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更新2020.08.30
見知らぬオーナーに声を掛ける際に気をつけたい「7つのNGワード」とは?
ryoshr
新型コロナウイルス以前は、公式・非公式問わず、全国各地で似たようなクルマが集まるイベントがたくさん開催されていた。また、ドライブの帰りに休憩に寄った高速道路のサービスエリアで、「こっ、これはっ!」と思うクルマを見つけてしまい、オーナーさんが戻ってくるのを待って話しかけたりと、全国で数多くの新しい出会いや会話が交わされていたに違いない。
しかし、「同じ車種が好きだ」という共通点はあっても、話題にしない方があることも理解して欲しい。面識のない相手であればなおさら。いわゆる武士の情けというか、知らぬが仏というか、そういう類のことだ。今回はその事例を挙げてみたい。
1「このクルマ、いくらで買ったんですか?」
どうも相場を知っていて、それよりも安く買っていたら褒めてくれるんだろうか、なんて思ったこともあったけれど、大抵はそうじゃない。相場が分かっている人は、売買しないタイミングで金額の話はしないものだ。だから「ただの好奇心で」聞いているケースがほとんどだと思っていい。
これに加えて、最初の問い掛けが「このクルマ、いくらで買ったんですか?」だった場合、そのクルマに対してあまり興味がないように思う。とはいえ、仮に「XXX万円ですよ」と、購入したとき(何年前かまでは言わないけど)の金額を教えたところで、「へー」というリアクションだけで、その次の言葉というか会話が続かなくなるケースがほとんどだ。
例えば、旧いクルマを3万円で買ってきてレストアし、ようやく乗れるようになったケースだってありうる。また、車両本体価格500万円+整備代200万円分を上乗せして、ようやく安心して乗れるようになったクルマかもしれない。旧ければ旧いほど、購入したときの金額はそのクルマの価値を正確には表さないし、本来はどうでもいい数字だ。どうしても金額で価値を確認したいときは「同じようなクルマを今買おうと思ったら、いったいどれくらいでしょうかねえ」くらいなら、会話が続くかもしれない。
2「これ、ホンモノですか?」
ポルシェ356にはVWタイプ1(空冷ビートル)をベースにしたレプリカが存在していることは有名だ。また、スカイラインのトランクフードに「GT-R」のバッチをつけたりしているクルマを見掛けることもある。それが「ホンモノ」か「GT-R仕様」か?はたまた、メルセデス・ベンツにもAMG仕様があるくらいだから、例を挙げたらキリがない。
希少車らしいクルマを発見した際に、レプリカやバッチチューンを見抜いたのか否かまではわからないが「これ、ホンモノですか?」と唐突に聞く人が実在する。オーナーからすれば大きなお世話だ。ホンモノだろうが、レプリカだろうが、バッチだけだろうが、オーナーが好きでやっているだけのこと。そもそも、そのことを認識していないオーナーがいるわけがないのだ。こう聞いていいのは、軽のワンボックスをワーゲンバスの顔にしたクルマだけだ。どうしてもホンモノかどうか知りたいときは「珍しいクルマですよね!」くらいなら、オーナーのしゃべりたい心を刺激して真実が聞けるかもしれない。
3「これまで修理でいくら使ったんですか?」
このクルマの弱点を知っていて、お約束の故障箇所をクリアしてきたか確認したいんだろうか。ウォーターポンプやヘッドガスケット、ATミッションやボディの防錆処理とか…。さまざまな弱点を持つクルマがあることも事実だが、それはやはり一般論だ。持病と付き合ってでも乗り続ける決意をした人もいるだろうし、不具合が発生するたび、新車時の性能に近づくように修理や整備をする人もいるだろう。
また最近では、金額云々の前に、国産車を中心に旧型車の純正パーツが買えなくなってきているようだ。旧型車の部品流通という意味では、残念ながら日本にいたとしても、輸入車の部品の共有の方が潤沢だ。どうしても修理金額を聞きたいときは「部品は今でも手に入るんですか?」くらいなら、その先の会話が続くかもしれない。
4「壊れませんか?」
「機械だから壊れます」という風に、会話を打ち切る最終兵器が喉まで出たりするところをグッと抑える紳士的なオーナーが多い。大抵は「そうでもないですよ(にっこり)」みたいな返事をしてくれる。しかし、これに騙されてはいけない。旧いクルマに乗っていると、故障の概念がだんだん矮小化していくのがわかる。だいたいの不具合は「経年劣化によって部品交換が必要になったイベント」であって、故障ではないと考えるようになるからだ。
このところ猛暑が続いていて、人間も大変であるのと同じように、クルマも過酷な状況にあることはぜひ理解してあげてほしいところだ。特に、いまの日本ほどの亜熱帯でない生産国からやってきた輸入車のなかには「暑いのが苦手」なクルマがいることも事実。水温が上がり過ぎた結果、水圧も上昇しまい、経路上、弱った箇所からクーラントが漏れる、なんてことは全部故障ではないわけで…。これって経年変化で弱っただけなのだ(笑)。リレーが古くなって内部で断線したり、シフトレバーが折れたり…も、すべて「経年劣化」だ。どうしてもこのオーナーから故障自慢を引き出したいときは「最近交換した部品は何ですか?」くらいなら、その先の会話が続くかもしれない。
5「燃費はどれくらいですか?」
これを聞かれた85%以上の旧車オーナーはこめかみがピクっと動く(笑)。本気で返事をするなら「放っておいてくれ」だ。暖機運転が必要な場合、必然的に燃費が悪くなるし、キャブ車の場合は現在の電子制御の同程度の排気量のクルマよりは…ということだ。ましてや、ハイブリッド車と比較することなどもっての他だ。ハイブリッド車は燃費もいいし、税金も優遇されているので、ちょっとひがんじゃったりするわけで。
とはいえ、維持費としての燃費を気にする旧車オーナーはまずいない。これはおそらく、スーパーカーオーナーも同じだろう。エンジンの調子の良さを表すパラメータとして採用するケースはあるが、全体の維持費(修理代、税金、屋根付き駐車場の維持費)から比べたら、燃料費の占める割合は本当に小さいので、そもそも燃費は気にならないからだ。
どうしても燃費の話をしたいときは「やっぱりハイオクなんですか?」くらいなら、その先の会話が続くかもしれない。
6「売ってくれませんか?」
本当にそのクルマが気に入った人は、まず間違いなく初対面でこれは聞かないだろう。だから、聞いた人はそのクルマのことを本当に好きなわけではなく、ビジネスの道具としか思っていないことは誰もが知っている。どんなに気に入って欲しくなってもこれだけは言ってはいけない。そのクルマに一目惚れしてしまったことをオーナーへ告白したいときには「今度、もっとゆっくり見せてもらえませんか?」くらいなら、その先の会話も続くかもしれない。
7「このクルマ、知ってます」
希少車や珍しいクルマ、年式の場合、声をかけてきた人がこの個体そのものを知っていることがある。嘘のように感じるかもしれないが、本当だ。
筆者自身にも経験がある。とあるイベントに行ったとき、以前自分が乗ってたクルマがさらにキレイになってショウに出ていたことがある。それほど珍しいクルマではなかったが、通常はボディと同じ色でペイントされるパーツを筆者が丹精込めてピカールで磨いて装着していたのだ。そのパーツがそのままピッカピカの状態で残されていたことが決め手だった。このときは鳥肌が立ったし、現オーナーさんを探し出して、話をして、このパーツをペイントしなかったことに対して感謝の気持ちを伝えた。
自分がオーナーではなかったにしても、友人が苦労して修理したり、大切に扱っていたクルマの固有の特徴を発見して特定できてしまう場合もある。そういうときは積極的に話をすべきだと思う。ただし、故障歴や修理歴は現オーナーへは知らされていないケースがあるので、ここは敢えて「お伝えしない方がいい」かもしれない。
まとめ「オーナーの気持ちを慮ることを忘れずに…」
SNSなどで文字だけでのコミュニケーションであれば、流れのなかで上記のようなことを聞くケースがあるかもしれない。しかし、リアルなコミュニケーションの場においては、オーナーが聞かれたくないことがあることを覚えておいて欲しい。
ほら、タクシーの運転手さんでも話好きな人だとどんどん踏み込んで来たりすると、こっちが黙っちゃうこと、あるでしょ。
どんなオーナーでも愛車の話はいくらでもしたいと思っているはずだ。しかし、上記のような質問はオーナーの話したい気持ちを抑え込んだり、喪失させてしまう可能性があるのだ。コロナ禍の今、じっと我慢をしつつ、そんな(旧車に限らず)オーナーの気持ちを理解してもらったうえで、来たるべきシーズンのリアルコミュニケーションを楽しんで欲しい。
[ライター・撮影/ryoshr]