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更新2024.12.30

プラレール号の記録簿 vol.7:空冷911でなきゃだめ?

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松村 透

筆者がはじめて911に触れたのは1992年のこと。964RSことカレラRSが限定販売され、日本でもポルシェ911によるワンメイクレース「カレラカップジャパン」がスタートした年です。


当時は高校生だったので運転免許を取得しておらず、極狭のリアシートに乗った状態での初体験となったわけですが・・・。それまでスポーツカーらしいクルマに乗せてもらった経験がなかったこともあり、なおさら強烈な原体験となったように思います。とはいえ、このときの体験がその後のカーライフまで決定づけられてしまうとは。そこからさらに911沼にハマり、ナローポルシェの世界に足を踏み入れるのだから、人生何が起こるか分かりません。


■「空冷911に乗ってみたい」という、漠然としたモヤモヤ



"濃いめ"な911に乗っていることもあり「空冷911が欲しいんですけど、どうしたらいいでしょうか?」といった相談を受けることがあります。"どうしたらいいでしょうか?"なんて人に相談するまでもなく、本人は買う気満々なわけですから、買えるなら買っちゃった方がいいに決まってます。基本的に背中を押します。ただでさえタマ数が減っているのに「これはと思う売りものがあれば即買い!」な臨戦態勢で日夜網を張っている人が大勢いるのですから、迷っているうちに他の人に"かっさらわれて"しまいます。



それなりに事情やあるのだろうと、さらに詳しく聞くと「買ったあと維持できるか(気持ち的にも、費用面でも)」が引っかかって二の足を踏んでいるというのです。要は「自分が乗れるかどうか見極められない。けれど空冷911に乗りたくてずっとモヤモヤしている」状態なわけです。


かつて、自分もそうでした。それだけに痛いほど気持ちは分かります。結論としてはこうです。ミもフタもありませんが「買ってみなきゃ分からん」のです。運もあるし、タイミングや縁もあります。そこでいっぽ踏み出せるか、二の足を踏み続けるか。これは空冷911に限らず、日々ありとあらゆる場面で起こりうることではあります。


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■996が現役の頃、300万円あればそこそこのナローが買えた



ここで閑話休題。


996にモデルチェンジしてから現在にいたるまで、993の中古車は「最後の空冷911」ということで高値安定です。特にMT車は人気があり、しかも当時からタマ数が少ないので、20数年間、売りものが出れば争奪戦の繰り返しです。しかし、現在のように「空冷モデル」というだけで一律にメチャ高なわけではありませんでした。程度や走行距離はさておき、400万円台で販売されていた993もありましたし、市場の人気がそのまま中古車の相場に反映されているような状況だったのです。



そういえば筆者も、10数年前に走行距離が800キロ台(!)という964ターボ3.6の実車を見たことがあります。新車以上の価格(2000万円)なので誰も買わなかったけど先日ようやく売れた、なんて話をセールス氏から聞きながら新車同然の964ターボ3.6を眺めていたことを覚えています。この個体はいま、どこにあるのでしょうか。まったくの行方知れずです。やっぱり海外かな・・・。



ナローポルシェに関していえば、20数年前であれば200万円そこそこで売られている個体も珍しくなかったのです。人気が高い911Sで350万円〜、カレラRS2.7で800万円〜といったところ。それからしばらくして、某ナローポルシェ専門店のところで売られていたカレラRS2.7が4000万円で売れて海外に流れたという話を耳にしましたが、「高すぎて日本じゃ誰も買わない」なんていわれたことも。


いまでは信じられないことですが、後々のメンテナンスのことはさておき「買うだけであれば」200〜300万円台でナローポルシェが手に入ったのです。筆者も当時手に入れた、1台目のナローポルシェである1973年ポルシェ911Sも、相場より少し高めではあったものの、無理をすれば20代でも買えた時代でした。



ただ、現実はそれほど甘くはなく、ホントに「買えた」だけで、維持するにはあまりにもハードルが高すぎました。後先考えずに買ってしまい、所有していることが辛くなってしまったのです。そしてほどなくして手放すことに。


実際に手に入れてはじめて気づいたことがあります。それは「好きや憧れだけでは維持できない」という、至極あたりまえの現実。手放した直後はホッとしたものですが、それもつかの間。「これでもう買えないのだろうか」と、その後10数年間、モヤモヤした状態が続く禁欲生活を送ることになるのです。



■そして現在。「とりあえず」のノリで空冷を買うなら認定中古車を買った方が幸せ?



空冷バブルなんていわれるようになってからほぼ10年、いまや「空冷911」というだけで1000万円以下の売りもの自体がレアな状況が続いています。


ただでさえ高額な中古車なのに、古いクルマゆえに納車前の整備費用や、予期せぬトラブルのことも意識しておかなくてはなりません。なにしろどれほど新しくても30年近くも前に生産されたクルマです。遅かれ早かれトラブルが起こるか、部品の交換(あるいはオーバーホール)する時期が来ると覚悟しておく必要があります。



「とりあえず空冷に乗ってみたい」といったノリで高額なローンを組み、本調子かどうかも分からない状態のまま乗りつづける・・・。で、あれば、同じ予算で認定中古車の水冷911を購入した方が幸せになれます。何しろ最新モデル(あるいは1世代前)ですから、1台で買い物からデート、旅行、ツーリングなど幅広く使えます。当然ながらエアコンもバッチリ効きます。さらには冬場には必須装備ともいえるシートヒーターも多くの個体に装備されています。


それに加えて認定中古車ならではの111項目にわたる点検、そして12ヶ月保証も付帯しています。すべてのケースではないにせよ、保証期間内の故障であれば無償で修理してくれるのです。保証が切れたあとは有償修理じゃないかと突っ込まれそうですが、ポルシェに限らずその条件はどの自動車メーカーでも同じ。この点が心配なら、いっそ清水ダイブして、長期ローンを組んででも新車を買った方が幸せになれます。


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■それでも空冷911に乗りたいとしたら?



認定中古車出身の水冷911に乗ってみて、もう少し刺激が欲しい、経済的にも余裕があるのなら・・・。思い切って空冷911にスイッチしてもいいかもしれません。ただ、実用性はガクンと下がります。もちろん、現在でも普段使いとして乗っているオーナーさんもいますし、不可能ではありませんが、現代の911(つまりは992型)よりはクルマに合わせざるを得ない場面が確実に増えます。


そこまでして空冷に乗りたいのか。周囲が空冷空冷と騒ぐから乗ってみたいだけなのか・・・。ノリと勢いで買うと「こんなはずじゃなかった」という自体になりかねないので注意が必要です。


事実、水冷911から逆スライドして930カレラを手に入れ、思ったより速くない(乗り方次第?)、操作が面倒など「こんなはずじゃなかった」と手放してしまう方もいます。そしてこういうのです。「みんなが空冷空冷っていうけど、自分には良さが分からなかった」と。実際に身銭を切り、自分で所有したからこそ導き出せた結論です。こればかりは好みの問題。仕方がないのです。



そのいっぽうで、ここで空冷沼にハマると、どんどん古いクルマへの興味や関心が高まっていきます。ここの時点で「自分にとっての理想的な空冷911」を見極めることを強くおすすめします。


ナローポルシェとよばれる最初期モデルから993まで。ノーマルのカレラか、ハードに仕上げられたRSか、はたまたターボか。無数にある組み合わせのなかで、「自分はどのモデルが好みであり、しっくりくるのか」を見決めることで理想的な落としどころが見えてきます。たいていの場合は直観的に、そして理屈抜きに「ビビビ」ときます。



筆者の場合、1台目のナローポルシェを手放したあとに知り合ったナナサンカレラこと、カレラRS2.7のオーナーさんと知り合ったことが転機となりました。ありがたいことにナナサンカレラを何度か運転する機会をいただき、軽さとパワーの絶妙なバランスに魅せられてしまったのです。運転していて「血が騒ぐ」という感覚を強烈に味わったモデルであり、何度運転してもその魅力が色褪せない・・・。自分の求めている911はこれだ!と確信。さすがにカレラRS2.7は現実的にではないにせよ、これに近い仕様の911を所有したい。このとき、1台目のナローポルシェを手放してから15年近く経っていましたが、ナローポルシェの魅力を再確認。プラレール号を手に入れる契機となったのです。



すべてのモデルを乗り比べることは難しいにせよ、気になる空冷911があればオーナーさんに事情を伝えてコンタクトを取り、助手席体験でもいいので見極めてみてください。頼み方次第ですが「どうぞ!」と協力してくれるオーナーさんが多いような気がします。なぜなら、各オーナーさんも似たような経験を経て現在にいたっているからです。


そして、そのうちこれだ!というモデルに出会えます。その1台がまったくの予想外、ダークホースである確率も高いです。そしていつしか、ナローポルシェの扉を開くことになるかもしれません。その先にはショートホイールベースのナローポルシェ、そして356の世界があなたを待っています。


[画像・Porsche/撮影&ライター・松村透(株式会社キズナノート)]

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