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更新2021.04.05
新旧比較!甦ったポルシェ911Rは、商業主義に傾倒したモデルなのか?
松村 透
1967年に登場した初代911Rを、21世紀的に解釈したといえる1台のようです。
▼2017 Porsche 911R(991R) - 公式フィルム
初代911Rに対して強い思い入れがある方にとって、2代目となる今回の911R(991R)は、商業主義に傾倒したモデルではないかと思う方がいるようです。私も実際、永らくナローポルシェを乗り続けている方からそんな声を耳にしました。では、実際はどうなのでしょうか。
▼オフィシャルの動画でも新旧911Rが共演
初代911Rに思い入れがある方と、今回発売された2代目911R(991R)に一目惚れしてしまった方。それによって見方や解釈が異なってくる、といえそうです。
以前の記事で予想した仕様と比較してみる
また、2015年10月に筆者が執筆した記事『幻のポルシェ911Rが復活?最新911Rは「最良のR」なのか?』(※本記事の最後で当該記事もご紹介)で予想した仕様にどれくらい近づけていたか、整理してみました。
・ベース車両:991 CarerraS
→ベース車両は991GT3
・トランスミッション:PDKor7MTの両方が選択可能?
→専用開発の6MT
・GT3のエンジンをさらにチューン
→搭載されたのはGT3RS用エンジン
・2シーター化/フルバケットシート
→2シーター化/専用フルバケットシート
・クラブスポーツパッケージ
→ロールケージ等の装備はなし
・PCCBは標準装備
→PCCB標準装備
・エアバッグは標準装備
→エアバッグ標準装備
・パワステは標準装備
→標準装備(991R専用チューニング)
・エアコンレス(オプション設定あり)
→エアコンレス(オプション設定あり)
・オーディオレス(オプション設定あり)
→標準装備
・限定600台という説が有力?
→限定991台
・価格:3,000万円くらい?
→2,629万円
結論、2代目ポルシェ911R(991R)が後世に語り継がれていく名車なのか?
2代目911R(991R)の特長を整理すると、
●6MT(6速マニュアルスポーツMT/他のモデルは7MT)
●GT3RSエンジン(最高出力500馬力/NAエンジン)
●GT3シャーシ
●現行ポルシェ911のなかで最軽量モデル(車両総重量1,370kg)
●初代911Rの正当な後継モデル(R = Racing)
…といったところでしょうか。
既に販売されているスペシャルな現行911の要素を盛り込み、さらに軽量化を果たした「可能な限り、マニアックな911乗りの琴線に触れることを意識した」ものが、現代版911Rと言えるのではないでしょうか。
ただ、例えば964RSのような、見た目は素のカレラ2とそれほど変わらない佇まいながらも、低められた車高から凄味を感じさせる何かがあったように、「黙して語らず」的なよりスパルタンな仕様があってもよいのかもしれません。
もしかしたら、ポルシェのトランスミッションもいずれPDKのみ(当分ないと思われますが)になり、ダウンサイジングターボエンジンに一本化され、ボディサイズもより大きく、重くなる…。この方向性であるように思えてなりません。加えて、ハイブリッドや電気自動車など、純粋な内燃機関を搭載したクルマそのものが、近い将来、過去のものになる可能性(マニアにとっては覚悟のようなもの)が高いはずです。
約50年振りに復活を果たした911R。次に姿を現すのは2066年?あたりになるのでしょうか。いずれにしても、初代、そして2代目とはまったく異なる911Rとしてこの世に姿を現すのかもしれません。その姿を見届けてみたいものですが、それは次の世代の方々へ託すことになりそうです。
※オフィシャルサイトでも、ポルシェ911Rのスペシャルページがリリースされています。
(以下からは、2015年10月に筆者が執筆した911Rの仕様を予想した記事です)
幻のポルシェ911Rが復活?最新911Rは最良のRなのか
先日、GT3エンジンを搭載し、3ペダルMTを積んだ現代版911Rともいえるモデルが復活するというニュースが駆け巡りました。
911R。それは特別な911であり、同時に幻の911でもあります。果たして噂は本当なのでしょうか?そして、どのような仕様になるのでしょうか?期待と妄想を含め、現代に甦る(はず)の911Rを予想してみました。
ポルシェ 911Rとは?
911Rは、1967年春にデビューしたレースおよびラリー向けのスペシャルモデルです。総生産台数は22台。911Rは2シーター化され、2脚のバケットシートが装着されました。その結果、車重は800kgとなり、911Sより300kg近い軽量化を果たしました。
搭載される空冷水平対向6気筒 901/22型エンジンはカレラ6に相当するスペックを有しており、デュアルイグニッション化、高圧縮比(10.3:1)、バルブタイミング変更および径の拡大など、最高出力は210ps/8000回転を誇りました。
911Rは、当時開催されていたレースでの優勝や入賞を果たしたほか、1967年にイタリア・モンツァサーキットで連続走行15,000km、10,000マイル、20,000km、72時間、90時間の新記録を達成。20,000kmの平均速度は130マイル(約208km/h)という記録を打ち立てました。余談ですが、本来であれば906が出場する予定が急遽911Rとなり、この記録を樹立したといわれています。
ポルシェ911Rは日本にも正規輸入されていた?
実は、当時の正規輸入代理店だったミツワ自動車から911Rが販売されていたのはご存知でしょうか?いまも続く、カーグラフィックス誌の表3広告によると、911Rは1968年に上陸を果たしたようです。この正規輸入された1台の911Rを含め、かつて日本には数台の個体が生息していました。つい先日、日本にある1967年式ポルシェ907の売り情報がインターネットに公開されていました。果たして、いま何台の911Rが日本にあるのでしょうか…。
1968年当時の価格は、911Sが510万円、911Lが435万円、911Tが395万円(5速)/385万円(4速)、912が315万円、タルガを選ぶとプラス35万円、スポルトマチックを選ぶとプラス27万5000円でした。911Rは、それらをはるかに上回る価格だったことは容易に想像できます(余談ですが、1966年にミツワ自動車で販売されていた「カレラ6」は、1100万円でした)。
ちなみに、トヨタ2000GTが238万円。スカイライン2000GT(4ドア)が86万円という時代でした。現代でも新車の911はおいそれと買えるものではないことに変わりはありませんが、当時はいま以上に雲の上の存在だったのだと思われます。
ポルシェ911R、現代版911Rを(期待と妄想を含め)予想してみる
車名に「R」を冠する以上、ユーザーも相当にスパルタンなモデルを期待しているのではないでしょうか?しかし、現代の安全基準などを考慮すると、当時のRを忠実に再現するのは困難と思われます。そこで筆者の想像では、964RS(ベーシックモデル)あたりに準じたあたりの仕様になるのでは、という(期待を込めて)予想してみました。
・ベース車両:991 CarerraS
・トランスミッション:PDKor7MTの両方が選択可能?
・GT3のエンジンをさらにチューン
・2シーター化/フルバケットシート
・クラブスポーツパッケージ
・PCCBは標準装備
・エアバッグは標準装備
・パワステは標準装備
・エアコンレス(オプション設定あり)
・オーディオレス(オプション設定あり)
・限定600台という説が有力?
・価格:3,000万円くらい?
…等々。
さらに、
・専用エンジン
・専用エアロフォルム
・専用ボディカラー
・専用シートカラー
・専用バケットシート(専用表皮およびグレード名の刺繍あり)
・オールレザーインテリア
・専用インテリアパネル
・専用スカッフプレート
・専用ホイール(911 50アニバーサリー用と同じ?)
・専用軽量ガラス
・軽量カラークレスト(ステッカー?)
…等々。
現代に甦る(はず)の911Rは、ポルシェマニアの期待に応えてくれるのか?
最新のポルシェは最良のポルシェ。
現行モデルのGT3およびGT3RSでPDKを搭載したにも関わらず、あえて7速MTを選び、先祖返りをしてまで現代版911Rを復活させる…。これが現実になるとしたら、かなりマニアックなモデルといえそうです。しかし個人的には、7MTとPDKの両方が選べるのではないかと予想します(2013年に発売された"Porsche 911 50th Anniversary Edition"も、当初はPDKのみでしたが、後に7MTも選択可能となりました)。
復活するはずの911Rが、果たしてどのタイミングでGoサインが出たのか非常に気になります。もし、991が世に放たれた時点で計画されていたとしたら…?甦る911Rが、単なるノスタルジーで終わってしまうのか?それとも、先代モデル同様、名車として後世に語り継がれるモデルとなるのか?追加情報を待ちたいと思います。
そういえば、991ではGT2がまだ発表されていません。これまではフェーズ1(いわゆる前期モデル)で発売されていました。満を持して991フェーズ2で登場するのでしょうか?ポルシェは限定車やスペシャルモデルが多い分(いまに始まったことではありませんが)どのタイミングで手に入れるか、本当に迷うことになりそうです。いえ、一度でいいから、夜な夜な迷う側になってみたいものです…。
[ライター/江上透]