ドイツ現地レポ
更新2017.08.24
40年以上もモデルチェンジなしで製造され続けるオフロード車、Lada Niva(ラーダ・ニーヴァ)
守屋 健
筆者がパッと思いつくのはそうしたクルマたちでしたが、「そうだ、このクルマも相当なロングセラーだったな!」と思い出させてくれるクルマに先日遭遇しました。それが、今回ご紹介するLada Niva(以下、ラーダ・ニーヴァ)という、ロシア製のクルマです。
40年間にも渡って生産されるロングセラーモデル、ラーダ・ニーヴァ
▲ニーヴァとは、ロシア語で「耕作地」を意味します
ラーダは、ロシア最大の自動車メーカー・アフトヴァースのブランドで、もともとは国外向けでしたが、現在ではロシア国内でも販売されています。2014年にはアフトヴァースの経営権をルノー・日産が取得していて、ルノーや日産ブランドのクルマをロシアで製造。カルロス・ゴーン氏が2016年に会長として就任しています。
ニーヴァはラーダきってのロングセラー・モデルです。製造が始まったのは1977年(1976年とする資料もあります)。当時関係の深かったフィアット製の部品をエンジンの各部に使いつつも、ボディや駆動系はラーダで設計されました。車体はモノコック構造、フルタイム四輪駆動で、副変速機やセンターデフロックも装備、前輪のブレーキにサーボ付ディスクブレーキを採用。当時のソ連のクルマとしては非常に先進的な構造で、後のSUVに多大な影響を与えたとされています。
▲オーストリアのウィーンに本拠地があり、製造をドイツで行うブランド「DOTZ」のホイールに換装されていました
当初のエンジンは1.6Lの直列4気筒SOHCで、キャブレター仕様でした。最高出力は70馬力台と控えめでしたが、シンプルで安価、頑丈で走破性の高いニーヴァは、好意的に市場に受け入れられていきます。現在も基本的な構造は変更なく生産が続けられているものの、時代に応じてエンジンは進化を遂げ、現在は1.7Lのインジェクション、5速マニュアルトランスミッション・モデルがラインナップ。最高出力は83馬力と相変わらず控えめなのはご愛嬌ですが、ドイツ仕様はなんと最新の排出基準EURO 6をクリア!40年以上を経て、まだまだ作り続けようとする強い意思を感じます。
取り回しの良い、四輪駆動車としては小柄なサイズ
▲短い期間ですが、日本に正規輸入されていたことも
サイズはかなり小柄で、全長x全幅x全高は3720x1680x1640mmとなっています。3ドアで乗員は4名。本格的なオフロード車でこのクルマよりも小柄なのは、スズキ・ジムニーくらいでしょうか。車重も軽く、ドイツ仕様で1285kgとなっていますが、トップスピードは137km/h、0〜100km/h加速は19.0秒と、アウトバーンを快適に走るには少々力不足かもしれません。
最近のSUVの空力的デザインに見慣れた目からすると、プレーンでクリーンな、ある意味素っ気ないとも言えるエクステリア。どことなく共産圏の雰囲気を漂わせる外観ですね。ドイツ国内でも根強い人気を誇り、現在でも新車で購入できますが、その価格は10,790ユーロ。1ユーロ=129円で計算すると約139万円となり、「生きた化石」と呼べるようなシンプルなオフロード車をこの値段で買えると思うと、だんだんとお買い得な気がしてきます。
日本での知名度は低いものの、生産台数は200万台以上!
▲現在はニーヴァの名前は使用されず、公式サイトではシンプルに「4X4」の名称で紹介されています
ニーヴァの根強い人気を裏付ける記録があります。2013年に3月12日に200万台目がラインオフした、というものです。しかも、その2013年8月から、ボディには防錆加工が施されるようになりました。ABSやパワーステアリングの追加など、コツコツ改良が積み重ねられてはいますが、相変わらず内装はプラスチッキーで、1980年代のクルマの雰囲気を今も残しています。電子制御化される前の、機械としてのクルマが健在だった頃を思い起こさせてくれるディテールは、好きな人にはたまらない魅力があります。
かのプーチン大統領もカスタマイズして所有しているという、四輪駆動車のシーラカンス的存在、ニーヴァ。ロングセラーのクルマだけが持つ、普遍的な美しさと潔さを兼ね備えた、隠れた名車だと筆者は考えています。日本の芸能人の中にもコアなファンがいらっしゃるようで、テレビでも度々登場していますが、依然として知名度は低く、取り扱っている販売店もごくわずか。今後も日本国内で見かける機会は少ないと思いますが、世界に目を向ければ、数多くのニーヴァがこれからも長きに渡って活躍していくことでしょう。
[ライター・カメラ/守屋健]