ライフスタイル
更新2017.06.26
進む2極化?輸入車オーナーはステータスか、それとも趣味か
松村 透
横浜のみなとみらいという場所柄もあるかと思いますが、大型ショッピングモールの駐車スペースに停められているクルマの多くが輸入車でした。やはりドイツ車が多かった気がします。JAIA(日本自動車輸入組合)の統計によると、2015年の輸入乗用車の新規登録台数は313,081台とのことです。これだけではピンとこないかもしれないので、「一挙にガイシャがやってきた」ような気がするバブルの頃とその前後で比較してみると…。
1986年〜1996年の輸入乗用車の新規登録台数(JAIAより引用)
1986年: 68,357台
1987年: 97,750台
1988年:133,583台
1989年:180,424台
1990年:221,706台
1991年:197,184台
1992年:181,417台
1993年:195,090台
1994年:276,161台
1995年:362,265台
1996年:393,392台
バブル崩壊後の方が登録台数が多いのですね。これをグラフで見るとより分かります。
出典:http://www.jaia-jp.org/
直近だと、リーマン・ショックの影響による落ち込みの状況がはっきりと現れています。私の周囲で、また各輸入車のディーラーの方も、リーマン・ショック直後は「本来であれば、リーマン・ショックの影響を受けないような方でも買い控えをされていて頭を抱えている」と伺いました。これは3.11直後も同様でした。
その後は回復しつつありますが、来年、消費税10%が施行されたら、再び販売台数の落ち込みが予想されます。とはいえ、ここ数年でも、毎年30万台以上の輸入車が新規登録されているのです。裾野が広がった分、新たなユーザー層が増えるのは必然です。そうなると色々なことが起こります。
エントリークラスと最上級クラスのユーザーをどう棲み分けるか
これはあるディーラーで本当にあった話しなのですが、長年、最上級モデルを乗り継いでくれているユーザーがいました。店舗にとっても大切なロイヤルカスタマーです。自分がディーラーにクルマを持ち込むなんて以ての外。セールスなり、スタッフが自宅までやってきて、納引き(納車引き取り)をするのが当然だろうというお考えの方です。
それがあるとき、これまでにない低価格帯のエントリーモデルを販売することになり、これを機に納引きを廃止して、お客様にご来店いただこうという決定が下されました。この話を、前述のロイヤルカスタマーのユーザーにも伝えます。しかし、そのユーザーは激怒。別のメーカーの最上級モデルに買い替えてしまったそうです。
まったく違うカテゴリーのモデルを販売することで起こる変化
これもある輸入車メーカーの正規ディーラーで起こったことです。既存のラインナップにはなかったSUVモデルを販売することになり、既存のユーザーとは異なるセールストークや販売手法で売り込みを掛けます。それ自体は成功だったのですが、フェアのたびに商談テーブルにどっかと座り、セールスレディがそれとなく担当セールス氏に耳打ちしていも長話し…。既存のユーザーが来店してもまったく話しができず、仕方なくそのまま帰宅されたそうです。
そのセールス氏があとでフォローアップの電話を掛けたところ、「フェアのときは避けて、ゆっくり話せる平日に来るようにするよ」と逆に気遣ってもらったのだとか。客層によってディーラーの雰囲気も変わりますし、新旧ユーザーの共存共栄は、ディーラーにとっても悩ましい問題のようです。
日本車から輸入車へ乗り替え。想定外なことも起こるわけで…
輸入車=高価格帯車という図式が当てはまらなくなってきた昨今、思い切って輸入車に乗ってみようというユーザーも現れます。新車で購入すれば、3年間(有償サービスで延長保証を加えれば5年間)はメンテナンスフリーといった付帯サービスを掲げているメーカーも少なくありません。
それなら安心…ということで無事に契約、納車となりました。しかし、輸入車にありがちなマイナートラブルがあることをセールス氏から知らされていなかったのでしょうか。警告灯が点灯したかと思えば、次に乗ったら消えていたり、純正カーナビの調子が今ひとつだったり。最近の日本車では皆無といってよいトラブルに悩まされ、初回車検のときに日本車に乗り換えたしまったそうです。こういうマイナートラブルに遭遇したとき、日本車の凄さを改めて思い知らされます。
輸入車オーナーの2極化?求めるのはステータスかそれとも趣味か
新車に限れば、いまや100万円台から上は数億円まで。クラシックカーに目を向ければ、それこそ青天井に近い世界です。先日、日曜日の早朝に横浜の大黒PAに行く機会がありました。行ったことのある方はご存知だと思いますが、天気の良い日曜日の早朝には、国内外、新旧問わず、ありとあらゆるクルマたちが集まってきます。もはや、ちょっとしたイベントが開催されているような規模です。
暗黙の了解で駐車スペースが決まっているのか、ボディラッピングなどのカスタマイズが施されたスーパーカーの一団と、クラシカルなクルマが集まっているエリアと、特定の車種が固まっているエリア…。不思議なくらい見事に棲み分けができていました。
こうしてひとつの場所に集まったさまざまなクルマを眺めていると、「オーナーがクルマに対して何を求めているか」が見えてくるから不思議です。本当に大事に乗っているのか、こうして仲間と集まって他愛のない話しをするのが楽しいのか、自慢の愛車を熱烈アピールしたいのか…。
もはやクルマと人種のるつぼと化したこの日の大黒PAでしたが、外国人の方が、カメラ片手に熱心に撮影(動画のようです)していたのが印象的でした。
ステータス性を求めるユーザーは、既成概念に囚われず、日本独自の文化を形成しているようです。その一方で趣味性を求めるユーザーは、いまや海外から引き合いがくるほど素晴らしいコンディションを保っている…。いまのところは、それぞれが相容れない関係なのかもしれませんが、日本の輸入車事情は、世界的に見ても「かなり尖りつつある」独特の文化なのかもしれません。
[ライター/江上透]