ライフスタイル
更新2016.09.14
クルマに興味がない我が子でも、親父の気持ちは理解していると信じたい
松村 透
▼「いつか」は20年経っても訪れないが「さよなら」は明日やってくる
https://www.gaisha-oh.com/soken/long-good-bye/
以下、この記事からの抜粋です。
以前「ポルシェ・ショック」で本当に人生が変わるのかという記事で書いたことがあるのですが、筆者がポルシェに触れるきっかけとなった地元の酒屋の社長さんの体調が思わしくなく、非常に厳しい状況にあります。
先日お会いしたときは、筆者が訪ねてきてテンションが上がったからと、久しぶりに愛車であるポルシェ911カレラS(997)のエンジンを掛けていました。体力的にクルマを動かすことができないため、ガレージのなかでタイヤの変形防止のために数メートル移動したのみ。それでも満足そうでした。社長さん自身が自覚しているかは分かりませんが、(ご家族の話だと)もしかしたら、これが愛車との最後の触れ合いになるかもしれません。
…これが現実となってしまいました。
「さよなら」は明日ではなく、本当に突然やってきた
「さよなら」は明日ではなく、本当に突然やってきたのです。まだ60代前半という若さでした。この記事をまとめているいまでも、まだ気持ちの整理がついていません。奇しくも、社長さんが亡くなったのは9月12日未明とのことでした。愛車のポルシェ911カレラS(997)でドライブする夢でも観ながら旅立っていったのでしょうか。筆者も、オーナーである社長さんが入院中のあいだはガレージに立ち寄り、911のエンジンを掛けて暖機運転したり、簡単な洗車などしていました。
この社長さんと知り合ってから20数年経ちますが、筆者が愛車のエンジンを掛けたのはこのときが初めてです。あまりにきれいすぎて、おいそれと触れないオーラがクルマ全体から発せられているのです。ショールームの方に「展示車よりもきれいで恐ろしくて触れない」といわしめるほど、常に美しい状態に保たれていました。まさに自他ともに認める「ミントコンディション」だったのです。
病室にポルシェのカタログと鍵を置いていたほど、愛車を溺愛していた社長さん
病院へお見舞いに行くと、ベッドの傍らにポルシェのカタログが何冊も置かれていました。このカタログを見ることが何よりの気分転換になっていたようです。ご家族の方に伺ったのですが、愛車の鍵も手元に置いてあったそうです。体調が思わしくないときも、きっと自分がまた愛車のステアリング握ってドライブすることを励みに、治療に専念していたに違いありません。
旅立っていった社長さんも、溺愛していた911の今後が気がかりなのは間違いありません。しかし、息子さんはお父さん(社長さん)ほどには熱心なクルマ好きではないそうです。とはいえ、お父さんの意思を継いで911を乗り継ぐはずですし、またそうであって欲しいと願っています。
予想外に多い「子どもがクルマに興味がない」と嘆くお父さんたち
最近、旧車オーナー(主に日本車)さんを取材する機会が多く、当時憧れていたクルマを手にれたという、アラフィフ世代の方が中心です。
既婚者であれば、お子さんもそれなりの年齢になっている世代です。先日、1983年式のある日本車を所有しているオーナーさんを取材したときには「そろそろウチの倅も運転免許が取れる年齢なんだけど、お金出すといっても教習所に行かないといってます。信じられますか?」という話しになり、「僕が息子なら、涙流して喜びますよ」と伝えたところ、(取材そっちのけで)話しが脱線して飲み屋の会話状態になってしまいました…。
※この日本車のオーナーさんの取材記事を息子さんが読んでくれるかもしれないと思い、タイトルにも「愛車を息子へ託したい」という文言を入れました。
子どもに話せば分かってもらえる(かもしれない?)お父さんのクルマ趣味
では、お子さんの側はどうなのでしょうか?筆者の周りにいる20代前半の男女数人に聞いてみました。狭い範囲ではありますが、意外にも親父のクルマ愛をスルーしているようで、割と気に掛けている傾向が見られました。要約すると…。
●息子側
・クルマには興味がないけど、親父がそれほど大事にしているものなら乗り継いでもいいと思う
・いってくれれば、多少なら付き合うのに(どっぷりは嫌だけど)
・のめり込む趣味があって逆に羨ましいと思う
●娘側
・時間とお金がもったいないと思うけど、モノを大事にするのはいいことだと思う
・面と向かってはいわないけど、クルマを溺愛していることは理解している(つもり)
・腐女子の友だちからオタクについて熱い説明を受けたので、パパも似たようなものかなと…
親子間だとお互い照れくさいのもあって、面と向かっていいにくいのかもしれません。奥さんはさておき、お子さんたちの方が「親父の至福の時間だろうから」と気を遣って距離を置いている可能性もあります。
すべての親子がこのようにはならないと思いますが、「いまの若いのはー」なんて飲み屋でボヤいている光景が恥ずかしくなるほど素直でしっかりしている印象です。何かの折に「親父に何かあったらこのクルマを頼む」と伝えてみると、予想外の答えが返ってくるかもしれません。