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ドイツ現地レポ

更新2020.03.29

蔵書数は約4500冊。ドイツでは身近な「移動図書館」の実情をベルリンからレポート!

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守屋 健

みなさんは移動図書館を利用したことはありますか?

移動図書館とは、改造したバス、トラック、バンなどに本を搭載して、図書館の利用が難しいエリアに出張し、閲覧や貸し出しを行う「はたらくクルマ」の一種です。広義ではクルマに限らず、かつて瀬戸内海でも活躍し、現在でもスウェーデンなどで稼働を続ける「図書館船」、沖縄などの飛行機を活用した「空飛ぶ図書館」、スイスなどで重要な役割を果たした「鉄道図書館」、果てはケニアの「ラクダ図書館」まで、様々な形態で人々に図書館サービスを提供しています。

移動図書館は、現在のドイツで「重要なインフラのひとつ」とされ、進行形で整備の充実がはかられています。今回は、ドイツの首都ベルリンの移動図書館事情について詳しくレポートします。

平日は毎日運行



蔵書数は約4500冊。ドイツでは身近な「移動図書館」の実情をベルリンからレポート!
移動図書館はドイツ語でFahrbibliothek(ファービブリオテーク)といいます。もっと単純にBücherbus(ビューヒャーブス)、「本のバス」と呼ばれることもありますね。

移動図書館の歴史は古く、その起源は19世紀中頃と言われていますが、はっきりとはしていません。ドイツにおいては1929年にドレスデンで始まったとされており、1960年代半ばには最盛期を迎えました。1990年代以降は数を減少しつつあるも、依然として重要なインフラのひとつとの認識は変わらず、古くなった車両の刷新などが積極的に行われています

ドイツの首都ベルリンは12の区に分けられ、それぞれにStadtbibliothek(シュタットビブリオテーク)、つまり区立図書館が存在します。そして、約半数にあたる5つの区が、それぞれ独自の移動図書館を所有・運用しています。例えばシュテークリッツ・ツェーレンドルフ区の場合、2台の移動図書館を保有し、28箇所の停留所で常時借りられるように整備しています。

常時、と書いたのには理由があります。日本に存在する移動図書館は、月2回の運行だったり、週に1回の運行だったりと、稼働時間に開きがあることも珍しくはありません。ところがベルリンの移動図書館の場合は、どのバスも月曜日から金曜日まで、平日朝9時から夜19時までの間「街のどこか」で必ず稼働しています。この活動頻度の高さも、ベルリンの移動図書館の特徴と言えるでしょう。

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50万ユーロかけて新型車両を導入



蔵書数は約4500冊。ドイツでは身近な「移動図書館」の実情をベルリンからレポート!

ベルリンの移動図書館は、全長12メートルにもおよぶ大型のバス車両を改造したものが多く使用されています。一度に運べる蔵書数は約4500冊。それ以外にも、音楽CDやDVDなどの映像メディア、そして子ども向け・大人向けの雑誌などを搭載して、それぞれの停留所に1時間から3時間留まるのが通常の運行スケジュールです。

老朽化した移動図書館の刷新も、積極的に進められています。ベルリンでは2017年以降、3台ものバスが新型車両に置き換わりました。最も新しい移動図書館は、ベルリンの南側、テンペルホーフ・シェーネベルク区に導入された個体で、2019年春から運用が開始されています。以前同区で運行されていた移動図書館は27年間の長きにわたって使用され、走行距離は13万3千キロメートルを超えていました。スペアパーツの調達が難しくなり、かつ排気ガス規制にも対応できなくなってきていたので、早急の対応が求められていたのです。

蔵書数は約4500冊。ドイツでは身近な「移動図書館」の実情をベルリンからレポート!

新しいバスの心臓部は、290馬力を発生するディーゼル。今後さらに厳しくなる規制にも対応できるよう、現時点で最もクリーンなディーゼルエンジンを搭載しています。車内の設備の充実度は非常に高く、音楽や映像の各種メディアプレーヤー、ラジオ、家族向けのゲームなども搭載。冷暖房が完備され、トイレも設置されています。また、車椅子の方が利用できるよう出入り口にはリフトも備わっていて、バリアフリー化が実現されています。

室内には大きな天窓(サンルーフ)があるためとても開放感があり、明るく快適です。車体はもちろんカスタムメイドで、製作費用はなんと約50万ユーロ(約6000万円!)にものぼります。ベルリンは決して経済的に豊かな街ではありませんが、教育にはお金を惜しまないという姿勢がよくあらわれていると感じました。

移動図書館の存在意義は今でも廃れず



蔵書数は約4500冊。ドイツでは身近な「移動図書館」の実情をベルリンからレポート!

そう、ベルリンの子どもたちは移動図書館が大好きなのです。2018年はテンペルホーフ・シェーネベルク区だけでも45万人が移動図書館を利用し、150万もの蔵書やメディアが貸し出しされました。筆者の自宅の近所にも移動図書館の停留所があり、こうしたサービスが非常に身近にあるのを実感します。

日本では、財政上の理由で移動図書館が廃止になったり、ディーゼル規制に対応できないまま廃車になるケースが多く見られます。廃車になった移動図書館を発展途上国に譲渡する動きもありますが、ベルリンを見ていると、まだまだ国内の移動図書館を減らしていくには早すぎるのではないか…と感じるのも事実です。

2020年3月末現在、新型コロナウィルスの影響で閉鎖されている、ベルリンの移動図書館。ベルリン市民は早く再開されることを待ち望んでいます。そして、親子揃って気軽に楽しめる移動図書館が、これからもドイツ、日本、世界で長く存続していけるよう願わずには入られません。

[ライター/守屋健]

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