それに先駆けてリフレッシュされたクルマとのことでした。厳密にはオリジナルパーツでない場所などもありますが、そこは実用を考えての走るためのリフレッシュになっていました。



クルマのある暮らしの楽しさを味わっていくうちに、昔のクルマも体験できるようになる。乗っていて、日々使っていると、いろんな興味が広がっていくもの。そこにもしっかり応える用意を考えるKINTO。メーカーとしては水素、PHEV、BEVからランドクルーザーのようなものまで幅広く用意する上に、全方位でクルマのある暮らしを提案しようとするトヨタには感服します。


●その他オートサロン「2022の思い出」


エンドレスブースの修復された旧車の展示も楽しみの一つ。綺麗なシルビアの前で足を止めてしまいます。日本の自動車の黎明期にコーチビルドという贅沢な作りにチャレンジした意欲作。フォルムもなかなか小粋ながら贅沢なもの。見るたびに感動させる力を感じますね。ラリージャパンの応援ブースも。今年こそは開催されることを祈るばかり。



▲エンドレスブースの修復された旧車の展示も楽しみの一つ


▲ラリージャパンの応援ブースも。今年こそは開催されることを祈るばかり


▲愛知県の幸田サーキットではコースサイドでキャンプができるのだとか。よく通る地域だし一度行ってみたいものだ

LIQUI MOLYのブースにはポルシェ912のパトカーが。当時国内で4台導入され、最後まで残ったこの一台は神奈川県警が使用していた個体とのことです。最近では912もずいぶん少なくなりましたが、サイズ的にも、RRというレイアウトで考えても、4気筒の912は歴代の911シリーズの中でも最も愛おしいモデルのように個人的には感じられます(厳密に言うと911ではないのかもしれないが)。



80年代・90年代まではまだいた非力なベーシックカー。そんなクルマ、今選ぶならこんなのはどうでしょうか。ウラジオストク生まれのV-LADA丸いライトが愛らしいと思って見ていたら、同じように懐かしい眼差しで覗き込む人が後をたたなかったのです。



先ごろモデルチェンジしたアトレー/ハイゼット。今回初めてアトレーに設定された「デッキバン」それのコンセプトカーが展示されていました。ルーフトップにはテント、室内に居間、荷台にはお風呂!しかも露天風呂!!



ちなみにアトレーの荷台の浴槽、ショーモデルだから単に貯められるだけのものではなく、浴槽自体も脱着できる上に、車体に載せたままでも水を抜くことができるように栓が車体側にも設けられてると教えられました。それを下から覗き込んだところが上の写真。ハリボテのようなものある中でダイハツのショーモデル、造り込みがリアルな使用に耐えられるものが多いようです。



ここでお目にかかれるとは思わなかったといえば、メルセデス・ベンツ シタン。ロングボディで窓や後部のスライドドアがないタイプはかなり徹底した商用仕様。隣にいるより大きなバン「スプリンター」は日本に輸入するとたちまち売れてしまうそうです。




クルマと会場に華を添える皆さん。今回ほとんどのブースでは基本マスク着用でしたが、撮影時特別にマスクを外して応じてくださいました。BUSOUブースの皆さん。左から早川みゆきさん、橘香恋さん、今井みどりさん、久保田杏奈さん、中村比菜さん、遊馬りえさん(撮影:重田伸哉)。



こちらはVeilSideブース。左から いち佳さん 花井ゆうかさん(撮影:重田伸哉)。


●トヨタのブースのゲートをくぐった時感じた「新年のご挨拶」という感覚



TOYOTA GAZOO Racingのブース、早い時間は混み合っておりなかなか入れなかったので、閉場間近に駆け足で見学させていただくことにしました。コロナ禍が完全に落ち着いていない中の開催ですので、入場者のカウントなどをするブースは少なくなかったのですが、TOYOTAのところも、入場者を制限しながら、しっかり入場者と退場者の数を、イメージカラーの赤い門を潜って出入りさせることで把握するようになっていました。



中には大活躍するモータースポーツのマシンの他、会期中に発売を迎えたGRMNヤリス関連の展示など華々しく輝かしい展示になっていたのです。



この赤い門のようなゲートをくぐった時、なぜか鳥居を潜ったような厳かな、あらたまった気持ちになりました。そうなれば、「今年もオートサロンに来られてありがとうございます、元気に過ごせますように」と心の中でお祈りしますね。



これまでも、業界の方へのご挨拶というのがオートサロンの目的の一つになっていたような面はありました。しかし今回は、もっと神聖な気持ち、まさにクルマの神様への自動車的初詣のような印象を強く感じたのです。


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●まとめ


デビュー直後のランドクルーザー300系もちらほらと見かけましたが、納車されはじめたばかりということもあって、具体的にそれをベースに本格的にドレスアップしたクルマなどはまだまだ少ない印象でした。それと86/BRZも同様。来年以降もう少しバリエーションが見られるかもしれません。



(撮影:重田伸哉)

それでも、いつもクルマのそばにいられてありがとうございます。今年もおかげさまでオートサロンに来られてありがとうございます。こんな気持ちになりました。クルマでつながり、クルマで誰かのためにお手伝い。確かにクルマあっての今の私。クルマのお陰様ですよね。今年もさらに役立てるように。そして来年また来られますように。



(撮影:重田伸哉)

どうせまた来年来られる、単なる年次行事ではなく、今この時、今年このオートサロンの場に来られて見聞きできたことは有難いご縁のおかげさま。自分の健康にも心から感謝ないではいられません。そんな今年のオートサロンとなりました。


[ライター・画像/中込健太郎]


 


 


 


 


 

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