ドイツ現地レポ
更新2016.11.16
Hナンバーが似合う。ドイツ現地で見つけた旧いクルマたちを見て
松村 透
ドイツから、メルセデス・ベンツSクラス(W126)の画像が送られてきました。日本におけるW126といえば、ブルーブラックやミッドナイトブルーなど、濃紺系のイメージが強いだけに、ゴールド系のボディカラーは新鮮です。日本に正規輸入されなかったものも含め、W126には、さまざまなボディカラーが用意されていました。
このクルマは、H(ヒストリーナンバー/H=Historisch)の意味をもつ「Hナンバー」ではありませんが、初期モデルはこのナンバーを冠する資格を有しているのです。改めて、隔世の感を禁じ得ません。カレントライフでもたびたび取りあげていますが、ドイツは古いクルマを大切にする文化があります。日本のように中古車を乗っている、というイメージではなく「こだわって乗っているのがカッコイイ」というイメージが日本より強いのです。
(編集部追記:当記事は過去配信した記事の改定版です)
今から四半世紀前、まさにバブル絶頂期。日本の路上にはW126が溢れていました。それも、最上級モデルの560SELが大多数だったように思います。
20数年前、ある輸入車のイベントと同時開催で中古車の展示即売会が開かれていました。メインはドイツ車。いまのように、メルセデス・ベンツ・コネクションでどうぞお気軽に試乗してください、という時代ではありません。どのクルマもきっちり施錠されているのが当たり前。そのなかで展示販売されていた、560SECの鍵が掛かっていなかったのです。
おそるおそる左側のドアを開け、運転席に乗り込んでみました。日本車では味わったことのないドアを閉めたときの手応え、反力の強い座面と分厚い本革のシート。これがメルセデス・ベンツなんだ!感動に浸っていたまさにそのとき、警備員のおじさんに見つかりこっぴどく叱られましたが…。あの感動は、いまもはっきりと憶えています。
あれほど街に溢れていたW126は、モデルチェンジを重ねると同時に淘汰が進み、海外へ旅立ったものや、既にスクラップとなってしまった個体もあります。反面、日本国内に残ったコンディションの良いW126は希少価値があるために、プレミア価格がつき始めています。
現代のSクラスのようにハイテク装備満載ではありませんが、この時代のモデルでしか味わえない世界があるのも、また事実です。この年代のメルセデスは、Hナンバー云々ぬきに、ドイツ本国はもちろん、日本でも大切に乗り継ぎたい1台といえます。もし、街中で見掛ける機会があったら、その佇まいを眺めてみてください。当時は大きいと思っていたW126が、意外なほどすっきりしているように映るかもしれません。
また、Hナンバーが似合うゴルフIカブリオレの画像もドイツから送られてきました。最近では、日本では、めったに見掛けることがなくなってきたゴルフI。さらにカブリオレとなると…何台くらい日本に存在するのでしょうか?
この個体、GTI仕様にドレスアップされたカブリオレです。ホイールは、当時のVW車のドレスアップにはお約束ともいえる”ATS社”のアルミホイール。ローダウンされ、マフラーも交換されているようです。国は違えど、クルマ好き(と勝手に断定してしまいますが、間違いなさそうです)のやることは万国共通なのでしょうか。
日本には正規輸入されていませんが、ゴルフ6(先代モデル)から、GTIにもカブリオレが設定されるようになりました(しかも、ゴルフRにまで!)現行モデルにあたる、ゴルフ7カブリオレの登場もそろそろでしょうか?
モデルによっては、外装は新しくても中身は先代モデルということもしばしばありました。しかし「メルセデスやBMWのオープンだと角が立つけれど、ゴルフなら問題ない」という、日本の世間体とあまり変わらなない風潮がドイツにもあります。そういった方のニーズにぴったり収まるのがゴルフカブリオレなのかもしれません。
最後になりますが、VWビートル カブリオレの画像もご紹介します。日本にも熱狂的なVWビートルファンがいらっしゃるかと思います。Hナンバーが誇らしいですね。
2015年5月、創立100周年を迎えたヤナセ。そのヤナセで長いあいだ保管されていたという、VWビートルの存在をご存知でしょうか?ダークブルーに塗られたこの個体は、1952年に日本上陸を果たした4台のなかの1台とされています。
このビートル、去る2014年11月にザ・プリンス パークタワー東京で開催された「ヤナセ・ハイグレードフェア」でお披露目するべく、レストアが施されました。
レストアといっても、すべてのパーツを新品に交換するような「工場出荷状態」に戻すわけではありません。レストアの際に再塗装こそされていますが、内装や各パーツは、できる限り当時のものをそのまま流用しているそうです。
60数年のときを経て、再び姿を現したVWビートル。当時の価格で、スタンダードが74万円に、デラックスが80万円。大卒の初任給は7,650円という時代でした。かつて「結婚指輪は給与の3ヶ月分」というキャッチコピーが一斉を風靡したのが1970年代。当時のVWビートルの価格は、当時の大卒の初任給の「約9年分」に相当します。
ちなみに、2015年の大卒の初任給は上場企業の平均初任給は20万7450円とのことです。先日、日本で発売が開始された「マクラーレン540C」が2,188万円。当時のVWビートルを新車で買う行為を現代に置き換えると、新卒の社会人の方がマクラーレンのエントリーモデルを手に入れようとすることと同じなのです。当時の輸入車は、いま以上に「特別なひとが乗る特別なクルマ」だったと改めて実感します。
新旧VWビートルの2ショット。21世紀の日本にタイムスリップしてきたVWビートルにとって、末裔にあたる最新モデルたちはどのように映るのでしょうか?
こちらのVWビートルも、現代においてはもはやクラシックカーの領域。「日本における輸入車の生き証人(車)」として、大切に保存されていくに違いありません。将来、日本にドイツのHナンバーのような制度が施行されたら、真っ先に取得してほしい1台といえそうです。
[ライター/CL編集部・江上透 カメラ/ドイツ駐在員・江上透]
このクルマは、H(ヒストリーナンバー/H=Historisch)の意味をもつ「Hナンバー」ではありませんが、初期モデルはこのナンバーを冠する資格を有しているのです。改めて、隔世の感を禁じ得ません。カレントライフでもたびたび取りあげていますが、ドイツは古いクルマを大切にする文化があります。日本のように中古車を乗っている、というイメージではなく「こだわって乗っているのがカッコイイ」というイメージが日本より強いのです。
(編集部追記:当記事は過去配信した記事の改定版です)
今から四半世紀前、まさにバブル絶頂期。日本の路上にはW126が溢れていました。それも、最上級モデルの560SELが大多数だったように思います。
20数年前、ある輸入車のイベントと同時開催で中古車の展示即売会が開かれていました。メインはドイツ車。いまのように、メルセデス・ベンツ・コネクションでどうぞお気軽に試乗してください、という時代ではありません。どのクルマもきっちり施錠されているのが当たり前。そのなかで展示販売されていた、560SECの鍵が掛かっていなかったのです。
おそるおそる左側のドアを開け、運転席に乗り込んでみました。日本車では味わったことのないドアを閉めたときの手応え、反力の強い座面と分厚い本革のシート。これがメルセデス・ベンツなんだ!感動に浸っていたまさにそのとき、警備員のおじさんに見つかりこっぴどく叱られましたが…。あの感動は、いまもはっきりと憶えています。
あれほど街に溢れていたW126は、モデルチェンジを重ねると同時に淘汰が進み、海外へ旅立ったものや、既にスクラップとなってしまった個体もあります。反面、日本国内に残ったコンディションの良いW126は希少価値があるために、プレミア価格がつき始めています。
現代のSクラスのようにハイテク装備満載ではありませんが、この時代のモデルでしか味わえない世界があるのも、また事実です。この年代のメルセデスは、Hナンバー云々ぬきに、ドイツ本国はもちろん、日本でも大切に乗り継ぎたい1台といえます。もし、街中で見掛ける機会があったら、その佇まいを眺めてみてください。当時は大きいと思っていたW126が、意外なほどすっきりしているように映るかもしれません。
また、Hナンバーが似合うゴルフIカブリオレの画像もドイツから送られてきました。最近では、日本では、めったに見掛けることがなくなってきたゴルフI。さらにカブリオレとなると…何台くらい日本に存在するのでしょうか?
この個体、GTI仕様にドレスアップされたカブリオレです。ホイールは、当時のVW車のドレスアップにはお約束ともいえる”ATS社”のアルミホイール。ローダウンされ、マフラーも交換されているようです。国は違えど、クルマ好き(と勝手に断定してしまいますが、間違いなさそうです)のやることは万国共通なのでしょうか。
日本には正規輸入されていませんが、ゴルフ6(先代モデル)から、GTIにもカブリオレが設定されるようになりました(しかも、ゴルフRにまで!)現行モデルにあたる、ゴルフ7カブリオレの登場もそろそろでしょうか?
モデルによっては、外装は新しくても中身は先代モデルということもしばしばありました。しかし「メルセデスやBMWのオープンだと角が立つけれど、ゴルフなら問題ない」という、日本の世間体とあまり変わらなない風潮がドイツにもあります。そういった方のニーズにぴったり収まるのがゴルフカブリオレなのかもしれません。
最後になりますが、VWビートル カブリオレの画像もご紹介します。日本にも熱狂的なVWビートルファンがいらっしゃるかと思います。Hナンバーが誇らしいですね。
2015年5月、創立100周年を迎えたヤナセ。そのヤナセで長いあいだ保管されていたという、VWビートルの存在をご存知でしょうか?ダークブルーに塗られたこの個体は、1952年に日本上陸を果たした4台のなかの1台とされています。
このビートル、去る2014年11月にザ・プリンス パークタワー東京で開催された「ヤナセ・ハイグレードフェア」でお披露目するべく、レストアが施されました。
レストアといっても、すべてのパーツを新品に交換するような「工場出荷状態」に戻すわけではありません。レストアの際に再塗装こそされていますが、内装や各パーツは、できる限り当時のものをそのまま流用しているそうです。
60数年のときを経て、再び姿を現したVWビートル。当時の価格で、スタンダードが74万円に、デラックスが80万円。大卒の初任給は7,650円という時代でした。かつて「結婚指輪は給与の3ヶ月分」というキャッチコピーが一斉を風靡したのが1970年代。当時のVWビートルの価格は、当時の大卒の初任給の「約9年分」に相当します。
ちなみに、2015年の大卒の初任給は上場企業の平均初任給は20万7450円とのことです。先日、日本で発売が開始された「マクラーレン540C」が2,188万円。当時のVWビートルを新車で買う行為を現代に置き換えると、新卒の社会人の方がマクラーレンのエントリーモデルを手に入れようとすることと同じなのです。当時の輸入車は、いま以上に「特別なひとが乗る特別なクルマ」だったと改めて実感します。
新旧VWビートルの2ショット。21世紀の日本にタイムスリップしてきたVWビートルにとって、末裔にあたる最新モデルたちはどのように映るのでしょうか?
こちらのVWビートルも、現代においてはもはやクラシックカーの領域。「日本における輸入車の生き証人(車)」として、大切に保存されていくに違いありません。将来、日本にドイツのHナンバーのような制度が施行されたら、真っ先に取得してほしい1台といえそうです。
[ライター/CL編集部・江上透 カメラ/ドイツ駐在員・江上透]