更新2023.11.12
もっともっと輸入車メーカーにも出展してほしい!JAPAN MOBILITY SHOW 2023取材レポート
松村 透
去る2023年10月26日(木)から11月5日(日)まで(一般公開は10月28日(土)から)開催されたJapan Mobility Show 2023(以下、ジャパンモビリティショー)。
東京モーターショーから名称を変更して初の開催となった今回の来場者数は1,112,000人。前回から4年振りの開催となったこともあり、100万人を突破しました。
一概には比較できませんが、平成後半に開催された東京モーターショーの来場者数が軒並み100万人を下回っていた(特に、リーマンショックの影響を受けたと思われる2009年は614,400人)ことを考えると、関係者の方々もまずはひと安心・・・というところでしょうか。
それはさておき、「乗りたい未来を、探しに行こう!」をテーマに、自動車業界の枠を超え、他の産業やスタートアップ、計475企業・団体が出展し、クルマというジャンルを越えて盛りだくさんな内容・・・すぎてとても1日でくまなく見るのは不可能な規模です。
そのなかでも、輸入車を中心にピックアップしてみました。
■輸入車メーカーとしての出展は3社+1社(JAIA枠)のみ
今回、輸入車メーカーとしてジャパンモビリティショーに出展したのは「メルセデス・ベンツ」「BMW」「BYD」「ルノー」の4社。
少し前まではあたりまえのように出展していた多くの輸入車メーカー。では、最後に出展したのはいつなのか?過去に遡って調べてみました。
・2003年:ブガッティ、オペル、サーブ
・2005年:アストンマーティン、KIA
・2007年:フェラーリ、マセラティ、ベントレー、ランボルギーニ、フォード、GM、クライスラー、ヒュンダイ(乗用車)
・2009年:ケータハム(この年は多くの輸入車メーカーが出展見合わせ。出展したのはアルピナ、ロータス、ケータハムのみ)
・2011年:なし
・2013年:ジャガー、テスラ、KTM
・2015年:アルファ ロメオ、アバルト、ジープ、ロータス、ランドローバー、レンジローバー、ラディカル
・2017年:ポルシェ、BMW、BMW MINI、フォルクスワーゲン、アウディ、ボルボ・カー(乗用車)、シトロエン、DS、プジョー
・2019年:BMW アルピナ、ダラーラ、アストンマーティン(JMS2023ではアストンマーティン東京として展示)、アルピーヌ
こうして振り返ってみると、BMWは6年振りのカムバックとなるわけですね。そして中国のモビリティ企業であるBYDは初出展となります。
●メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツブースは「Concept EQG」および「メルセデスAMG C 63 S E PERFORMANCE」のジャパンプレミアを筆頭に、「EQS 450+ Edition 1」や「EQE 350 4MATIC SUV Launch Edition」など、EVを中心に展示。日本人も大好き!なGクラスのEVモデルとして高い注目を集める「Concept EQG」。Gクラスを強く残したEVモデルということで、激しい争奪戦が繰り広げられそうです。
●BMW
おかえりなさいBMW!というわけで、ブースの規模を含めて気合いの入っていたBMWブース。「BMW iX2」および「BMW X2」はなんとジャパンモビリティショーがワールドプレミア。その他、コンセプトカーの「BMW VISION NEUE KLASSE」や、「BMW XM Label Red」「BMW iX5 Hydrogen」「BMW i5 M60 xDrive」「BMW i7 M70 xDrive」「BMW X7 M60 xDrive」といった次世代のBMWを代表するモデルを中心に展示されていました。メルセデスとBMWが出展するだけで一気に華やかになるから不思議です。
●BYD
ブースの規模や人員の多さ、パンフレットの造り込みなど、もっとも勢いを感じた(予算が掛けられている)のがBYDのブース。日本発売車種第1弾「BYD ATTO 3」、コンパクトEV「BYD DOLPHIN」、3弾として投入予定の「BYD SEAL」、ラグジュアリーブランド「仰望(ヤンワン)」のオフロードSUV「U8」、BYDがメルセデス・ベンツとの合弁で開発した「DENZA(デンツァ)」のプレミアムミニバン「D9」などを展示。普段、接する機会が少ないモデルを間近で見られるのもこのイベントの魅力といえます。
●ルノー
JAIA(日本自動車輸入組合)ブースの一角に「ルーテシア E-TECH エンジニアード」「アルカナ E-TECH エンジニアード」「キャプチャー E-TECH フルハイブリッド」の3台のルノー車を展示したルノージャポン。ブースを構えればコストは掛かるし、Web広告とは異なり、費用対効果にも疑問符がつくかもしれません。しかし、形はどうあれ、インポーターとしてブースを構えることが大事だと考えます。
■もはや欠かせない存在となりつつある「Tokyo Super Car Day 2023」
日本スーパーカー協会とのコラボレーションによって今回も実現した「Tokyo Super Car Day 2023」。フェラーリやランボルギーニの展示を筆頭に、協賛企業各社による、まるでモビルスーツのようなロボット型のEV、そして空飛ぶクルマなど、小さなお子さんにも分かりやすい「夢のある演出」でした。
主な出展企業が集まっていた南展示棟 南3・4ホールは、東・西ホールから少し離れていて見逃してしまう(あるいは混雑して行くのを躊躇ってしまう)来場者もいるなか、「Tokyo Super Car Day 2023」のブースが強力に誘引するきっかけになっていたことは間違いなさそう。
近未来のクルマやモビリティも気になることは確か。しかし、ここはジャパンモビリティショー。業界関係者向けの展示イベントではありません。多くの一般のひと、そしてクルマ好きがさまざまな期待を込めて会場を訪れます。
そこには「子どもたちにも伝わる分かりやすいカッコ良さ」や「手を伸ばせば届く(かもしれない)憧れのクルマ」の出展は欠かせないもの。その筆頭ともいえるのがスーパーカーだと改めて感じたことも事実。
「パパ、あの赤いクルマはなに?」「フェラーリF40っていうんだよ。パパが小さい頃にデビューしたんだ」「へ〜。カッコイイね。いつか乗ってみたい」「大人になってお金持ちなったら乗れる・・・かもね」といった会話が繰り広げられたはず。
こういったきっかけ=原体験ってものすごく大事なので、次回のジャパンモビリティショーの出展も期待したいところです。未来のクルマ好きを育てるためにも!
■思わず見とれてしまったマツダ アイコニックSP
とにかく会場の隅から隅まで歩いて、仕事を忘れて歩みを止めてしまったブースがあります。それはマツダのブース。輸入車ではないけれどここは紹介させてください。
ジャパンモビリティショーに行った方の多くが、その美しいデザインに見とれてしまったに違いない「マツダ アイコニックSP」。メーカーが公表したサイズは全長×全幅×全高=4180×1850×1150mm(ちなみに仕様変更前のロードスターのボディサイズは全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm、FD3S型のRX-7は全長×全幅×全高=4280×1760×1230mm)。
ロードスターよりひとまわり大きく、低いボディに、2ローターRotary-EVシステムを搭載。軽量かつコンパクトなロータリーエンジンの利点を活かしたことでこのフォルムが実現したそうです。そして、前方に跳ね上げるタイプのドアはまるでアストンマーティンのよう。
今回のマツダの出展テーマが「『クルマが好き』が、つくる未来。」とのことで、ブースの目立つところにユーノスロードスターが展示されていたり(現行ロードスターよりも扱いが上だったような・・・)、小さなお子さんが乗れる2/3スケールだという現行ロードスターが展示されていたりと・・・。出展テーマにウソはありません。
自分がいま10代だったら・・・「マツダに入社してクルマの仕事をしてみたい」なんて夢に描いただろうな・・・なんて思ってしまうほど、まさにクルマ好きのココロをくすぐる演出が随所に施されていたことが印象的でした。
さらに、販売されているグッズも洗練されていて、マツダファンでないと身につけるのがためらわれるデザイン(失礼!)ではなく、高級品を扱うのデパートで売られていても何ら違和感のない見た目と質感に惚れ込んでしまったほど。
■まとめ:「モビリティショー」としてのスタイルを確立するのはまだ少し先の話
何しろ今回が初の開催となったジャパンモビリティショー。「とにかくやってみないと分からない」ことが山ほどあったのも事実です。
いちクルマ好きとして改めて感じたのは、前回の東京モーターショーからわずか4年で「EVシフト」がさらに加速したということ。そして、もはやこの流れは止められません。おそらくは誰にも。
しかし、EVやBEVを選ぶかは我々ユーザーが決めることです。航続距離や充電スポット、バッテリーの耐用年数、そして何より価格とリセールバリュー。内燃機関のクルマと比較して圧倒的なアドバンテージがあるかというと、「ある!」と断定できないという「現実」もあります。
クルマがそうであるように、ジャパンモビリティショーもまだまだ過渡期が続きそうです。業界向けの展示イベントとも違う、そして東京オートサロンとも異なる「モビリティショーらしさ」とは?「モーターショー」の枠、先入観から抜け出し、「モビリティショー」としてのスタイルを確立するのはまだ少し先のように思えます。
イベントのプログラムをすべて主催者任せにして外野から批判したり評論するのではなく、消費者である我々ユーザーがリクエストや企画を投げ掛けることで、21世紀の東京モーターショー転じてジャパンモビリティショーのスタイルが確立するものと信じています。
何はともあれ、今後に期待しましょう!
[ライター・撮影/松村透]