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更新2015.10.19
クルマ好きなら耳にする試乗会。その裏側を新型マツダ・ロードスターを舞台にお届け
小鮒 康一
新型車が発表されると、ほぼ確実に行われる「試乗会」というイベントがあるのは皆さんご存知かと思います。発売前のモデルをジャーナリストやメディアの関係者に乗ってもらい、雑誌やウェブサイトなどで展開してもらうために開催されるもので、クルマ好きの方であれば耳にしたことが一度はあることでしょう。しかし、そこで語られるのは当然ながらクルマの特徴やスペック、フィーリングなどであり、試乗会がいったいどういうものなのか語られることはほぼありません。そこで、今回我々は「試乗会ってどんな風に行われているの?」という皆さんの疑問にお答えするべく、試乗会の裏側をお伝えしたいと思います。
試乗会の舞台は大きく分けて2つあり、サーキットやテストコースが舞台となるものと、実際に一般車に混じって一般公道を走るものに分けられます。前者は発表、発売前のモデルで公にできない部分がある車両や、高い走行性能を持つハイパフォーマンスモデルの場合が多く、後者は実際にリアルなシチュエーションで体感してもらいたい場合や、公道を走ることで一般車両へのコマーシャルの意味合いも持ち合わせています。
今回、我々がお邪魔したのは新型マツダ・ロードスターの公道試乗会です。舞台となったのは、多くのワインディングロードを有する静岡県伊豆市で、修善寺にあるサイクルスポーツセンターが拠点となりました。試乗は午前と午後に分けられており、我々は午前の部に参加。会場に到着し受付を済ませると、媒体名と個人名が書かれた名札を渡されます。そして会場内の一室に集まるといよいよ試乗会のスタートとなります。まずは試乗会のコース説明と諸注意事項の説明がなされます。公道を使用しての試乗会ということもあり、当然のことながら法令順守が求められるのは言うまでもありません。試乗会を行う旨は地元警察などの関係各所にも届け出済みなので、試乗車で交通違反などをしてしまうとメーカー側にも迷惑がかかってしまいます。ここは飛ばしたい気持ちをグッとこらえてセーフティドライブに努めます。
車両は仕様の違う2グレードが用意され、各90分ずつ試乗することができました。試乗車は毎回すべての仕様が用意されるわけではなく、メインのグレードのみの場合もあります。試乗後、拠点に戻るとすぐに別媒体にクルマをバトンタッチしなければならないため、時間厳守が求められます。また、限られた時間で撮影やインプレッションをこなさなければいけません。今回はメーカー側でオススメ撮影スポットが準備されていたため不要でしたが、事前に撮影ポイントなどのチェックも必要となります(当日はあまりにロードスターのドライブが楽しくて、撮影スポットを通りすぎてしまったのはヒミツです)
試乗車は各メディアの被写体になることからも、試乗が終わったら適宜メーカースタッフの手で清掃が行われます。タオルやウエスでのボディの清掃はもちろん、小型の掃除機での車内清掃までこなし、すぐに次のメディアにクルマを引き渡す様はまるでレースのピットストップのよう。このような現場での細かな努力によって、試乗会が滞ることなく運営されていくのです。
試乗後は、施設内に戻って開発に携わったメンバーからクルマにまつわるお話を聞く時間が設けられます。もちろん公にできない情報も多数ありますので、いかにうまく話を聞き出せるかが腕のみせどころ。ここは読み手がどんな情報を欲しているのかをイメージしながらお話しを聞くことが重要です。決して筆者のように、マニアックな質問に終始してしまってはいけません(自戒の念を込めて)
そして担当者のお話を聞いたところで一通りの取材工程は終了となります。今回はメーカーのご厚意で昼食が用意されていたため食事をとり現場を後にしましたが、我々が現場を後にするころには午後の部がすでにスタートしており、慌ただしく動き回るスタッフの方たちが印象的でした。短い試乗時間の中で最大限クルマを魅力を伝えようとする、メーカー側の影の努力が垣間見えた今回の試乗会。普段の試乗記では知ることのできない部分がお伝えできたらうれしく思います。
[ライター・カメラ/小鮒康一]