
カーゼニ
更新2016.11.28
MGミジェットに完敗を喫したNAロードスターは「ホトトギス作戦」に変更する

伊達軍曹
英国のMGミジェットに完敗を喫し、意気消沈していたからである。
「MG相手でもシブさで勝てる!」と思ったが……
小生がNA8Cロードスターを通じて行おうと考えていたのは「打倒英国旧車」だった。
NAロードスターという、英国旧車へのリスペクトをベースに生まれたジャパンオリジナルな名車を、MGミジェットやらMGBやらカニ目以上にシブい存在へと仕立て上げる。その際に英国旧車を表面的に猿マネしてもイタいだけであり、またジャンルを問わず、単なる模倣では本家を超えることは絶対に不可能。それゆえなんらかのジャパンオリジナルなセンスでもって微妙かつ絶妙なカスタマイズを施し、それにより、敬意を払いつつ本家を超えようと思ったのだ。

だが試みは失敗に終わった。
その時点での我が愛機は、「ボディやら内装やらをとりあえずツヤツヤにし、そして必要なメンテナンスを行う。さらに個人的にはイマイチな造形だと考えたNA8C純正ホイールをNA6の純正ホイールに交換。また色味的にとっちらかっていた内装の細かな部分を黒系パーツにリプレイスすることで、内装のカラーリングに統一感を与える」という小変更にとどまっていた。が、その小変更はそれなりに効果的であると思ったし、「よし、これで今後は英国のMGあたりと伍して闘えるぞ!」と確信したものだ。
ミジェットとの埋めがたい格差に意気消沈
しかし、別件の取材で5月上旬に久々に間近で見た英国MGミジェットMk.IIIは、小生のそんな淡い期待を完全に打ち砕いた。まったくもって歯が立たないのである。なんというか、「デザインセンス」のようなものの次元が異なるのだ。
MGミジェットMk.IIIのこの外観(↓)に対し、

NA8Cロードスターのこの外観(↓)は、

まぁ個人的判断で負けてはいるが、完敗ということもないと思う。場合によっちゃ勝機もあるというか。しかし大問題と思ったのが「内装」であった。
MGミジェットのこの内装(↓)を見てから、

NA8Cのこの内装(↓)を見たわたくしは、

「絶望」という日本語の意味を正しく知った。これはもう勝負にならない。あちらがロンドンの外れにある築100年の邸宅だとしたら、こちらは昭和末期か平成初期のダイエーである。そもそもの造形骨格とすべての調度品のセンスが次元からして異なるため、「細かなパーツを変更してウンヌン」でどうにかなる話ではないのだ。
このミッドウェー海戦にも匹敵するほどの完敗で意気消沈した小生は、「夏で暑いから」という理由もあるにはあったが、それ以上に精神的なダメージがひどく、次第にNA8Cのボディカバーを開けなくなった。そして前述のとおり個人ブログの更新も停止した。冷温停止というより、ほとんど廃炉状態だ。
だが今後は「ホトトギス作戦」で捲土重来を図る!
しかし今、わたくしのNA8Cへの愛と打倒英国旧車熱はまたムクムクと大復活を遂げている。なぜならば、もう1台の自家用車であったカングーを売却したことで必然的に日頃からNAロードスターと触れ合うことになったということに加え、それ以上に「自分の誤ち」に気づいたからである。
わたしは間違っていた。本来であれば、別件取材でMGミジェットMk.IIIと対面し、そして圧倒的デザインセンスの差を見せつけられたとしても、意気消沈する必要などなかったのだ。なぜならば、わたしは「英国旧車の猿マネ」ではなく「なんらかのオリジナル」を目指していたはずなのだから。
「……なるほど、たしかにそちら様は素晴らしい造形センスでありますな。いや感服いたしました。しかし、だからこそ手前といたしましてはそちら様とはまったく別の方向性で努力を続ける所存です。時間はかかると思いますが、後日また挑戦させていただきます。それでは失敬」
そのように、堂々と敗退するべきだったのだ。
しかし実際は卑屈な敗走を重ねたわたくしは、結局のところ、心のどこかで「英国旧車の猿マネ」をしようと考えていたのかもしれない。だからこそ、「このシブさはちょっとマネできねえ……」と思い知ったとき、思わず意気消沈してしまったのだ。
わたしは自らの誤ちを認め、今度こそ絶対に猿マネではない何かを、我が98年式NA8Cロードスターにおいて達成していく所存だ。そしてそのために取ろうとしている具体的な手法が、名付けて「ホトトギス作戦」である。
鳴かぬなら 鳴くまで待とう ロードスター
典型的な英国旧車を規範とした場合のシブさでは太刀打ちできないNAロードスターだが、NAにはNA固有の美しさというかシブさがあるはず。しかし今はまだ初號機の登場から約27年という、新しくもなく(旧車としては)古くもない中途半端な年式であるため、どうしても「昭和末期か平成初期のダイエー」のようにも見えてしまう。だが今後年月が経過すればするほど、まるで昭和初期のレトロなジャパニーズ・ビルディングのようなシブさが勝手に湧き上がってくるはず……なのだ。
要するに「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」である。

その際にオーナーたるわたくしがやるべきことといえば、ただひたすら「その時を待つ」だけ。無論、ただ座して待つだけでは我がNAが朽ちてしまうので、正確には「必要なメンテナンスを適宜行いながら、良質なノーマル状態を維持しつつ待つ」ということだ。今でもまあまあ鳴いている我が98年式NAロードスターが、完全なる美声で鳴くのがいつになるのかは正直わからない。しかし「その時」は近い将来必ずやってくるはずだ。
中途半端に新しいクルマの場合、一般的には年を追うごとその魅力とシブさが減じていく。しかしNAに限らずこういった年代のクルマは、そのコンディションを正しく整えてさえいれば、あとは「時間効果」により勝手に、三段逆スライド方式でその魅力が逆に増していくのである。
やや消極的かもしれないが、これこそが、多少のメンテ代以外は大してゼニのかからぬステキな手法ではないかと思っている。皆さまにおかれてはどうだろうか?
[ライター/伊達軍曹]