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ドイツ現地レポ

更新2021.03.18

ドイツでは約25台に1台がオープンカー。しかし市場は急速に減少中。その理由とは?

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守屋 健

3月に入り、暖かな日と凍えるように寒い日、雨と晴天がめまぐるしく入れ替わる時期に突入した北ドイツ。筆者の住むベルリンでは、天気のよい日にオープンカーの幌を開け放って、にこやかな表情でドライブする人も徐々に増えてきました。

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オープンカーといえば、つい先日ホンダ・S660が2022年3月に生産終了となることが発表されたばかり。日本に比べオープンカーのラインナップが充実しているドイツでも、オープンモデル製造中止の流れは着実に押し寄せています。ドイツの自動車メディアは「オープンカーは今や絶滅に瀕している」と喧伝し、メルセデス・ベンツ・SLクラスのような伝統的なモデルすら続々と姿を消しているのが実情です。

今回のドイツ現地レポは、なぜドイツではもともとオープンカーの比率が高いのかを解説しつつ、「瀕死の状態」とまでいわれるドイツの今のオープンカー事情について紹介します。

■およそ25台に1台がオープンカー


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ドイツで生活していると、特に春から秋にかけて、数多くのオープンカーを見かけます。体感では日本よりもはるかに多くのオープンカーが走っているように思えるのですが、全乗用車に占めるオープンカーの比率はどのくらいなのでしょうか。

ADAC(全ドイツ自動車クラブ。日本のJAFに相当するロードサービス組織)によると、ドイツにおける2020年3月時点での全乗用車におけるオープンカーの割合は3.7%(統計はCheck24調べ)でした。

もっともオープンカーの割合が多かった州はハンブルクで5.5%、2位がラインラント・プファルツの4.2%、3位に同率でバーデン・ヴュルテンベルク、バイエルン、ノルトライン・ヴェストファーレン、シュレスヴィヒ・ホルシュタインの4州がそれぞれ4.1%で続いています。

逆に最も少なかったのはザクセンとチューリンゲンで、それぞれ1.6%。筆者が住んでいるベルリンもドイツの平均より低く、2.8%にとどまっています。興味深いのは、旧東ドイツの地域の方がオープンカーの比率が低い、という点です。この理由については後述します。

ドイツでのオープンカーの比率が高い理由は、次の3つが考えられます。

・ドイツの気候がオープンカーに適している
・ドイツ人の多くは、日焼けした肌を好意的に捉えている
・季節ナンバー制度の存在やそもそも車庫証明が存在しないなど、クルマを2台持ちするハードルが低い

次の段落で、詳しく見ていくことにしましょう。

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■暖かい時期に太陽の光をたくさん浴びたい!


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ドイツの冬は長く寒さも厳しいですが、春から秋にかけては逆に日照時間が長く、気温は真夏でも35度を超えることはほとんどありません。また年間を通して乾燥しており、日本のようなジメジメとした梅雨は存在しません。夏でもカラッとした爽やかな陽気で、日中暑くても朝晩は気温が下がるため、冷房設備のない古い建物も多く見かけます。雨が降っても長時間降り続くことは稀なので、オープンカーの幌を開けられる時間や時期が非常に長い、というのがドイツの気候の特徴です。

日本でオープンカーに乗る、というと日焼けを気にされる方も多い印象ですが、ドイツではそもそも日焼けした肌についての認識が異なります。ドイツに住む多くの人々にとって、小麦色に日焼けした肌は「健康的で美しい」ものであり、休暇をリゾートでしっかり満喫した証です。つまり、こんがり焼けた肌はリッチで勝ち組のイメージで、逆に年中真っ白な肌はうとまれがちな傾向にあります。

冬の日照時間が少ないせいか「暖かい時期に太陽の光をたくさん浴びておこう!」というのがドイツにおける多くの人々の共通認識です。レストランやカフェなどで、野外のテラス席が満席なのに店内はガラガラ、なんてことは日常茶飯事。散歩、日光浴、BBQ、海水浴など、野外での遊びが大好きなドイツの人々が、太陽の光を求めてオープンカーに乗るのはごく自然なことといえるでしょう。

オープンカーを所有するときに気になるのが、クルマを2台持ちするときの維持費です。ドイツでは季節ナンバー制度といって、乗る期間をあらかじめ限定したナンバープレートを発行する制度があります。仮に冬の間はオープンカーに乗らないとして「3月〜10月」の季節ナンバーを申請した場合、11月〜2月分の税金や保険料が割引される、というものです。また、ドイツでは車庫証明書という制度そのものが存在しませんし、駐車場にかかる費用も日本に比べると安価です。車検費用もそれほど高くならない場合が多く、クルマを2台持ちするハードル自体、ドイツは低いといえるでしょう。

しかしながら、旧西ドイツと旧東ドイツの間では今でも経済格差が存在しています。旧東ドイツだった地域では、クルマを2台持ちすることが可能な世帯が旧西ドイツに比べると少ないため、先述したように「旧東ドイツだった地域の方がオープンカーの比率が低い」という結果になっていると考えられます。

■ドイツの主要メーカーではオープンカーの生産終了が相次ぐ


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2021年に入り、ドイツにおけるオープンカーの市場は急激に減少しています。主要メーカーが次々にオープンカーの生産終了を発表しているからです。これはドイツのみならず、世界的な傾向といってもいいのかもしれません。

メルセデス・ベンツは伝統あるSLクラスや、Sクラス・クーぺの生産を終了。2021年3月現在ラインナップに残っているのはCクラスとEクラスのカブリオレ、AMG GTのロードスターのみです。BMWは2シリーズ・4シリーズ・8シリーズのカブリオレ、Z4と比較的多く選択肢を残していますが、アウディはわずかにA5(およびS5)のカブリオレのみ。フォルクスワーゲンはSUVであるT-Rocのカブリオレを残すだけで、ゴルフ・カブリオレのような長い歴史を持つモデルはすでに撤退しています。

SUVが依然好調な売れ行きを見せていること、そしてEV化に向けてリソースを集中させるために、多くのオープンカーが生産終了となってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。オープンカーは以前よりも高級志向が強まり、プレミアムブランド(ポルシェ、ジャガー、レクサス、ベントレー、マクラーレン、ランボルギーニ、フェラーリなど)のラインナップには残っているものの、エントリークラスからミドルクラスの選択肢は極端に減ってしまいました。

フィアット・500カブリオ、ミニ・カブリオやスマート・フォーツー・EQカブリオは、ドイツで最も低価格帯のオープンカーとして人気がありますが、比較的安価なオープンスポーツカーはフィアット・124スパイダーが生産を終えた今、マツダ・ロードスターのみとなってしまいました。

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■確かに現時点ではオープンカーは減少した。しかし未来は明るいと信じたい。その理由は?

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しかし、ドイツのオープンカー愛好家たちは希望を失っていません。近年ソフトトップに用いられるファブリックの性能が飛躍的に向上し、耐候性・耐久性・保温性がメタルトップに遜色ないレベルにまで進歩したことについて「来たるEV時代に向けて、軽量かつデザインも美しいソフトトップ・オープンカーが復権する準備は整った」と前向きに捉えています。メタルトップのオープンカーはトランクルームをほぼ占拠してしまうことから、古くからのソフトトップを愛するドイツのオープンカー・ファンからは不評を買っていたのです。

かつて初代マツダ・ロードスターは、ライトウェイト・オープンスポーツカーの楽しさを世界に再認識させ、他社を巻き込んでの大ブームを引き起こしました。EVシフト完了後に、クルマは再び「太陽光を浴びながら運転する楽しさ」を取り戻せるのでしょうか。個人的にはぜひ、革新的なEV・オープンスポーツカーの登場を期待しています!

[ライター・守屋健]

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