更新2023.01.28
1年半掛けて巡り逢えた愛車、2002年式ポルシェ911カレラ(996GT3仕様)
松村 透
憧れのクルマを手に入れよう、手に入れたい。
クルマ好きなら1度は思い悩んだ経験があるはずです。
しかし、憧れのクルマゆえに一筋縄ではいかないことも多々あります。
でも、諦めずにモチベーションを維持したからこそ、手に入れたときの喜びは何倍にもなるものです。
今回の若きオーナーさんも、諦めることなく、ついに憧れのクルマを手にした1人です。
── オーナー紹介&どんな仕事をされているのですか?
▲オーナーのがっしーさんと愛車である2002年式ポルシェ911カレラ(996GT3仕様)
仕事は国産車ディーラーの整備士です。
── 整備士になろうと思ったきっかけを聞かせてください
▲現役の整備士だけに、自動車用のテスターも常備
祖父も整備士で、私が幼少期の頃、家に遊びに行くとスターレット(KP61型)をいじっているのを眺めたり、ドライブに連れて行ってもらいったことを覚えています。自分でクルマを修理できるなんてすごいと思ったことがきっかけかもしれません。
自動車整備士(1級)に合格して、就職が決まり、祖父に報告しようと思った矢先に他界してしまったんです。小さい頃はミニカーを買ってもらったし、本当はもっとクルマの整備のこととか、話したかったです。
── それはお気の毒でしたね・・・。お父様もクルマ好きですか?
父はそれほどクルマ好きではないと思っていたのですが、あるとき、家のクルマをミニバンからセダンに乗り換えるタイミングで「アルファ ロメオがいい!」なんていい出して(笑)。そこから父ともクルマ談義をするようになりましたね。
結局、このときはアルファ ロメオ159を購入したのですが、現在はアバルト595コンペティツィオーネに乗り換えました。父はそれまでずっとAT車を乗り継いできましたが、50才を過ぎて初のMT車です。
── ポルシェが好きになったきっかけを聞かせてください
▲996にまつわるコレクション。麻宮先生の「彼女のカレラ」も愛読書のひとつ
「これがきっかけ」という決定的なできごとはないのですが、クルマ関連のゲームで遊ぶときはマツダ RX-7かポルシェを選ぶことが多かったですね。グランツーリスモは3でデビューしたのですが、当時はまだポルシェを選ぶことができなくて、代わりにRUFに乗っていました。
フェラーリやランボルギーニも好きですが、割とクラシック系のモデルに惹かれます。フェラーリだとF355まで。ランボルギーニだとディアブロくらいまでです。同世代のスーパーカー好きとは話が合いませんね(笑)。父がスーパーカー世代(現在57才)なので、その影響があるのかも・・・。
── 996に乗ったときのお父様の印象はいかがでしたか?
▲カーボンパネルが目を引く車内。キーホルダーに注目!入手困難なペピタ柄なのです
「意外と普通のクルマだな」っていってましたね(笑)。実際に運転してもらいましたが、左ハンドル+MT車に慣れてしまえば普通に乗れると感じたようです。
私が4年制の専門学校に進学したので「お前の学費がなかったらポルシェが買えたんだぞ」といわれたことがあり・・・。ディーラーの整備士として就職して、結婚もして、息子が手に入れたポルシェに乗ってもらうことで親孝行になったらいいなと思ったのも事実です。
── 現在の愛車を手に入れるきっかけ、996を選んだ理由は?
▲がっしーさんにとって原体験ともいえる996。幼少期に東京モーターショーで見たクルマが愛車となったのです!
996を選んだというと「安いから?」と聞かれることが多いのですが、996、なかでも前期モデルがめちゃくちゃ好きなんですね。
幼少期に、父に連れられて東京モーターショーや東京オートサロンに行ったんですが、幼稚園の頃がモーターショーデビューだったと記憶しています。そのとき、ポルシェブースで展示されていたのが996だったんですよね。
それに、996の頃はまだ空冷エンジンのようなバラバラした音がまだ残っている印象があって。ターボやGT3も気になりますが、まずはNAエンジンでMT車に乗ろうと思って探しはじめました。
▲購入時に装着されていたというゲンバラ製のアルミペダル
条件は正規輸入車のMT。GT3が好きなので、GT3ルックが理想形。こんな感じでしたね。しかし、なかなか条件に合う個体が見つからなかったんです。来る日も来る日もカーセンサーの新着情報をチェックして。そのうち、寝る前にも確認するのが日課になっていました。
妻からも「またポルシェ探してるの?」なんていわれましたね。
── ディーラーの整備士だと、勤務先のメーカーのクルマに乗る決まりがあったりしますよね?
そうなんです。以前はトヨタ 86に乗っていたんです。店長と面談する機会があり「86は好きだけど、他に乗りたいクルマがある」と伝えたんですね。そのときに話したのがRX-7(FD3S型)かポルシェ911(996型)でした。すると店長が「仕事のモチベーションがあがるなら他メーカーでもいいんじゃない?」といってくれまして。職場の人たちも「店長がokならいいんじゃない?」っていってくれたのが大きかったですね。
で・・・。RX-7(FD3S型)の相場を調べてみたところ、4型~6型、エンジンOH済み、乗り出し価格400万円だと内装がボロボロの個体でないと厳しいことが分かり・・・。それなりのコンディションを求めるとなると、600~700万円が相場だと知ったんですね。
▲本物のGT3用ウイングを装備していながら、あえて「GT3」のエンブレムを貼らないのががっしーさんの美学
それならばと、もうひとつの候補だった996を調べてみたところ・・・当時は200万円台から選べたんですよね。MT車ではなく、ティプトロニックもありかなと思っていた矢先、私と同世代で996型のGT3(後期モデル)に乗る友人のクルマを運転させてもらう機会があったんです。このときが人生初のポルシェでした。
これで完全に火がつきましたね。やっぱりMTの996にしようと決めたのは。そこからさらに1年くらい探しましたが、なかなか見つかりませんでした。ようやく見つけた個体もタイミングが合わず売れてしまい・・・。
その2日後の夜に、カーセンサーを見ていたら、あるショップさんで現在の愛車となるこの996が売りに出されているのを見つけたんです。白い996カレラ、前期モデル、MT、GT3ルックという理想形だったんです。このとき、すでに営業時間外だったので、翌日「明日見に行きたいので、他の人に売るのはちょっと待ってください」と連絡を入れました。
その熱意が通じたのか、社長さんもokしてくれて。実車を見て購入したいと思ったものの、予算オーバーでした。そこで「自分は整備士なので、できることは自分でやるから、少し安くなりませんか?」と交渉してみたところ、これもokが出て・・・。ようやく購入することができました。
── 奥さまの反応はいかがでしたか?
付き合いはじめの頃から「俺、クルマバカだから、クルマと私どっちが大事って聞かないでね」っていってあったので(笑)、それ以来、街中でポルシェを見掛けるたびに「ポルシェっていいなー」といい続けていました。
その甲斐(?)あって、このときも「86と月々の支払いが変わらないならいいんじゃない?」とokをもらいました。妻も別の趣味がありますし、クルマの趣味に対しても理解があるのは感謝ですね。妻も、通勤用にトヨタ ヴィッツ(MT車)を所有しているので、いつか996に乗れるようになれたらいいねということで、たまに練習で運転してもらいます。
── これまでの愛車遍歴を聞かせてください
▲20年以上前の個体でありながら、ヘッドライトに黄ばみはなく、とてもきれいな状態
ダイハツ ミラ アヴァンツァート、スバル レガシィ ブリッツェン(前期モデル)、トヨタ ヴィッツRS、トヨタ 86、トヨタ 86GRスポーツ、結婚したタイミングでトヨタ ヴィッツを増車、そしてこの996です。
── 手に入れて良かった点・苦労している点は?
●良かった点
仕事に対するモチベーションが上がったのと、いろいろ自信につながりましたね。
今回、ローンを組んで購入したわけですが、ポルシェを買うときも審査が通過できるくらい、社会的な信用が得られるようになったんだな・・・と実感しました。
あと、整備士って仕事量の割に給与が安いとか、仕事が辛いなどの理由で後輩が辞めていってしまうんですね。後輩たちに「先輩はポルシェ乗って仕事を頑張ってるな」と思ってもらえたらうれしいです。
●苦労している点
苦労ではないですが、実用性が高い分、気軽に乗れてしまうところでしょうか。金銭的な目処がついたら、足回りのリフレッシュをしてあげたいです。アーム類のブッシュがだいぶヘタってきているので、そのうち交換したいと思っています。
▲運転席はレカロ社製フルバケットシート(ASM別注品)を装着
── 整備士の立場で日本車のいいところ、ドイツ車のいいところを聞かせてください
▲トランクスペースには軍手や蒸留水、ベルト類、三角板など、いざというときのためのアイテムを常備
まず日本車ですが、トヨタ車なんかは特にそうですが、消耗品の交換が比較的簡単にできる設計になっていますよね。
一方で、ドイツ車、なかでも私のポルシェ(996型)を整備して思うのは、エンジンを降ろすのは楽な印象です。エンジンルームにある2つのコネクターを外し、吸気系のエアフロのコネクターを外すだけでいいので。
国産車だと多くのコネクターを外さないとエンジンが降ろせないので、ポルシェは重整備を行う前提で設計されているのかなと思いますね。
── 予算抜きで、欲しいクルマBEST3は何ですか?
順位付けは難しいのですが、もし叶うのなら
・マツダ RX-7 スピリットタイプR。最終モデルの限定車です
・ポルシェ911カレラRS(964RS)。色はルビーストーンレッド。麻宮先生のイメージが強くて。
・リビエラブルーの996GT3。これも彼女のカレラの影響ですね
── あなたにとって、愛車はどんな存在ですか?
さまざま場所や人ととめぐり合わせてくれる存在です。
クルマで行かなければ見られない風景ってありますし、クルマをとおしてでなければ出会えない人もいますから。
── 奥さまへの感謝のメッセージがあるんですよね
▲タイヤはミシュランのパイロットスポーツ5を装着
半ば諦めているところもあるとは思うんですけど・・・。なんだかんだ出かけるとき一緒に来てくれるし、本当に感謝しています。これからもいろいろなところへ996で一緒に行けたらいいなと思っています。これからもよろしくお願いします!あ、あと、ゆくゆくはガレージハウスも建てたいので、こちらもよろしくお願いします(笑)。
── 取材後記
努力のすえに見事、国家1級整備士資格に合格し、ディーラーの整備士として活躍するがっしーさん。ご自身でメンテナンスできるとはいえ、ポルシェ911を手に入れるのは一大決心だったと推察します。
さらに、がっしーさんは既婚者。奥さまの理解が得られなければ、(金銭的な問題をクリアしたとしても)所有することすらできませんから・・・。
がっしーさんのポルシェに対する情熱や、日々の頑張りをいちばん身近なところで見てきたからこそ、反対することができなかったのかもしれませんね。
末永くお幸せに!!
── オーナープロフィール
・お名前:がっしーさん
・ご年齢:20代
・ご職業:国産車ディーラーの整備士
・現在の愛車:2002年式ポルシェ911カレラ(996/GT3仕様)
[ライター・撮影/松村透]