ドイツ現地レポ
更新2017.07.31
ドイツ発!レトロポルシェカスタムで話題のKaege(ケーゲ)社独占レポ
NAO
ポルシェでは、アメリカ発のSinger(シンガー)社を始め、ポルシェAG本社においても、古いポルシェをレストアする事業を開始しています。以前、ドイツでのクラシックポルシェカスタムに関しての記事で紹介した「ドイツのシンガー」ことKaege(ケーゲ)社をご存じの方もいるのではないでしょうか。
このたび、クラシックポルシェのカスタムに携わり、日本からも熱い注目を集めるケーゲ社をドイツの奥地まで訪問してまいりました!そして、ケーゲ社長ご自身を独占取材することができましたので、その様子をレポートしていきたいと思います!
Kaege(ケーゲ)社とは?
Kaege(ケーゲ)社の成り立ちは、創業1995年、創業者であるロガー・ケーゲ氏により設立されました。場所はドイツ南部シュテッテンという人口わずか630人の村の中に、自宅兼アトリエ工場のようなカタチで存在しています。
Kaege(ケーゲ)社の社員は9名、自社のアトリエと接客スペース、整備工場、カスタム工場、という陣容です。
ケーゲ氏のキャリアは、長く自動車の鈑金塗装やレストアに従事していたそうです。その経歴を活かして、自動車の修理、鈑金、販売事業をスタートしました。
そして、2000年にレストア、カスタム事業に参入し、2010年に初のロードカー「Kaege Retro(ケーゲ・レトロ)」をリリースします。
そのロードカーがよく見るあの個体、そうです!ポルシェ993をベースにナロールックを取り入れ、フルレストアを施したものです。
「Kaege Retro(ケーゲ・レトロ)」発表後、世界中から反響があり、現在まで12台を受注。現在、年間6台を最大受注台数として、納期まで約1年かけてコツコツ製作するのです。筆者が取材した日も、ようやく2台目が納車されるとのことでした。
現在、ほとんどがドイツ国内のユーザーだそうですが、ほかにもドバイや、アジアでは香港から1件注文があったそうです。
ケーゲ社長にインタビュー
●どうしてこのモデルを制作しリリースしたのでしょうか?
もともとクルマ好きなのはもちろん、シンガーに触発され、いつか自分も「こんなクルマに乗ってみたかった」という、理想のクルマをつくったのが一番の理由だね。以前からクルマのカスタムには興味を持っていて、シンガー社も気にしてはいたけれど、コストや車検の問題からドイツへ輸入するのが難しかった。それならこのコストを自己開発費に充てようと、このプロジェクトを始めたんだ。
●Kaegeレトロの強みはありますか?
シンガーと比べて違うところは、1種のベースにこだわるというところ。シンガーは複数のモデルからパーツを集めてカスタムするけれど、ケーゲではできるだけ1つのオリジナル技術を残してカスタムするというモットーで作っている。
●ドイツでも日本でもいまだクラシックポルシェのオリジナル志向が強いと思いますが、その中でカスタム業を始めることはどうですか?
(大きくうなずいて)そう、それはもちろんわかっている。オリジナル志向はまだまだ強いね。でもそれはあまり気にしてはいないかな。今、クラシックカー業界でもEV化だったり「新しいクラシックカー」を作ることがトレンドになってきていると思うから。
●しかし、なぜポルシェに限定したのでしょうか?
ポルシェは世界的にスポーツカーとして認められていると思うんだ。僕にとっても、レトロカーといえばポルシェのイメージがある。それに、個人的にやはりポルシェが好きだからというのもある。
そしてポルシェ911は歴史が長いけれど、ルーフフォームが唯一変わっていないモデルでもある。だからどのシリーズ(年代)でもカスタムがしやすいというのも理由かな。その中でも、ベースが合うのが964と993だから、このモデルでカスタムしているよ。
●(日本でもポルシェは多いのか?という問いに対して)日本にもポルシェファンは沢山いるのですが、高速道路は最高速度100km/hまでとなっています。ポルシェなどのスピードを楽しむようなスポーツカーが日本で走る環境についてどう思いますか?
古いポルシェなら制限が100km/hだったとしても、スピード感だけではなく、ほかにも感じるものがたくさんあるはず。それはエンジン音だったり、足から伝わる感覚だったり。「走るよろこび」というのは速さだけではないからね。最近のクルマは静かで発進もスムーズすぎて、たとえ200km/h出したとしても走りのフィーリングは変わらないだろうね。
●ちなみに、日本車で好きなモデルはありますか?
父がマツダのディーラーに30年以上勤めていたよ。好きな日本車は…どれがとはっきりは言えないけれど、長いボディのものが気に入ってるかな。自分がモータースポーツをしているのもあって、日産GT-Rも好きだしね。
ただ、日本車はすごくエレクトロ(電子的)で、すごく静かに走る印象がある。ドイツ車のように、エンジンがガンガン回る音が聞こえるほうが僕はどちらかといえば好みなんだけどね…。
※このインタビュー前に、ケーゲ・レトロがカレントライフ含め日本でも紹介されたこやファンがいますよ!という話しをしたところ、ご本人は驚いた様子で「え、日本でもそんなに知られているの?初耳だなあ。」と言いながら、「でも。とても光栄だね」と喜んでいらっしゃいました。
話題の「ケーゲ・レトロ」を見せていただきました!
インタビューが終わった後、ケーゲ社の紹介をしていただき、アトリエ横に停めてあった、かのレトロポルシェカスタムモデルを見せていただきました。
ボディカラーはアイボリー、内装が落ち着いたグリーンをチョイス、そしてチェック柄等も取り入れ凝っています。内外装、機関系含めて徹底的にレストアを施します。フェンダーはワイドボディに変更、カーボンをつかって新しく自作してあります。
ヘッドライトはケーゲオリジナルのLEDヘッドライトを使用。これは、ポルシェの正規ヘッドライトの製造もしているドイツの大手ランプメーカー、オスラム社と共同で開発したものです。
足回りももちろんレストア。味付けはKW製のケーゲ社向け特注サスペンションを組み込みます。乗り味はノーマル993より若干硬めだといいます。
エンジンもフルオーバーホール、ミッションも同様です。
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▲(動画)エンジンをかけてもらいました
内装も、オリジナルの雰囲気を損なわないようにバージョンアップを施し、細部までしっかり仕上げていきます。
▲燃料タンク部分にもレザー張りが施されています
その後、併設の工場も見学させていただきました!現在取り組んでいるカスタムの様子は残念ながらお見せできないのですが、完成したケーゲ・レトロデモカーのカスタム時の写真にてご紹介します。
レトロ・ポルシェは現在1台につき、2人がかりで製作しているようです。技術工の皆さんはまだ20代半ばと思われる若い方ばかりでした。
ベースは993、まず丸裸、骨になるまでバラバラにします。そして、シャシーからレストアを開始します。ベースのどの部分を残していくかは、それぞれの個体によって様々です。よって、ベース車両の状態によって金額が大きく変動するといいます。解体したボディパーツは中古部品として販売するそうです。
▲黄緑に塗られた部分がベース車両で残すパーツです
ボディタイプは基本的に993ベースを使用することが前提ですが、オーナーの希望によってある程度相談が可能とのことです。車両は、ケーゲ社に探してもらうことも可能ですが、愛車の持ち込みもok。カスタム料金は約2800万~+ベース車料金別途となっています。
▲現在、Fシリーズも993ターボベースで着手。完成すればケーゲ最速シリーズに!
一番気になる日頃のメンテナンスですが、機関系はすべてオリジナルの993を使います。よって、993とまったく同様であり、メンテナンスが可能なところであれば、どこでも整備は可能だとケーゲ氏は語ります。
これは日本にはあまり関係がないかもしれませんが、ケーゲのカスタムポルシェはドイツの車検にあたるTÜVの認定が下りています。(TÜVは技術、安全、証明サービスに関する規格認証機関)シンガーが欧州に進出できないのも、このTÜVが取得できていないからだそうで、TÜVの認証があることがケーゲ・レトロの強みなのだそう。(といっても取得はかなり苦労したと語っていましたが…)
ドイツから遠く離れた日本の方々が我々のクルマに興味をもって、こうやって実際に見にきてくれていることは心から嬉しい、ありがとうとケーゲ氏。終始丁寧に説明してくださり、今回このような機会を持てたことも、ケーゲ・レトロをこの目で見れたことも筆者自身とても感謝しています。ケーゲ氏、本当にありがとうございました!
最後にケーゲ・レトロの動画をお届けします。
ぜひご覧になっていいただき、妄想を膨らませてください!
Kaege車両、カスタムパーツの入手可能先はこちら
http://www.garagecurrent.com/kaege/
また、カスタム部品としてケーゲ社オリジナルのLEDヘッドライトや内外装パーツもリリースしています。ヘッドライトはポルシェの正規ヘッドライトの製造もしているドイツの大手ランプメーカー、オスラム社と共同で開発したもので、ナロー~964まで対応可能。
Kaege Retro
オールLED使用、デイライト付きもあり
定価:300,000円(税抜)~
[ライター・写真/NAO 取材協力・画像提供/Kaege Automobile GmbH]