ライフスタイル
更新2021.02.20
愛車の生い立ちをたどってみよう!エリーゼ乗りがロータス出所証明書を入手してみた!
細谷明日葉
ダイレクトなハンドリングに、軽量さゆえのヒラヒラ感。
なによりキュートなお顔立ちに魅了され、喉から手がでるほどの思いで欲しくて欲しくてたまらず購入したのは約10年前のこと。
その愛情はいまだ色あせず、日々の用事からたまのスポーツ走行まで“fun to drive”を感じながら苦楽をともにしています。
そんなエリーゼライフのさなか…。
昨年(2020年)9月、ロータス日本正規代理店から、『Certificate of Provenance(出所証明書)の受付を開始する』とのアナウンスがあったのです!
■ロータスの出所証明書とは…?
『Certificate of Provenance(出所証明書)』
これはロータスカーズ(英)が、ロータスオーナーに向けて、愛車の製造記録を記念品として提供するという趣向のサービス。
簡単に言うと、愛車の出生記録のようなものです。
生産および出荷当時、どのようなオプションだったのか、カラーは何色か、エンジンの形式は…etcはもちろんのこと、愛車の真の“誕生日”や姉妹の存在まで知ることができちゃう、愛好家にはたまらないプレミアムな逸品!
しかも化粧箱に入れられて、出所証明書オリジナルグッズまでついてくる!!
マニアにとっては実に垂涎モノなアイテムです。
入手方法はとっても簡単!
現在、日本におけるロータスカーズの正規代理店は、LCI株式会社が担っています。
受付窓口は全国の正規販売代理店(2021年2月現在では全国に21店舗)。
最寄りのディーラーへ証明書代となる、¥30,800(税込み・日本価格)を納めにGO!
筆者が申し込んだディーラーさんでは、
*ナンバプレート含めたボディ全体
*製造時にシャーシに貼られたシール
*車両識別番号(VIN CODE)
を写真撮影して申し込み書類を作成していました。
全国どの店舗でも同じ対応なのかはわかりませんが、とにかく“その車両が現存されている証拠”が必要なのだと思われます。
これが終われば、あとはイギリスからブツが送られてくるのをひたすら待つだけ!
けっこうお手軽システムです。
■入手しようと思ったきっかけ
お値段¥30,800。
イギリスから日本への送料も含まれていて、万一関税がかかった場合もLCI株式会社が負担してくれます。
…とは言え、ちょうどこのサービスを知ったころの筆者といえば、エリーゼのエアコン修理&もう1台の愛車・ダイハツ コペンの車検でお財布がてんやわんや。
価格として妥当だとは思いつつも、なかなか痛い出費ではありました。
しかし!!
原状、ロータスって他のメーカーと比較してもかなり弱小(失礼)だし…近年のロータスはCEOもたびたび変わって、モデルチェンジをするだのしないだの、SUVを出すか出さないだの、コンセプトも揺らぎがち…。
加えて出所証明書に関しては、営業さんも「特に期間限定ではないようですが、(※ロータスなので)いつ打ち切られるかはわかりません」とおっしゃっていた…
(※ロータスなので)と言っていたかどうかはさだかではないが!
むしろロータスだからあり得るよね?!(笑)
ただのグッズなら、あとでebayでもメルカリでも頼ればいいですが、“私”のエリーゼの出所証明書なんて、私が売らない限り出るわけがない…。
というわけで、突然終了しまってからでは遅いので、半ばヤケクソで入手することにしたのでした。
「買わないで後悔するよりも、買って後悔するほうがよいのです!!」
■ついに到着!出所証明書の中身をご紹介
そんなこんなで申し込みから約2カ月が経過したころ、ようやく筆者の手元に『Certificate of Provenance(出所証明書)』がやってきました!
セールスさんにも、「最初に頼んだお客様も年末~1月ごろに届いているみたいですから、もうすぐ来ると思いますよ」と言われていたので、ロータスのロゴ入りテープが貼られた段ボールが届いた際には「ついに!」との思いでした。
▲早く中が見たくてうずうず。ロータステープ、少々名残惜しくは思ったものの、即座にカッターで切断(笑)
そして中身は…
最近ロータスの標語となった“FOR THE DRIVERS”が記されたボックス!
箱を開けて真っ先に目に飛び込んだのは、なんともダサい(?)ローマ字表記のナンバー…これには大笑い!!
サンプル写真はイギリスのナンバーだったので、日本オーナーだとこうなるのか…とちょっとショック(笑)。
せめてもうちょっとカッコイイナンバーの地域に住んでいればよかったですねー。
それでも自分の名前と車体番号が刻まれたアルミプレートは、やっぱり世界で1つしかない特別感があるもの。
アルミカードのほかには、
*ロータスチームの戦歴が入ったカーボン製のブックマーク
*ロゴ入りレザーキーリング
*ホテルのレターセットに備わっていそうないたって普通のロゴ入りボールペン
*丸缶に収められたピンズ
がセットされています。
グッズもなかなか所有欲をそそられますが、本題はやはり出所証明書!!
ボックス内の黒い封筒に入っている、3枚の書面を読んでみましょう…。
▲現CEOフィル・ポップハム氏からのお礼状・出所証明書・アーキビストのアンディ・グラハム氏からのお礼状
筆者のエリーゼRは2010年モデルとして発売されたものですが、真の誕生日は2009年6月15日であることが判明!!
出所証明書は簡素でそのまま額縁に入れたくなるような雰囲気ですが、中でも見ごたえがあると感じたのはアーキビストさんからのお礼状。
これにはなんと、メッセージだけでなく、出所証明書をさらに詳しく説明した内容が書かれていたのです。
これによると…
日本に輸出された2010年式ロータス エリーゼの『R』(グレード名)においては、
・筆者の個体は24台中の6番目
・そのうち同カラー・同内装の個体は2台で、筆者の個体が1台目
なのだそう。
うわー…こういう情報が知りたかったんです!実に感慨深い!!
情報はあくまで同グレードのことのみでしたが、「今でもみんなどこかで元気に暮らしているのかな?」とか考えるだけでも顔がほころんでしまいます。
結果、ちょっとムリしてでも買ってよかったと思えました!
やっぱり“記念品”として形に残せるのはいちオーナーとして非常に悦ばしいモノなのです。
なにせ、メーカー直々に名前入りでオーナー認定してもらえたのですから!!
■ほかのメーカーに似たようなサービスはあるのか?
今回は筆者がエリーゼオーナーということで、ロータスの出所証明書に特化した内容となってしまいましたが…ほかのメーカーさんにも似たような(?)サービスがあるようです。
取得費用とプロセスからして、決して似ているとは言いがたいものの…。
愛車の証明書を発行してもらえるサービスとしては、
*フェラーリ クラシケ(生産終了後20年経過したモデルが対象)
*ポルシェ クラシックテクニカルサティフィケート(生産終了後10年経過したモデルが対象)
*ランボルギーニ ポロストリコ(生産終了後10年経過したモデルが対象)
などがあげられます。
この3メーカーはいずれも国内でも取得可能ですが、ややハードルがお高め…。
まず、
・いずれのメーカーもクラシックカーを対象としていること
・社外品の装着が認められないこと(装着されていたら外す)
・きちんと走れる状態になっていること
・そうでなければ認定工場での整備・レストアを受ける(工場出荷時の状態に戻す)
などの条件が必須。
ロータスのお手軽証明書とは次元が異なりますね(笑)。
フェラーリ クラシケのお値段にいたっては、モデルや車両コンディションによって未知数…。
純正部品の調達が不可な場合、ワンオフでパーツ作成をしてもらわなければならないため、場合によってはトンデモ価格に。無事クラシケ認定が取得できたら、ファイル作成費用もウン十万ほど発生。
しかしそのバインダーファイルはとっても豪華!ロッソカラーの分厚いファイルに、個体の記録がぎっしり詰まっています。
ポルシェのサティフィケートは¥55,000(税込)と比較的優しい(?)部類に。
社外品がNGな点はフェラーリやランボルギーニと基本的に同様ながら、356のような古いモデルで、純正部品の供給が困難な場合のみ、例外として認められるとのこと。
もしなんらかの不具合があった場合、別途整備費用が発生しますが、ベストコンディションで一発合格ならば初期費用のみでクリア!
こちらも写真入りのファイルを発行してもらえます。
アルファ・ロメオやアストンマーチンにも同様の部門があるようですが、こちらは残念ながら、日本国内のみで完結させることは難しい段階です。
ランボルギーニ ポロストリコは、まだまだ国内では取得例が少ない様子。
今後の展開に期待したいですね。
また、愛車の“生い立ち”がわかるわけではないものの、オーナー心をくすぐるメモリアルサービスを展開しているのがメルセデス・ベンツ。
オドメーターの節目や、所有年数に応じてスペシャルなエンブレムがいただけます!
こちらは正規販売店にて『オーナー表彰制度』の申請をすれば必ず入手できるので、節目ごとにコツコツコレクションしていく楽しみがありますね。
(条件は間近の車検を正規販売店で受けていることのみ)
愛車と出逢ってからの想い出をめいっぱい謳歌したい方にはぜひオススメ!
ちなみにロータスに話を戻しますと…。
他社ではクラシックカーに重点を置いているのに対し、ロータスは基本的に全モデルが対象。
必要情報さえ揃えられれば、オーナー本人のみならず、家族・友人などが申し込んでプレゼントにすることも可能です!
…1点注意したいのは、1980年以前のクラシックモデルだとデータが残っていないことがあるそうで、その場合は注文キャンセルとなってしまうのだそう…。
名車・ヨーロッパあたりになってくるとちょっと心配ですが、気になる方はまず最寄りの正規代理店に問い合わせてみてはいかがでしょうか?
※いずれもサービスの詳細は、記事最後の関連リンクでご覧いただけます。
■車両識別番号に秘められた意味
「うちのクルマのメーカーにはそんなのない!!」と残念に思ってしまったオーナーさんもいらっしゃるかもしれません。
でもまだ希望はあります!
車検証やエンジンまわりのコーションプレートに記されている車台番号をチェックしてみてください。
ダッシュボード付近や窓ガラスに刻印されているクルマもあります。
数字やアルファベットがズカズカと並んでいますね。
もしこれがVIN CODE(車両識別番号)と呼ばれる規格であれば、生産国(製造工場)や出荷時の仕様くらいの情報までなら引き出せるかもしれません。
ネットで『○○(メーカー) VIN decoder』などと検索すると、愛車の車両識別番号を自動解析してくれるサイトを探すことができます。
【注意:メーカー非公式サイトにアクセスする際は自己責任でお願いいたします。安全性の観点から、リンク掲載はしないこととします】
例えばフォルクスワーゲン ポロGTI(2019年式)の場合…
▲VINは車体左側ワイパーの下にありました
WVWZZZAWZKU●●●●●●(個体番号)の17桁が記されています。
意味を読み解いていくと、
W =(メーカー国)ドイツ
V =(メーカー名)フォルクスワーゲン
W =(車両種別)乗用車
ZZZ =この3桁はそれぞれボディタイプや安全装備などを示す模様
AW =(モデル)6代目AW型ポロ
Z =(チェックディジット)特殊な計算方法でVINが本物だと証明された結果
K =(モデルイヤー)2019年式
U =(製造工場)南アフリカ・ユイデンハーグ工場
●●●●●● =(個体番号6桁)
ということが判明。
細かな情報がすべて1桁の数字・アルファベットで記号化されているので、パッと見ではなにが何だかわかりません。
オーナー本人であれば周知の内容ばかりと思いきや、なんと製造工場が判明!
大手メーカーは世界各地に工場がありますから、愛車の出生地が知れるだけでもオーナーにとっては嬉しいことではないでしょうか?
海外の『VIN decoder』系サイト以外だと、国内の自動車愛好家向けHPやディーラーブログなどでVIN CODEの読み方を説明してくれているところもあります。
『○○(メーカー) 車体番号 意味』などのキーワードで検索してみてもよいでしょう。
メーカー非公式サイトにアクセスする際は、セキュリティ面にじゅうぶん注意したうえでアクセスしてくださいね。
また、VIN CODEではモデルイヤーしか読み取ることができませんが、真の製造年月を探る方法として、純正パーツの刻印をチェックしてみるという手法もあります。
一番わかりやすいのはシートベルト。
付け根のあたりに、ぺろんとタグが縫い付けられていたりしませんか?
クルマによってはココにシートベルトそのものの製造年月が記載されているため、それこそが実際に愛車が組み立てられた“真の誕生日”に近いかもしれません!
▲筆者のロータス エリーゼRのVIN CODE。エアバッグや3点式シートベルト、エアコン搭載などの意味も込められているようです
■愛車の生い立ちが知れるよろこび
筆者が取得した『Certificate of Provenance(出所証明書)』。
VIN CODEの意味に関しては、前項でご説明した手法でおおよそ以前から把握していましたが、それでもまだまだ知らなかった情報が多々ありました。
今回、ロータス以外のサービスや、VIN CODE(車両識別番号)の話題に触れたのは、「案外みなさまも、愛車のデータでまだまだ知らないことがあるのでは?」と思ったから。
国産車の場合、VINに代わるものとして“車台番号”がありますね。
こちらも末尾の個体ナンバー以外は記号化されていて、パッと見では何を意味しているかわかりません。
実際、筆者のもう1台の愛車ダイハツ コペン(2009年式)に関しては、おおよその製造年月まではシートベルトのタグから予測したものの、最終的には担当セールスさんに問い合わせることにしちゃいました(笑)。
▲コペンのコーションプレート。日本車は排ガス規制に関する記号も記されています。少し見づらいですが、TYPE欄のABAが『平成17年排出基準適合』の意
そうしたらなんと、工場からラインオフした日付を教えていただけたのです!!
これからは毎年納車日ではなく、誕生日にお祝いしなければ!
(点検のついでなど、お店の迷惑にならない範囲でさりげなく聞いてみるのがいいですね)
コロナ禍でドライブタイムが減ってしまった今だからこそ、愛車の“生い立ち”を追求してみてはいかがでしょうか?
ほんのささいな情報でも、愛車の謎がひとつ解けるごとに満たされた気持ちになれますよ!
▲2009年式のコペンより、2010年式エリーゼのほうが“姉”であった衝撃
■関連リンク
●ロータス LCI公式HP『Certificate of Provenance(出所証明書)受付開始!』http://www.lotus-cars.jp/news/news/certificate-of-provenance/
●フェラーリ公式HP日本語版『フェラーリ・クラシケ部門 : レストアと公式鑑定書』
https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/officine-classiche
●ポルシェ ジャパン公式HP『ポルシェ クラシックテクニカルサーティフィケート』
https://www.porsche.com/japan/jp/accessoriesandservice/classic/technicalcertificate/
●ランボルギーニ コーンズ公式ブログ『ポロストリコに申請するカウンタックが入庫しました!』
https://blog.cornesmotors.com/?p=56062
●メルセデス・ベンツ ジャパン公式HP『オーナー表彰制度について』
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/being-an-owner/activity/commendation-detail.html
●アルファロメオ(本国)FCA公式HP『Alfa Romeo Certificate of Origin - FCA Heritage』
https://www.fcaheritage.com/en-uk/classic-services/alfa-romeo-certificate-origin
●アストンマーチン(本国)公式HP 『ASSURED PROVENANCE』
https://astonmartinworks.com/assured-provenance/
[ライター・カメラ/細谷 明日葉]