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ドイツ現地レポ

更新2021.09.30

ポルシェよりも自転車?現代のドイツの婚活市場におけるクルマの存在価値とは

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守屋 健

新型コロナのパンデミックで「現代人の孤独」が浮き彫りとなる中、以前とは異なるかたちで注目を集める「婚活」。


ドイツでは、日本のように「女性の若さに価値がある」とは考えられていません。そのため、いわゆる「パパ活」はほとんど存在せず、むしろ中年・壮年になって積極的にパートナー探しをするのは当たり前のことと考えられています。


 



日本においては「婚活ツールとしてのクルマの役割」というのは現在も一定の認知がされていて、乱暴に言い切ってしまえば「都市においても地方においても、クルマを持っているに越したことはない。高級車であればなおよし」という、一種のステータスシンボル的な扱いをされていることが多いですが、自動車大国のドイツでも同様なのでしょうか。


この度ドイツの婚活においてクルマの存在がどれだけ重要かを調べたところ、日本とは異なる価値観が浮かび上がってきました。今回のドイツ現地レポは、ドイツにおける婚活事情でのクルマの重要度と、なぜ日本とはこれほど異なるのか、ということを解き明かしていきます。


■ドイツにおいて、どんなクルマに乗っているかはまったく重視されないという事実



クルマ好きとしては、婚活におけるクルマの重要度というのはどうしても気になるところ。高級車はステータスシンボルとして受けがいいのか?女性から受けのいいクルマはあるのか、逆に受けの悪いクルマはあるのか?デートツールとして考えたとき、どんな役割や重要度があるのか?日本ではよくこうした話題が議論されていますが、さてドイツではどう考えられているのでしょうか。


結論から言いましょう。現代のドイツにおいて、パートナー探しをしている人がどんなクルマに乗っているかは、まったく重要ではありません。


ドイツのインターネット上では、婚活におけるクルマについて様々な議論がなされていますが、ある一定の傾向を見て取ることができます。


例えばある男性が「今度一緒にクルマで出かけることになった。自分はフォード・フィエスタに乗っているが、やはりBMWやアウディ、メルセデス・ベンツを買っていったほうが、彼女に気に入られるだろうか?」と質問しました。


それに対する回答は非常に辛辣です。


「高いクルマに乗っていれば女性受けがいい、という考え方は非常に古臭い上に、あなたの女性に対する蔑視が含まれている」「あなたのことを本当に思っている女性なら、あなたがどんなクルマに乗っていようが関係ない。クルマは単にクルマで、それ以上でもそれ以下でもない」「試しにBMWをリースで借りて乗っていけばいい。それで彼女が君のことを気に入ったら、君は彼女とパートナーになるべきではない。彼女は君のことを愛しておらず、君の持っているお金を愛している」など、クルマよりもお互いの人間性が重要だ、という内容が数多く寄せられました。


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■「Cクラスとフィエスタ、なにか大きな差はあるかい?」



別の質問を見てみましょう。ある男性が「私はアルコールも飲まないし、喫煙もしない。倹約家であり、古いオペルに乗っているが、将来家を買うために多くの貯金をしている。しかし、今はパートナーがいない。貯金を使ってメルセデス・ベンツ・Cクラスを買えば、周囲にアピールができて、よいパートナーが早く見つかるだろうか? 近年お金がまったくない結婚を望まないのは男女どちらも同じで、自分は古いオペルに乗っているせいで周囲にお金がないと思われているのでは?」と投げかけました。


すると、その質問には


「私はパートナーのクルマを気にしません。クルマ・家具・身に着けている時計というのは二次的なもので、私は見た目・性格・職業を気にします。メルセデス・ベンツに限らず、ある特定のクルマを買えばうまくいくと思っているのであれば、あなたはなんらかの問題(性格か、コミュニケーション能力かわかりませんが)をクルマで隠そうとしています。本当に自分に自信があれば、メルセデスで隠す必要はありません。悪い贈り物は素敵な包装紙で良くなることはなく、本当に素晴らしい贈り物は包装を必要としません!」


「周囲に対する見栄えを気にするのであれば、Cクラスでは物足りない。フェラーリ、ロールス・ロイス、ブガッティ……ただしこの考えに囚われると、君の貯蓄がどんなにあっても足りない。人間はもっともっと、と考える生き物だから」


「美しいクルマには女性をはっとさせる力がありますが、それを使って賢明な関係が結べるとは思えません。それでも美しいクルマが必要というのであれば、買う必要はありません。リースがあります」


「君が買おうとしているメルセデス・ベンツ・Cクラスは普通のクルマだ。フォード・フィエスタとなにか大きな差があるかい?」


・・・などの厳しい回答が寄せられました。


この回答例から見ても、ドイツでは「パートナー探しの際、クルマは問題ではない」という考え方が浸透しているといえるでしょう。


■ドイツの女子大生曰く「ポルシェよりも自転車に乗ってほしい」



閑話休題。ベルリン生まれベルリン育ち、現在大学に通っている女性にショートインタビューをしてみました。


パートナー探しの際に相手がどんなクルマに乗っているかを気にしますか、との質問には「まったく気にしないです」との返答。というより、質問そのものに対して「そもそも、そんなことを考えたことがない」という雰囲気でした。彼女曰く「みんなで遊びに出かけるにしてもカーシェアで十分ですし、クルマを持つ必要ってあるのでしょうか」。


特にベルリンのような都市部であれば、あまり必然性はありませんよね。


次に、自分がパートナーになりたいと思いを寄せる相手がポルシェやBMWなどの高級車に乗っていたら、どんな風に思いますか、と質問したところ「むしろ嫌です!」との強い拒否反応。


「そんなところにお金を使わないで!と思うし、クルマではなくて自転車に乗ってほしいです」と彼女は続けました。


そう、ベルリンに限らず、ドイツ全土で今もっとも重要な課題と捉えられているのが「気候変動対策」。


クルマの利用そのものをできるだけ減らそうという考えは、日常生活に広く浸透しています。毎週末クルマでせっせと出かけるようなクルマ好きの肩身は、日に日に狭くなっているといわざるを得ません。


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■日本とは異なる、ドイツの結婚観とは?



ドイツでは婚活において、なぜここまでクルマが重要視されないのでしょうか。その答えはドイツと日本における結婚観の違いの中にあります。


ドイツでは男性も女性も関係なく、それぞれ自活できるような職業に就く、という考えが一般的です。日本ではまだまだ「男性が一家の大黒柱」「一家を養う・養われる」という感覚が根強いと考えられますが、ドイツでは結婚後も夫婦別財布というのは珍しくありません。


ドイツでは結婚後も「自分の資産は自分のもの」「自分のお金は自分で稼ぐ」という感覚が日本よりも強いので、相手の年収はそれほど重視されません。それよりも大事なのは「一緒にいるときの居心地のよさ」で、結婚生活も恋愛の延長、気持ちがなくなったら離婚、という考え方が一般的です(ちなみにドイツの平均結婚継続年数は約15年と、日本と比べるとかなり短め)。


つまり、年収を誇示するステータスシンボルとしてのクルマは、ドイツの「男女それぞれ自活」を目指す結婚観においては、まったく機能しません。「いいクルマに乗っていれば女性に受ける」という考え方はすでに過去のものとなり、気候変動が重要な問題となる中「なぜ今、わざわざクルマを所有しているのか」が問われる時代へと変化してきているのです。


[ライター/守屋健]

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