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ドイツ現地レポ

更新2022.07.28

販売好調のメルセデス・ベンツA/Bクラスが廃止に!?その理由とドイツ本国の反応は?

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守屋 健

2035年以降、EUではEV以外の乗用車は販売できなくなるかもしれない……。EU内で具体的な話し合いが進む中、こうした事態をもっとも深刻に受け止めているのは、自動車メーカーたちかもしれません。今のディーゼル・ガソリンエンジン車中心のラインナップをEVにうまくシフトできなければ、会社の存続すら危うい状況にあるからです。



そんな中、先手を打ったのはメルセデス・ベンツです。6月末にドイツメディアの「ハンデルスブラット」が報じたのは、「メルセデス・ベンツがAクラス・Bクラスを廃止する」というニュースでした。メルセデス・ベンツの意図は? それが報道されたのち、中古車価格の変動はあったのか? そのあたりをレポートしたいと思います。


■Aクラスの販売台数はVW・ゴルフすら上回っていたのになぜ?



「ハンデルスブラット」によると、2025年にはAクラスの組み立てラインを廃止、Bクラスも段階的に廃止されるということです。


廃止の理由は、販売不振によるものではありません。販売実績だけを見ると、Aクラスは非常に優秀な成績を残しています。


Aクラスは2021年のメルセデスの全販売台数の約17%を占めていて、世界中で約32万3千台を販売しました。これは驚異的な数字です。なぜならライバルの1台、フォルクスワーゲン・ゴルフの同じ年の販売台数は、約26万台8千台にとどまっているからです。


メルセデスはそれでも、ラインナップを縮小し、より収益性が高いCクラスよりも上のクラスとEVに注力することに決めたようです。AクラスとBクラスの収益率は、Cクラス以上のそれよりも劣っているため、採算が取れなくなる前に切り捨てる、という判断をしたのでしょう。


とはいえ、メルセデスが小型車の販売をあきらめる、ということにはならない見込みです。現在メルセデスの「コンパクト」というと、細かく見れば7つのシリーズが存在していますが(Aクラス、Bクラス、Aクラスセダン、CLA、CLAシューティングブレーク、GLA、GLB)、これを4つまで削減。さらにすべてEV化され、ネーミング自体も刷新される予定です。


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■Aクラスは若者世代、Bクラスはお年寄り世代から支持されていた



こうした発表は、ドイツに衝撃を与え、各メディアはこのニュースを一斉に報じました。


Aクラスの現行モデルは「若者が頑張ればなんとか買える、フォルクスワーゲン・ゴルフ以外のクールな選択肢」として、Bクラスの現行モデルは「シートの高さが高くて乗降性が良く、安全性も高い年金生活者に最適なモデル」として、それぞれ若い世代とお年寄りに絶大な支持を得ていたからです。


このニュースが駆け巡った直後、AクラスとBクラスの中古車価格はすぐに跳ね上がりました。しかし、それは一時的なもので、一か月もしないうちに以前の水準に戻っています。「まだあと数年は新車で買うチャンスがある」という理由で市場が落ち着いた、という見方もありますが、メルセデスに関して言えば、別の理由も考えられそうです。


■生産終了後も安心して乗れるのなら、焦る必要はない?



Aクラス・Bクラスの中古車価格がすぐに落ち着きを取り戻した理由は「現在のメルセデスのサービスプログラムが非常に手厚いから」というのが大きい、とドイツの自動車誌「アオトビルト」は分析しています。


生産終了後も、サービス・メンテナンス・検査は、メルセデス・パートナーと呼ばれるすべての拠点で受けられますし、保証についても継続されます。また、原則としてメルセデスのすべてのクルマは、生産終了後15年間はスペアパーツの供給が保証されています。


多くの場合、オリジナルパーツ以外でも、同等の品質のサードパーティ製パーツが手に入ります。メルセデスは最近3Dプリンターも導入して、設計図からミラーベースやエンブレムの取り付け部といったごく小さなパーツの再生産にも応じているようです。


結局、「今焦って買わなくても大丈夫」と多くの「Aクラス・Bクラス予備軍」が気付いたから、というのが中古車価格落ち着きの理由のようです。


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■ドイツの各メーカーの動向も気になるところ



メルセデス・ベンツはEVのプラットフォームをモジュラー化して、それによってコンパクトなモデルからSクラスといった大型モデルまでをカバーする計画を進めています。コンパクトなモデルがどのように再編されるのか、興味が尽きないところですね。


個人的にはAクラスに対しとても好意的な印象をもっていたので、真っ先にラインナップから外されるのは悲しいかぎりですが、あと数年は新車で購入できますし、中古車の数も非常に豊富ですので、マイカーとして乗るチャンスはまだ残されています。


メルセデス・ベンツは大きな舵取りをしましたが、ドイツの他のメーカーも、同様の思い切ったラインナップ再編を強いられることはほぼ確実といえるでしょう。ドイツの自動車メーカーの動向から、今後もしばらく目が離せない状況が続きそうです。


[ライター・守屋健]

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