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オーナーインタビュー

更新2018.04.26

五速ミッション「ホンダS800」は現代のスポーツカーも顔負け!オーナー岡本祥太さんにインタビュー

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小嶋あきら

ホンダS800の周りには、スポーツカーが憧れだった時代の空気がいまも漂っている気がします。軽量コンパクトな車体、800ccで70馬力を発生するオートバイのようなエンジン、そしてフロントガラスの向こうに昭和40年代のハイウェイが見えそうなコックピットの佇まい。



どこをどう切り取っても楽しさ以外の要素が見当たらない、そんなS800のオーナー岡本祥太さんにお話をうかがいました。

──S800との馴れ初めは?



▲岡本さんと、二歳年上のS800

実はこのS800、年上なんですよね。70年式で僕が72年なので。それまで乗っていたのはスターレットやジムニー、会社に入ってからはRX-7に乗ってました。あの頃はバブルの名残が残っていて、仲間内でもレースしてる人がいたり、ジェットスキーで遊んだりと。そんな人達と遊んでるうちに、川重OBでJETSKI屋のFさんと知り合いました。

カワサキのエンジニアでありながら大のホンダ党で、現役時代からホンダのバイクや車を乗り継いでいて、とくにホンダS800に関してはサラリーマン時代から自宅ガレージでフルレストアをする程思い入れが強く、独立後もJETSKIの店なのに何故か店内に車があるちょっと変わった店でした。


▲四気筒800cc、四連キャブレター

最初はJETSKIの客として行っていたんですが、そのうち旧車イベントとかにRX-7で付いて行くようになり、次第に旧車の魅力に引き込まれていきました。当時、何故か店内でトヨタS800(ヨタハチ)のレストア中で、その作業を手伝ううちにレストア途中のそのヨタハチをフルローンで買ってしまいました(笑)。でも完成間近にちょっと試乗してみたら、ボディーが初期のモノコックですから、段差を乗り越える度にボディーがよれて、フレームのあるホンダSと比べるとこれがぜんぜん気に入らなかったんです。エンジンは空冷2発で好きだったんですが…。どうしよう、って言ってたらFさんが一言「ほなお前、エスハチにしとけや」って(笑)。


▲コンパクトさと軽快さが際立つリアビュー

話は前後するんですが、そのちょっと前。僕が乗ってたRX-7が欲しいっていう先輩がいたんです。実はその人ロータスヨーロッパを所有していたものの、いろいろと手を焼いてたんですね。そこで何故かRX-7とロータスヨーロッパを交換ってことになって。最初はそこそこ機嫌良く動いてたのですが、とにかく窮屈で、調子が悪くなると縦置きミッドシップは整備性が悪くて、リンケージが長い分シフトフィールが悪くて…。こらえらいもんと交換してもうたって…。

当時名古屋にガレージスズキという、もう日本にあるSの半分はそこを通るというくらいの専門店があったんです。そこにいま乗ってるS800が在庫にあって。ロータスヨーロッパとヨタハチを下取りに出して、更に追い金して乗り換えたんです。

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──最初、乗ってみてどんな感じでした?


運転してみて、とにかく楽しかったです。最初は左ハンドルに戸惑いましたが、車が小さいのですぐ慣れました。時代を感じさせるとか、特有の癖があるとか、そういうのはまったく無かったです。乗りやすいクルマです。ぜんぜん普通ですよ。



ただ、よく壊れましたね。乗ると壊れる、みたいな。だんだん手を入れていって、そういうことは減ってきましたけど。この車はよっぽど調子のいい車でない限り、近くに触れる人が居ないとまず挫折します。

僕が乗りはじめた十九年前は、ヤフオクの最初の頃で。当時はSの部品も今ほど高価でなく、もうダボハゼのように部品を買ってましたね。だから部品は多少ストックしてます。Sの部品は機能美というか部品だけでも美しいです。

Fさんの影響で当時から周りにS乗りの人も多くて、みんなでよくミーティングしたりツーリングに行ったりしてました。当時から仲間内では僕が一番若かったんで、皆さんによくかわいがってもらいましたね。

──手を入れたところはありますか?


ほぼ全部ですよね。外装はオリジナルがウエットサンドっていう色なんですがオリジナルより少しメタリックを多めにした色に塗り替えて、外装色に合わせて、最初は真っ黒だった内装もレッドに張り替えました。電気系に一番影響するメインハーネスも交換したし。エンジンはオーバーホール後、ノントラブルです。ブレーキも現代の車に合わせて強化してます。

更にミッションは五速を載せてます。Sで五速ミッションは基本的にはなくて、ホンダが昔レースやってた頃には有ったんですけど、市販車には無い。でも当時大阪でレースしてた人たちの有志が集まって、二十五基だけ自分たちで造ったんです。Sの五速って、四速にひとつ足してるんですよね。バックの裏側に。だからローのストロークがものすごく短くて、ミッションケースも砂型から起こして延長してます。


▲五速の刻印がこのSの特別さを主張する

世の中に二十五基だけのシンクロ入りの五速ミッションがたまたま出てきて。実は僕その頃、カワサキのマッハⅢ(二輪車)が欲しくて貯金してたんですね。でもやっぱり高いなあ、なんて思ってたら「五速ミッションが有るよ」って話が来て、ホンマですか?って、マッハ買うつもりがそのままそっちへ(笑)

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──予算抜きで欲しいクルマ、ベスト3を教えてください


うーん、触る楽しみが欲しいから、最近たまに見るT型フォードのホットロッドみたいなん、ああいうのはちょっと乗ってみたいかなあ。予算抜きやと、やっぱり空冷ポルシェかなあ。993のターボとかRSとか。でも、現実的に考えて最近興味あるのは914かな。乗ったら楽しそうでしょ。なんかポルシェはちょっと乗ってみたい。

──最後に、S800の魅力とはなんでしょうか?




魅力を語るとみんな絶対欲しなるからなぁ(笑)。

まずサイズ、乗って楽しむ、磨いて楽しむ、触って楽しむ、どれも完璧なんです。さらにいうと、軽くてよく回るエンジンのおかげで結構速いんですよSは。筑波のコースで1分10秒くらいのも居ますよ。現代のスポーツカーも顔負けです。それにSはシャーシが有るんで乗り味がダイレクトです。この車もそろそろシャーシをリフレッシュしようと思ってます。それできちんと若返るのがいいですよね。

岡本さんとS800の素敵な関係はこれからもずっと続きそうです。

[ライター・画像/小嶋 あきら]

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