オーナーインタビュー
更新2018.04.18
あぶない刑事、港303よ永遠に!レパードと柴田恭兵をこよなく愛する20代のリアルなカーライフとは?
松村 透
テレビ版および初期の映画のエンドロールで、タカ&ユージの2人が並んで走るシーンを憶えていますでしょうか。当時、舘ひろしと柴田恭兵は30代半ば。エンドロールの最後に高々とジャンプするタカ&ユージを同年代になって真似しようとしたところ、飛び上がるどころか、着地に失敗して転びそうに・・・という方がいらっしゃる気がしてなりません(いうまでもなく、筆者もその1人です)。
そして、2016年に公開された映画「さらば あぶない刑事」では、変わらぬタカ&ユージの姿を観て涙した方もいらっしゃるはず(この時点で60代半ば!)。しかもこの作品では、ゴールドツートンのレパード(前期型)が劇用車として起用され、熱狂的な「あぶ刑事ファン」を喜ばせる粋な演出もありました。
今回、そんなゴールドツートンのレパード、それも限りなく、映画「またまたあぶない刑事」の劇用車として起用された「港303仕様」に仕立てたクルマが愛車という20代のオーナーさんを取材いたしました。思い入れとこだわり・・・半端じゃありません!今回、オーナーさんとご相談した結果、あえてナンバーを「47-53」だけを残している理由も・・・既にお分かりかと思います。
プロフィール(画像提供/田中賢太さん)
・お名前:田中 賢太さん
・年齢:27才
・職業:会社員
・愛車:1988年式 日産レパード 3000アルティマ グランドセレクション(F31/前期最終モデル)、1997年式 日産ステージア25X(WGC34)
1.田中さんの現在のお仕事を教えてください
▲田中さんの大切な愛車である、日産レパード 3000アルティマ グランドセレクション
大学卒業後、ゼネコンで建築系の営業職をしています。一口にゼネコンといってもさまざまな分野があるのですが、私は民間の建築案件の中で、店舗をはじめとした商業系施設の担当をさせていただいています。
2.なぜ、この仕事に就こうと思ったのですか?
▲レパードのなかでも「アルティマ」は特別な存在。自動車アンテナも重要なアクセントなのです
私は、自他ともに認めるクルマ好きですが、趣味と仕事は分けようと考えました。私が就職活動していた時期は買い手市場で、いわゆる「就職難」だった時代です。そんなとき、地元の駅の改良工事を眺めていて「ゼロから造り上げる仕事」に興味を抱くようになっていったんです。内勤よりも営業職の方が向いているかな・・・と思いつつ就職活動をしたところ、縁あって現職に就くことができました。
これまで、さまざまな案件を担当させていただいていました。先日も、ある大手自動車ディーラーの旗艦店を担当させていただきまして・・・。間接的に、クルマに関わるお仕事にも関わることができたんです。これは偶然なのですが、父が若いときにクルマを購入したディーラーさんだったそうで、不思議な縁を感じましたね。
3.現在の愛車を手に入れたきっかけを教えてください
▲撮影時にはパトライトを天井に置き、港303仕様に変身!タカが助手席から置くとこのあたりになりますね(画像提供/田中賢太さん)
父親がクルマ好きで、幼少期に「モーターランド2」という番組で、全日本ツーリングカー選手権のレポート観ていたことを記憶しています。カルソニックカラーの日産スカイラインGT-R(R32)が連戦連勝だった時代ですね。そんな経緯もあり、当時、R32 GT-Rには憧れましたね。
その後、私が幼稚園のときに、テレビで「風の刑事・東京発!(1995年)」という刑事ドラマがオンエアされていたんですね。そこで柴田恭兵さん、そしてドラマの主題歌を歌っていた氷室京介さんの存在を知ることとなります。この頃から「はみだし刑事情熱系シリーズ(1996年〜2004年)」など、刑事ドラマに魅せられていきました。まさに、僕の原点ともいえるできごとです。
▲田中さんにとってバイブルといえる「あぶない刑事DVDマガジン」も標準装備!
それと、これは関東エリアのローカルネタかもしれませんが、夕方4時頃から日本テレビであぶない刑事の再放送をやっていた時期があったんです。そこでレパードの存在を知り・・・。中学生になった頃には、レパードのことで常に頭がいっぱいでした(笑)。さすがに通学時には自粛しましたが、出掛けるときは常にカメラを持ち歩き、街中でレパードに遭遇したらすぐに撮影できるようにしていたほどです。
あるとき、近所でレパードのオフ会があると知り、当時中学生の私も現地に駆けつけました。そこで当時のオーナーさんに座らせていただいた個体が現在の愛車なんです。私が大学生になったとき、前オーナーさんがこのレパードを譲ってもいいということで、手に入れることができました。いつの間にか、この個体を所有してから8年半、出会ってから13年くらいに経ちました・・・。それだけに、この個体には特別な思い入れがあるんです。
▲利便性を考慮して2DINのカーナビをインストールした以外はオリジナルの内装。自動車電話および無線機は撮影用に装着したもの
実はもう1台、日産ステージアを所有しているのですが、これは父から譲り受けたものなんです。現在、父はBMW3シリーズ ツーリングを所有していて、ステージアを手放すときに私が引き取りました。いまや貴重な「33ナンバー」ですし、 何といっても私が小さい頃から家にあるクルマだったので、手元に置いておきたかったんです。
輸入車ではBMWが好きなのですが、BMW6シリーズクーペ(E24)には憧れました。また、旅行でドイツ・ミュンヘンを訪れていたときに、当時発売されたばかりの3シリーズ(F30)を見掛けて、そのときの感動が記憶に残っていたんですね。父がステージアから乗り替えるとき、当初はアウディを考えていたみたいなんです。それを私が「BMWがいい!」とゴリ押ししまして(笑)。結局、BMWらしさにこだわり、ボディカラーは紺を選び、内装は茶系統のレザーをセレクトしたBMW3シリーズツーリングになりました。父は白い3シリーズを考えていたようですが・・・気づけば完全に私好みの仕様になっていましたね(汗)。
4.普段、愛車に乗ってよく出掛けるスポットはどの辺りですか?
▲写真が趣味という田中さん。横浜の夜景をバックに撮影(画像提供/田中賢太さん)
やはり「横浜」です(笑)。週末や洗車したあとなど、時間があれば横浜に行きます。大黒ふ頭などで景色を眺めたり、レパードを撮影したり・・・。じっくり愛車を撮影したいときは、1人でも行きますよ。あぶない刑事のロケ地にも行ったりしますね。リアルタイムでドラマを観ていた40代の方に場所を教えていただいたり、もちろん自分でも調べたり・・・。ロケ地で当時の映像を再現したりしました。
▲劇中のロケ地を訪れ、映像の模様を限りなく忠実に再現。レパード&あぶ刑事ファンも驚くこだわりです
あと、全国のレパードオーナーさんとの交流も行っています。最近は東北エリアの方たちと会う機会が多く、双方の地元に遠征したり、中間地点で集まってオフ会したり・・・。そんなことをしているので、私のレパードは走行距離が伸びますね。私は走行距離を伸ばすことに抵抗がないので、遠方でもガンガン行きます。現在のオドメーターの距離は21万3千キロに到達しました。
5.友だちはどんなクルマに乗っていますか?
▲レパード乗りの仲間たちと撮影。各個体のナンバーにも注目!(画像提供/田中賢太さん)
これは・・・地元とクルマ好きの仲間とで事情が異なるので・・・分けて話しますね。
●地元の友人
自分のクルマを持っていない人が多いです。実家住まいの友人たちも、親のクルマを借りるか、移動の足として軽自動車を買うとか・・・。そういうケースが多いような気がします。高校時代から付き合いのある親友が、トヨタ ソアラ(20系)を所有していたので、ソアラ vs レパードのライバル車コンビができたのですが、結婚・出産を機に、ホンダN-BOXに乗り替えました。「いつか戻ってくる」といってくれているので、復活してくれることを信じています。
●クルマ好きの仲間たち
必然的にレパードオーナーが多いですね(笑)。前期型や後期型、さまざまなオーナーがいますよ。私の4才上で兄貴分的な方がいるのですが、レパードの他に、日産180SXやセフィーロ、スカイライン4ドア(R34)、ホンダ シビック(4代目にあたる、通称グランドシビック)など、さまざまなクルマを所有しているディープなケースもありますね。
6.メンバー間で若者の車離れについて論じることはありますか?
このテーマで話しをすることはありませんが、レパードやあぶない刑事ファンというと40代以上の方が多いんです。この世代の方たちからは「田中くんの世代はクルマ好きな人、少ないよね」といったことをいわれることがしばしばありますね・・・。
40代以上の方は、クルマがかなりの割合を占めていたことは耳にします。これは推測ですが、私の世代になると「クルマ好きの中間層が極端に少なくなった」のかもしれません。ディープかつマニアックな層と、まったく興味を示さない人たちとの2極化が進んでいるように思います。
7.自分は相当なクルマ好きだと思いますか?それ以外の趣味はありますか?
▲新車製造時に、品質確認検査を通過したことを示すステッカー。これは、田中さんが入手したこだわりの一品
はい、間違いなく(笑)。人生の7〜8割はクルマのことばかり考えていたような時期もありましたね。もし今後、結婚・出産を機にソアラからN-BOXに乗り替えた親友のように、私が家庭を持つことがあるとしたら・・・。いまの2台は何とか維持させてもらうよう、土下座してでも相手の方にお願いすると思います。それくらい大切な存在なんです。
▲田中さんのもう1台の愛車である、日産ステージア25X(WGC34)。お父様から譲り受けたため、33ナンバーのままです
クルマ以外の趣味というと、音楽でしょうか。前述の「風の刑事・東京発!(1995年)」というドラマの主題歌が、氷室京介さんの「魂を抱いてくれ」という曲だったんですね。この曲で氷室さんとBOØWYに魅せられ、学生時代にはコピーバンドを結成していました(ボーカル担当)。いまでもバンド活動は続けています。
▲懐かしい自動車電話のアンテナ。もちろん本物。NTT DoCoMoではなく、あえてNTT製なのもこだわり
氷室さんのライブは、18才から現在まで44公演くらい行きました。音楽好きの母親も、いつの間にか氷室さんの世界観に魅せられ、母子で何回かライブに行きましたね。昨年の「KYOSUKE HIMURO LAST GIGS」は、福岡公演以外すべて行きました。東京ドーム3公演も制覇しましたよ!セットリストにある「LOVER’S DAY」から「CLOUDY HEART」を聴いていたときは思わず涙が出ました。もちろん、ライブDVDとBlu-rayも購入しました。DVDはクルマで、Blu-rayは自宅で観るためのものです。
あとは写真です。父親が若いときに「ペンタックスSP」というカメラを愛用していて、それを使うようになってからですね。レパードの写真も、独学でいい画が撮れないか、日々、勉強しているところです。
8.クルマ好きでない周囲の友人の反応やクルマに対する温度差
▲田中さん会心の1枚(画像提供/田中賢太さん)
学生時代の同級生からは「まだレパード乗ってるの?」と言われることもありますね。でも、本当に惚れ込んで乗っていますし、気にしていません。
9.クルマ好きでない友人たちはどんなことをして楽しんでいますか?
飲みに行ったり、あちこちに出掛けたり・・・その様子をFacebookやInstagramなどにアップして楽しんでいるみたいです。自転車にハマっている仲間や、年間パスポートを購入するほどディズニーランドに通い詰めている女友だちもいますね。
10.クルマ好きの著名人で憧れの存在は誰ですか?
これはもう、柴田恭兵さんと氷室京介さんです。それぞれの格好良さってあると思うんですけれど、私にとっては永遠の憧れであり、ヒーローです。
ファッションもお2人の格好を意識していて、仕事中は柴田恭兵さんを意識したストライプのスーツを身につけたり、プライベートでは氷室京介さんが身につけて居るアクセサリーを選ぶなど、自分なりに楽しんでいます。営業職なのでストライプのスーツは・・・と思われることがあるかなと思ったんですが、社内では「田中だからな」と、お客さんも「田中さんなら似合いますよ」と、それぞれ容認(?)していただいているので、とてもありがたいですね。もちろん、そのために一生懸命に仕事を頑張っているつもりです。
▲田中さんが取材当日に持参してくれた、柴田恭兵さんが映画「さらば あぶない刑事」で身につけていた「リンシュウ(RYNSHU)」のジャケット。サイズも柴田恭兵さんと同じものなんだとか
今日、身につけているジャケットは、柴田恭兵さん御用達のブランド「リンシュウ(RYNSHU)」のものなんです。映画「さらば あぶない刑事」の劇中でユージ(柴田恭兵さん)が身につけていたジャケットそのもので、サイズも同一です。パリの街並みがプリントされた生地は柴田恭兵さんがセレクトしたものだそうです。
11.あと3年・・・。30才になったら乗っていたいクルマはありますか?
▲懐かしのデジタルメーター。この表示に憧れた方も多いはず(画像提供/田中賢太さん)
これも「レパード」と「ステージア」ですね。もし、予算に関係なくもう1台増車できるとしたら・・・。ケンメリのスカイラインGTでしょうか。色はブルーメタリックがいいですね。
12.田中さんにとってクルマとはどのような存在ですか?
▲こちらのリクエストにも一発で応えてくれます
私にとっては「人生」です。中学生のときに出会ったレパードを大学生のときに手に入れ、当時はボディカラーはパールホワイトのツートン、内装はレッド、外装はエアロパーツを装着していた状態だったものを、少しずつ「港303仕様」に近づけていったんです。レパードであれば何でもいいというわけではなく、この個体でなければだめなんですね。若くしてそういう出会いがあったことは幸運だったな、と自分でも思います。
▲劇用車にならい、エンジンルームは元のボディカラーが残されているのも田中さんのこだわり
子どもの頃から憧れていたレパードが自分の愛車となり、プラモデルのパッケージにしていただいたり、あぶない刑事のヒストリーブックに見開きで掲載していただけたことは本当に嬉しかったですね。
「港303仕様」としてはほぼ完成の域に達したと思っていますし、あぶない刑事も一区切りついたのかもしれません。このレパードは(ステージアも)、これからも所有していきますが、あぶない刑事の劇用車から少し離れた仕様にモディファイしてもいいかなと思っているんです。いずれにしても、これに代わる存在はこの先も見つけられないような気がしてならないです。それほど思い入れが強い個体ですから・・・。
取材を終えて
レパードと柴田恭兵と氷室京介。多くの男子にとって、真似をするにはいずれもハードルが高い存在。それを田中さんは自然と、鮮やかにやってのけてくれます。撮影時のポーズも一瞬で決まり、それが本当にサマになる。このまま、田中さんがあぶない刑事のスクリーンに収まってもまったく違和感がないように思えました。
憧れの存在が愛車となり、プラモデルのパッケージに起用され、あぶない刑事のヒストリーブックにも掲載された田中さんとレパード。次にあぶない刑事が映画化(またはドラマ化)されることがあったら「タカ&ユージの仲間として、スクリーンのなかを駆け回る田中賢太を観てみたい」そう思えてならない取材となりました。それが、夢物語ではないと思える取材となりました。
[ライター・撮影/江上透 画像提供/田中賢太]