ライフスタイル
更新2018.01.31
ワンオーナー車のコンディションは、最初の嫁ぎ先で決まることを改めて知った日
松村 透
これまで、筆者がウィンドウフィルムやボディコーティング施工のアルバイトや取材した経験からしても、クルマの最初のオーナーは総じて大切に乗られている確率が高いように思えてなりません。そして「ワンオーナー車のコンディションは、最初の嫁ぎ先で決まることを改めて知る」できごとが年明け早々に起こったのです。
2018年の初仕事は、読者の方とお会いすることからスタート
去る1月4日のことでした。正月三が日が終わり、さすがにそろそろ仕事を始めないと…。その前に出世の神様と呼ばれる、埼玉県日高市にある「高麗神社」への初詣へ向かいました。ここは、昨年9月に天皇陛下と皇太子様も訪れた場所としても知られています。
三が日には駐車場に停めるだけで数時間を要するような人気スポット(パワースポットでもあるそうです)でしたが、4日ともなると少し落ち着いた様子。無事に初詣を済ませ、午後から仕事…と思っていたとき、筆者のスマートフォンに、CL編集長から連絡が入りました。
「29万円のロードスターの記事を書いた方に会ってみたいと仰る、Aさんという方から連絡がありました。可能であればお電話していただけますか?」
筆者はかつて、税込み29万円で1991年式ユーノスロードスターVスペシャルを手に入れ、3年ほど所有したのち、事情があって泣く泣く手放した経験があります。そのときのことを記事にまとめたものを読んでくださった方からのお電話だったようです。奇しくも、これが2018年の初仕事となりました。
https://www.gaisha-oh.com/soken/eunos-roadster-forever/
Aさんのご連絡先を伺い、さっそくお電話してみたところ…、お相手の方は、当時新車で購入したユーノスロードスターVスペシャルを現在もお持ちで(つまり「ワンオーナー車」です)、気になることがあるから、ぜひお話しを伺えませんか?とのことでした。これも何かのご縁だと思い、筆者も快諾。お会いする日時と場所を決めるべく、Aさんと10分ほどお話しをさせていただきました。よくよくお話しを伺うと、Aさんが筆者よりも人生の大先輩であることが分かったのです。ご年齢からしても、遠くまで出向いていただくのは申し訳なく思い、筆者がAさんのご自宅の近くまで伺うことで話しをまとめ、お会いする日時を決めました。
*個人の方が特定されないよう、ご本人のクルマの画像やご年齢など詳しい情報は伏せてあります
ワンオーナー車のユーノスロードスターVスペシャルはやはり美しかった!
そして待ち合わせ当日。取材を通じてさまざまな方にお会いする機会がある筆者ですが、この日ばかりは少し勝手が違います。どうお話しして良いのやら考えながら現地に向かいました。もちろん、読者の方とお会いするなんて初めての経験です。
そして、待ち合わせ場所に佇んでいたのは…。ネオグリーンのボディカラーに、グリーンの幌、当時純正オプションだったワイヤーホイールを履き、1.6Lエンジンを持つ、ユーノスロードスターVスペシャルでした。それはひと目で大切に乗られていることが分かるオーラを放っていたのです。「そんなの分かるわけないだろう」と突っ込まれそうですが、さまざまな取材を通じて「溺愛車」であることがひと目で分かるようになってきました。もちろんそれは、大金を払ってボディコーティングを施工すれば良いというものではありません。共通していえるのは「おいそれと触れない」雰囲気が漂っています。クルマのイベント会場に行けば、そんな雰囲気のクルマが何台もありますので、何となく分かるのではないかと思います。
さて…。ご挨拶もそこそこにAさんのご自宅へお招きくださるとのことで、後をついていくことに。ユーノスロードスターを追い掛けていて感じたのは、「こんなに小さいクルマだったかな?」ということ。それだけ現代のクルマにはボリュームがあるということなのでしょうか…。
ご自宅に到着するなり、人生の大先輩であるAさんは「ぜひ試乗してみてください」と仰います。下記記事にもありますが、筆者は試乗を勧められても、できる限りお断りするようにしています。万一のことがあったとき、オーナーさんに悲しい思いをさせてしまうからです。
https://www.gaisha-oh.com/soken/friends-car-drive/
今回もかなり躊躇しましたが、ここで試乗しないのはむしろ失礼ではないかと考え、ご近所を1周させてもらいました。30年近い年月が経過したクルマだけに、それなりに使用感はあります。しかし、走りはじめてすぐに、筆者がかつて手に入れた「税込み29万円ロードスター」とは根本的に何かが違う「1人のオーナーの下でていねいに扱われたクルマ」という印象を感じたような気がします。一言で表現するなら「ヤレが少ない」のです。
複数オーナーになると、それぞれの扱い方が変わってくる分、クルマにもストレスが蓄積されていくのかもしれません。それとも、新車で手に入れたファーストオーナーは大切に扱う傾向があるのでしょうか…。いずれにしても、大切に乗られた個体であることは、クルマ好きであれば多くの方が感じ取れるに違いないコンディションを保っていたことに感動すら覚えました。
ワンオーナー車のコンディションは、最初の嫁ぎ先で決まることを改めて知った日
今回、「以前、同じユーノスロードスターVスペシャルに乗っていたということで、気になるところがあったら教えてください」ということでAさんにお会いしました。しかし、お世辞抜きで、筆者が手に入れた「税込み29万円ロードスター」よりも格段にコンディションが良いことは明白です。
Aさんの溺愛車に感じた「1人のオーナーの下でていねいに扱われたクルマ」という率直な印象をお伝えすると「半年に1度のメンテナンスを含め、ずっとディーラーで面倒を診てもらっています」とのことで、非常に合点がいきました。
偶然発見した駐車場のコンクリートに落ちていたオイル漏れの跡、そしてAさんがお悩みだという幌の補修についてはメーカーのレストアの受付が開始されていることも伝え、現在装着されているボディと同系色のグリーン(1.8Lモデルや一部の限定車にはそれ以外の色も採用されました)をお探しとのことで、国内で販売されていると思われるショップの情報もお伝えしました。特に、幌に関しては本当にお困りのようだったので、少しでもこの出会いが意義あるものになればと思い、筆者が知りうる限りの情報を集めたつもりです。
筆者の「税込み29万円ロードスター」は2オーナー車でした(筆者で3オーナー目)。予算の関係と自分なりに手を加えてみたかったという希望もあり、極上車ははじめから考えていなかったため、自分の納得できるコンディションにもっていくだけで数年は掛かったように思います。しかし、新車時からこつこつと、1人のオーナーが時間と手間とそれ相応の費用を投じて「ワンオーナー車」としてのコンディションが磨かれていくのだということを改めて実感したのです。
ワンオーナー車のコンディションは、最初の嫁ぎ先で決まる。現在の愛車が一生モノである場合は例外としても、もしいつか乗り替えることを想定しているのなら、次のオーナー(セカンドオーナー以降)のことも視野に入れてコンディションを維持してみるということを実践してみてもいいかもしれません。
ちなみに、Aさんとはこの日が初対面でしたが、いちクルマ好き同士としてだけではなく、ご自宅で自慢のオーディオを試聴させていただきました。久しぶりにレコードの心地良い音を聴きながら、楽しいひとときを過ごすことができました。「税込み29万円ロードスター」を、それなりのコンディションに仕上げていくために苦労もしましたが、その体験談が他の方のお役に立てるのであれば…。高い授業料を払った甲斐があったかもしれません。
[ライター・撮影/江上透]