
ドイツニュース
更新2020.02.16
時間ではなく○○!ドイツ・ベルリン発のカーシェア「Miles」の画期的な料金体系とは?
守屋 健
また、そうした環境負荷への対策として、ダイムラーやBMWがリードするカーシェアリング業界も変化を求められています。「結局カーシェアリングは、あとあとクルマを買ってもらうためのプロモーションに過ぎないのでは?」という批判的な声も上がる中、ベルリンから全く新しいスタートアップが登場しました。
その名も「Miles(マイルス)」。まだサービス開始から日が浅いにも関わらず、多くの人々に支持されるサービスに急成長しました。従来のカーシェアリングと比較してどんな点が画期的だったのでしょうか?今回じっくりレポートしていきたいと思います。
渋滞時でも気兼ねなく使えるカーシェア

Milesは、ベルリンを本拠地とする新興企業です。スタートしたのは2017年。最初はわずかな台数のみでサービスを開始し、2020年現在では全体で1,500台を保有するまで成長しました。ベルリン以外では、ハンブルク、ケルン、ミュンヘン、デュッセルドルフ、ジルト島(ドイツ最北のリゾート地)などでもサービスを展開。とはいえ、まだ他の都市では貸し出し車種や台数が充実していなかったり、ジルト島ではリゾートシーズン限定サービスだったりと、まだまだ「成長過程にあるサービス」という印象は拭えません。
しかしMilesは現状、ほぼ最後発のカーシェアリングサービス。他社のサービスを研究し尽くし、対抗して打ち出した最大のアピールポイントは「借りた時間ではなく、走行距離に応じてお金を払う」という点です!
この料金体系は非常に画期的でした。なぜなら、今までのカーシェアリングは借りた時間ベースで料金が計算されていたため、朝のラッシュ時など、混雑している時間帯に利用するユーザーはほとんどいなかったのです。クルマが渋滞して動かないにも関わらず、料金だけが増していく従来のサービスに対し、不満を持っている人は少なくありませんでした。
Milesはこの点に注目。「走行距離に応じた料金体系」を設定することで、渋滞時でも単に移動した距離に対してだけお金を払えばいい、というシンプルなシステムを構築しました。その結果、朝のラッシュ時でも気兼ねなくサービスを使えるようになったのです。実際、ベルリンにおける朝の通勤時間帯での「Miles率」は相当に高く、逆に他社のカーシェアリングサービスはかなりシェアを減らしているように感じます。
公式ウェブサイトにも明記している通り、Milesは「都市部のクルマの数を減らすこと」を真剣に考え、実行しています。「従来の時間ベースのカーシェアリングでは、結局自家用車の代わりにはならない」というユーザーの声に、真摯に耳を傾けた上で実現できたサービスといえるでしょう。
初心者でも利用可能!

Mikesが画期的な面は、まだまだあります。それは「免許を取ったばかりの人でも運転できる」という点です!
従来のカーシェアリングのサービスでは、免許を取ったばかりの人は一年間は運転できない、というのが一般的でした。ところがMilesは、追加料金を払ってもらうことで、初心者でも運転できようにしたのです。その追加料金も、月額わずか9ユーロ(約1,070円)と非常に良心的。
この「初心者でもサービスを利用できる」という特徴も、Milesの「クルマをもっと減らしたい」という信念に基づいています。運転の練習用に小型の中古車を買う、というのはドイツでも一般的な考え方なのですが、Milesはそこにも割って入ろうとしているのです。「初心者でもMilesを使えます!わざわざ中古車を買う必要はありません!」というメッセージは、運転を始めたばかりの人にとって、非常に頼もしく感じられることでしょう。
「クルマをもっと減らしたい」という信念

Milesは、他のカーシェアリングとは異なり、使用している自動車のメーカーも様々という点も特徴のひとつです。フォルクスワーゲン・ポロ、アウディ・A1、フィアット・500、フォルクスワーゲン・ゴルフバリアント…こうしたクルマの基本料金は1kmあたり0.89ユーロ(約106円)で、6時間パックや24時間パックなどの料金プラン設定もあります。走行距離に応じて、もっとも安くなるプランが自動的に計算されるため、ユーザーは「ただ乗って、降りるだけ」でクレジットカードに請求がくるしくみです。
ガソリンスタンドでは無料で給油できますし、料金内にはもちろん保険料も含まれているので安心して利用できます。また、トランスポーターと呼ばれるバンタイプ(フォルクスワーゲン・T6など)の貸し出しも行っていて、こちらは1kmあたり1.19ユーロ(約142円)という価格設定となっています。
Milesは現在、ドイツ在住の人しか利用できないサービスですが、この「走行距離ベースのカーシェアリングサービス」がいずれ大きな波となっていくのは間違いないでしょう。日本においても、渋滞の緩和や環境負荷軽減のために、Milesの提供するサービスが参考になる点は多いのではないでしょうか。「クルマをもっと減らしたい」という信念を掲げてスタートしたMiles、今後どのような成長を遂げていくか、筆者も注意深く見守っていきたいと思います。
[ライター・画像/守屋健]