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メンテナンス

更新2017.04.05

旧車に乗ることをあきらめないで欲しい。国産クラシックカー部品の救世主「THサービス」

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鈴木 修一郎

今や世界に冠たる自動車生産国日本。しかし国産クラシックカーの部品の供給に関しては年を追うごとに悪化の一途をたどり、国産車こそ日本で最も維持が大変なクラシックカーという深刻な状況にあるというのはカレントライフ読者の皆様には周知の事かと思います。

セリカよりも本家マスタングの方が部品に困らないという事実


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最近は一部の自動車メーカーで過去の車両の部品供給の再開を検討中というアナウンスもありますが、まだまだこの状況を打破するまでには至らないというのが筆者の率直な印象です。しかし、この最悪な状況を打破しようとする情熱を持った事業を始めた方がいます。

それが今回紹介するTHサービス合同会社の平野孝之さんです。実は平野さんとは実際に何度かお会いしたこともあり、ネット上ではしばし個人的にも交友のある方です。元々は初代マスタングのグランデのオーナーで、以前書いた通り初代セリカのオーナーである筆者にとってもマスタングは非常に興味のあるクルマで、一度イベントでお会いした際にマスタングのシートに座らせてもらった事があります。

平野さんは学生時代からマスタングを自らの手でレストアをし、マスタングのレストアに関してはスペシャリストと言っても過言ではないでしょう。なにしろマスタングはアメリカンマッスルカーの中では人気車種、部品に関してはリーズナブルで供給には困りません。ヘタをしたらマスタングの後追いでリリースされたセリカよりも本家マスタングの方が部品に困らないという事実は羨ましい限り、言語の壁さえ克服すれば整備マニュアルを片手に必要な部品は本国から調達することも不可能ではありません。

中にはダイナコーンという、マスタングなどの往年のアメリカ車のボディシェルをまるごとリプロ品で製造しているメーカーも存在し、時には筆者も「どうせなら自分もセリカではなくマスタングフリークになればこんな余計な苦労はしないで済んだのに」と思う事すらあります。

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なぜ海外で国産クラシックカーが数多く存在しているのか


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最近は国産クラシックカーもヴィンテージとしての評価も高くなり、中にはフェアレディZやホンダS600・S800等新車当時から日本以上に海外での方が人気のある日本車も少なからず存在します。とくにZカーことダットサン240ZはVWビートルとならんでアメリカにおける人気の輸入車なのですが、ここでふとある疑問が生じるのではないでしょうか?「日本では部品の入手困難な国産旧車が何故、輸出先の海外では数多く現存しているのか?」それはずばり、日本国内では流通していなくても、クラシックカーのリプロ部品のメーカーが存在する国では過去に日本から輸入された日本車の部品も製造しているからです。

国によっては20万km30万km、当たり前のように使うケースはいくらでもあります。東南アジアや中近東では20年も30年も前の日本車が普通に使用されている事例も珍しくありません。今後、要調査なのですが東南アジアのトゥクトゥクは戦後賠償で無償で輸出した日本の中古オート三輪をそのまま使い続けている関係で、トゥクトゥクの部品がミゼットの補修部品として使用可能という話を聞いたことがあります。

とあるレストア専門店で、日本で自動車メーカーに部品を納入している部品メーカーが、国内のメーカー純正部品販売を製造廃止にした一方で、海外の部品販売会社にはメーカー純正部品と全く同じものを納入しているという話を聞いたときはなんとも複雑な思いに駆られました。海外では当たり前のように流通している、日本車用リプロ部品をアメリカ本国からのマスタングの部品調達のノウハウで日本の国産旧車オーナーのために日本に入れることは出来ないか?と立ち上がったのはTHサービスの平野さんです。

THサービスを立ち上げたきっかけと苦労


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きっかけは日本では部品の入手が年々困難になるトヨタ車をはじめとする、国産旧車オーナーの知人が皆部品の入手に悩んでいるのを目の当たりにし、古い日本車がまだ使われている国ならマスタング同様、リプロ品の古い日本車用の部品を入手することが出来るのではないか?と考えた所から始まりました。すると案の定、古い日本車が今でも沢山走っている東南アジア、特にタイには日本車のリプロ部品メーカーが存在することを突き止め、マスタングの部品入手のノウハウを活かして、東南アジアから日本車用の部品を入手するルートを確立するに至ります。

とはいえ、リプロ部品を扱うというのは容易な事ではありません。平野さんも、いくらマスタングが本国ではリプロ品が流通してるからといっても、当初は簡単に本国のリプロ部品メーカー部品を取り寄せれば済むという物ではなかったようで、同じ部品でも複数のメーカーからリリースされていて値段も品質、性能もバラバラで、とりあえず一時しのぎ程度にしか使えない耐久性の低い物からメーカー純正と遜色ない品質の物までまちまちで、中には同じ部品メーカー製でフォード社のロゴ入り純正品同様の扱いで販売されているか、フォードのロゴ無しの社外品のノンブランド品として販売されているかで中身は全く同じ部品で値段が違う、というケースもあったそうで、必ずしも高価な部品でなければならないというわけでもなく、どれが実用に耐えうるものか、価格に見合った品質なのかそれを見極める審美眼のノウハウの蓄積にはかなり苦労されたとのことでした。

ただ、最近は何処のメーカーも製作技術が向上し全体的にはリプロ部品の品質が向上しているようで、リプロ部品のラインナップも年々広がり、レース用のホモロゲモデルや限定モデルなど、よほど珍しいモデルでもない限りたいていの部品は手に入る等、ますます初代セリカオーナーの筆者には羨ましい限りです。

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旧車部品の互換性などを把握する難しさは一筋縄ではいかない


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しかし、いくら部品の入手ルートに目途が付いたとしても、取り扱う車種の年式、グレードによってどの品番の部品が使われているかを全て網羅し、どの部品に互換性があるかを突き止めなければなりません。まずはトヨタ車で比較的人気があり、ボディ形状が違うだけで全く同じシャシーを使っていることで互換部品の多い初代セリカ・カリーナから始まりましたが、姉妹車と言っても一筋縄ではいきません。

グレード体系が全く違うため、どのモデルがどの部品を使っていて、どの部品が互換性を持っているかを突き止める必要があるため、セリカ・カリーナの全モデルの全部品の部品番号を精査することから始めなければなりません。中には代替品番として形状変更して他の車種の部品と共用化していたり、実はセリカ用、カリーナ用の部品としては供給されていない部品が、実は全く違う車種の部品で現在も供給されていたというケースもあります。また他の車種でもう入手不可能と思われていた部品がセリカ用の部品と同じでセリカの部品としてなら入手できたというケースもあります。

こういった気の遠くなるようなデータの収集をゼロから始めて次第に取り扱い車種を広げてゆき、現在ではトヨタ車以外の部品の取り扱いも始め国産旧車では鉄板の人気のスカイラインやブルーバード、乗用車生産撤退から20年以上が経過しもはやメーカーからの部品供給も絶望的になりつつある、いすゞ車の部品も取り扱うようになりました。

取扱いの無い車種でも「ご相談」ができ、製品化もありうる


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最近は、現在取り扱いの無い車種でも部品によっては「ご相談」という形をとることもあるようです。現在、取り扱いの無い部品でも「ご相談」があれば、他で流用できるものはないか、場合によっては製品化もありうるそうです。

中でもウェザーゴム類は状態の良いサンプルがあれば同じ形状のものを作れる場合があるそうで、なんとTHサービスは海外で流通しているリプロパーツを取り寄せるだけでなく、いよいよ型を起こして自社ブランドでリプロパーツを作るというところまで事業展開を始めたのです。製造工場はタイのメーカーとのことですが、ご存知の通り経済発展の著しい東南アジアは工業力の発展も目覚ましく、今やタイは工業製品の品質においても日本での販売になんら支障のない物が作れるまでになっているそうで、平野さんは中間業者を通さず現地のメーカーと直接取引しているため、部品の仕様に対する希望の伝達も迅速かつ正確で価格もリーズナブルに抑えることができるそうです。

また前述のとおり、国内で流通してないだけで実はまだ輸出向けに国内の部品メーカーが昔の国産車の部品を製造しているケースもあり「可能な物は国内メーカーからの調達も進めている」ともおっしゃっていました。

実は筆者も欧米にはミニ、VW、マスタング、シボレーインパラ等のクラシックカーのリプロパーツを作る業者があるのなら、いっそ海外のメーカーに頼んでしまえば国産車の部品も作ってもらえるのではないか?と、夢想した事があったのですが、なんと平野さんはそれを実行に移すに至ったのです!

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国産旧車のどの部品が全体の需要が多いのか情報が欲しい


最近はアメリカのマッスルカーのリプロパーツを製造する会社とマスタングの部品で交渉しているそうで、将来的には国産旧車のシリンダーブロックや、クランクシャフト、トランスミッションのギアやインプットシャフト、シンクロ機構といった重要な機能部品やボディパネルやエンブレム等の外装品を供給することを視野に入れているようです。ただし、ボディパネルやシリンダーは部品が大きいため保管スペースを要しレンズ類やエンブレムなどの射出成形で作る樹脂部品は小ロット生産が難しく「ウチもある程度規模が大きくならないと・・(苦笑)」とのことでした。

まずはどの部品が需要が多いのか、販売の回転が速いのかを知りたいとのことで、「是非、国産旧車のオーナーの皆様からどの部品が全体の需要が多いのか情報が欲しい、それによって拡販が進めば将来的に難物の大物部品や樹脂部品の販売にも見込みが出来る」という事だそうです。また、ユーザーからのご意見も歓迎だそうで、不具合や問題点があれば遠慮なく言って欲しいとのことで、今後の改良や商品展開にフィードバックするとのことです。よく、マスタング、ミニ、VWタイプ1あたりの車両だと、ボディシェルまでリプロ品がありプロパーツだけで新車が組めてしまうと言われますが、もしかしたら今後の日本もセリカ、スカイライン、Zあたりだとリプロ品で1台新車が組める・・なんて未来もあるかもしれません。

THサービスでは部品の販売だけでなく、クラシックカーのレストア事業のコンサルティングもしているそうです。部品が無くてこのままでは愛車の、預かったお客さんのクルマの公道復帰の見込みがないという旧車オーナー、もしくは整備工場の方、あきらめる前に是非一度THサービスにご相談してみてはいかがでしょうか?もしかしたら平野さんが打開策の提案をしてくれるかもしれません。

[ライター/鈴木修一郎 画像提供/TH service合同会社・鈴木修一郎]

【取材協力】
TH service合同会社
http://thservice.jugem.jp/
〒359-0024
埼玉県所沢市下安松187-12
電話番号:04-2944-8041
営業時間:09:30~19:00
定休日:水曜日、イベント出店時

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