更新2025.01.15
個人事業主のクルマ売却時の確定申告ガイド | 譲渡所得の計算から仕訳のポイントまで徹底解説
外車王SOKEN編集部
個人事業主がクルマを売却した際、確定申告が必要なのか気にしている方は多いでしょう。事業用のクルマは「譲渡所得」として申告する必要があり、さらに事業利用と私的利用の按分計算も求められます。本記事では、確定申告の際に必要な譲渡所得の考え方から、具体的な仕訳方法まで、実務に即してわかりやすく解説します。
個人事業主のクルマ売却は「譲渡所得」として確定申告が必要
事業用に使用していたクルマを売却した場合、その売却益は原則として譲渡所得として確定申告する必要があります。個人事業主の方は、この処理を正しく行わないと、税務調査の対象となる可能性もあり、慎重な対応が求められます。
事業用クルマの売却時における譲渡所得の基本的な考え方
事業用クルマの売却による譲渡所得は、売却価格から取得価額と売却費用を差し引いて計算します。ここで重要なのは、事業用資産として使用していた期間が5年を超えるかどうかです。5年超の場合は「長期譲渡所得」として、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として区分されます。これにより適用される税率が変わってきます。
長期譲渡所得の場合は、所得の2分の1が総所得金額に算入され、比較的有利な課税となります。一方、短期譲渡所得の場合は、所得全額が総所得金額に算入されるため、税負担が大きくなる傾向にあります。このため、売却のタイミングを検討する際は、取得からの期間を考慮しましょう。
さらに、譲渡所得の計算において重要な「取得費」には、下記の項目が含まれます。
・購入価格(消費税を含む)
・購入手数料
・登録費用
・取得のための付随費用(運搬費用など)
また、「売却費用」には下記が含まれます。
・名義変更費用
・広告費(売却のために支出した場合)
・仲介手数料
・その他売却に直接要した費用
特に注意が必要なのは、通常の修理費や維持費は取得費に含まれないという点です。ただし、売却のために行った大規模な修理や整備費用は、売却費用として認められる場合があります。
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非課税となるケースと課税対象となるケースの判断基準
クルマの売却が全て課税対象となるわけではありません。下記のケースでは非課税となります。
・通勤専用のクルマを売却した場合(生活必需品として扱われる)
・災害等による強制換価の場合
・国や地方公共団体への譲渡の場合
一方で、下記のケースは課税対象となるため、注意が必要です。
・事業用として減価償却を行っていたクルマの売却
・事業用と私用で併用していたクルマの売却(按分計算が必要)
・購入時よりも高額で売却できた場合(一般の個人の場合でも課税対象)
なお、事業用クルマの判定基準について、国税庁の通達では以下のような基準が示されています。
1. 明らかに事業用と認められるケース
・事業において運送業務を行うクルマ
・営業用として使用している社用車
・デモカーや展示車として使用しているクルマ
2. 事業用と判断が難しいケース
・事務所への通勤と営業活動の両方に使用しているクルマ
・私用と事業用で併用しているクルマ
このような判断が難しいケースでは、下記の書類による証明が必要です。
・運行日誌(業務使用の記録)
・ガソリン代等の経費計上資料
・車検証(使用者欄の確認)
・自動車保険証券(使用目的の確認)
事業割合(按分)を考慮した譲渡所得の正しい計算方法
事業用と私用で併用していたクルマの譲渡所得を計算する際は、事業使用割合に応じた按分計算が必要です。按分方法は主に下記の2つがあります。
・走行距離による按分
事業用の走行距離÷総走行距離で事業使用割合を算出
・使用日数による按分
事業使用日数÷総使用日数で事業使用割合を算出
なお、按分計算の根拠となる走行距離や使用日数は、適切に記録を残しておくことが重要です。特に青色申告の場合は、走行距離を記録した運行日誌の保管が推奨されます。
具体的な按分計算の例をみてみましょう。
【計算例】
売却価格:200万円
取得価額:300万円
年間走行距離:20,000km
うち事業使用:15,000km
事業使用割合:75%(15,000km÷20,000km)
譲渡所得の計算
・譲渡収入:200万円×75%=150万円
・取得費:300万円×75%=225万円
・譲渡損失:75万円(150万円-225万円)
このケースでは、事業用部分について75万円の譲渡損失が計上されることになります。また、按分計算の根拠資料として、以下の項目を記録しておくことが推奨されます。
・日付
・出発地点と到着地点
・走行距離
・使用目的(事業用/私用の区分)
・給油記録
・駐車場の利用記録
リサイクル預託金と減価償却費の処理における注意点
リサイクル預託金は、クルマの売却時に買主に引き継がれる場合と、売主に返還される場合があります。この処理を誤ると、譲渡所得の計算にも影響を与えるため、注意が必要です。
また、減価償却費については下記の点に特に注意が必要です。
・取得価額から減価償却累計額を差し引いた金額が譲渡原価となる
・事業専用の場合は全額、併用の場合は事業割合分が対象
・耐用年数は6年(普通自動車の場合)を基準に計算
リサイクル預託金の具体的な処理例
1. 買主に引き継ぐ場合
(借方)車両運搬具 XXX / (貸方)現金 XXX リサイクル預託金 XXX
2. 返還を受ける場合
(借方)現金 XXX / (貸方)リサイクル預託金 XXX
減価償却費については、下記の計算例が参考になります。
【計算例】
取得価額:300万円
耐用年数:6年
償却方法:定額法
事業使用割合:80%
年間の減価償却費:
300万円×0.8(事業使用割合)÷6年=40万円
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消費税の有無による仕訳例と具体的な処理方法
消費税課税事業者かどうかによっても仕訳方法が異なります。ここでは、具体的な処理内容について解説します。
消費税課税事業者の場合の仕訳例
(借方)現金預金 XXX / (貸方)車輌運搬具 XXX
仮受消費税 XXX
固定資産売却益 XXX
消費税免税事業者の場合の仕訳例
(借方)現金預金 XXX / (貸方)車輌運搬具 XXX
固定資産売却益 XXX
売却損益パターン別の仕訳例と青色申告決算書への記載方法
売却益が発生したのか、売却損が発生したのかによっても仕訳方法が異なります。それぞれの処理内容についてみていきましょう。
売却益が発生した場合の仕訳例
(借方)現金預金 1,100,000 / (貸方)車両運搬具 800,000
固定資産売却益 300,000
売却損が発生した場合の仕訳例
(借方)現金預金 700,000
固定資産売却損 100,000 / (貸方)車両運搬具 800,000
これらの仕訳は、青色申告決算書の「固定資産売却益」または「固定資産売却損」の欄に記載します。
青色申告決算書への記載内容
これらの仕訳は、青色申告決算書の「固定資産売却益」または「固定資産売却損」の欄に記載します。青色申告決算書への具体的な記載方法は下記のとおりです。
1. 収入金額の部
・製造業、建設業、卸売業、小売業の場合:「⑭ その他」欄
・サービス業の場合:「㉑ その他」欄
2. 所得金額の部
・「㊸ 専従者給与(控除)前の所得金額」の計算に含める
特に注意が必要な点として、クルマの売却損益は、通常の営業活動による収益とは区別して記載する必要があります。
【まとめ】確定申告を踏まえた適切なクルマの売却方法とは
個人事業主のクルマ売却時の確定申告は、譲渡所得の計算や按分処理など、複雑な実務処理が必要となります。特に下記の点に注意が必要です。
・事業用クルマの売却は原則として譲渡所得として申告が必要
・取得から5年超か以下かで税率が変わる
・事業割合の按分計算は根拠資料の保管が重要
・リサイクル預託金や減価償却費の処理にも注意が必要
確定申告について不安な点がある場合は、税理士への相談もおすすめです。
なお、クルマを高額で売却するためには、専門業者による適切な査定を受けることが重要です。外車王では、輸入車専門の買取店による入札方式を採用しており、適正価格での売却をサポートしています。おクルマをご売却の際は、外車王の無料査定をご利用ください。輸入車に精通した専門家が、お客様のクルマの価値を最大限に引き出します。