ドイツ現地レポ
更新2015.12.09
ビルの改修工事は2〜3年が当たり前?景観に厳しいドイツでの広告の使い方とは
NAO
こちらの写真は、ドイツのある街で撮影したものです。ビルの工事現場の防音シートの上に映画作品の広告が見えますね。防音シートもそのままではなく、そのビルの外観をハリボテにしたもの。このハリボテ付の工事現場の風景はドイツではよく目にしますし、最近はこの上にさらに大型広告を貼りだしたりなどすることも多くなりました。このようにするには、ドイツの景観保護の考え方に関係があります。今回はドイツでの広告媒体の使い方に関して少しご紹介します。
古い街並みを守るドイツの「景観保護法」
日本では京都や奈良のように古都の景観を守るため、一定以上の高さの高層建築を禁止したり、店舗の外観に派手な色を使用しないように定められていますが、ドイツにもこのような景観規制は存在します。ドイツは州によって条例などが異なるため、ドイツ全国というわけではありませんが、旧市街や重要文化財が多い街などにこの景観保護法は適用されており、特に南ドイツの街では美しい景観を保つために街ごとに屋根の色が統一されていたりします。
そのため、建物の修復工事にしてもブルーシートだけだと街の景観を損ねてしまうために、工事前または完成予定の建物をデザインしたハリボテで隠すのが一般的。これは特に有名な文化財の修復工事の際によく使われています。日本と比べるとドイツの工事期間は長く、ビルの改修工事にしても2~3年かかるのは当たり前で、教会や博物館になるとさらに長くなってしまいます。そんな中でも街の景色に違和感を与えないようにハリボテ風にしたり広告を掲載したりと工夫しており、ドイツ人の景観への配慮にさすがと感心します。
広告への規制が厳しいドイツ
そんな景観保護のためにもう一つ重要なのが広告規制です。ドイツの広告または看板に関しては、日本のように夜もネオンでギラギラさせたりすることはまずありません。それならばどう広告を載せるのかというと、バスや路面電車の停留所の側面に広告掲載スペースがあり、そこに企業や商品の広告が入ることが多いです。コンサートなどの催し物の広告(ポスターなど)は市が設置している広告塔にまとめて掲載されます。これは街の至るところに広告を散乱させないための規制であり、掲載するにも厳しいチェックがされるようです。筆者の住む街ドレスデンでは路面電車やタクシーに広告をラッピングして走らせているものも多く、何かと目に入りやすいのでこれはいい宣伝方法ですね。
ドレスデン市がバス停留所に載せた街の広告。この部分に様々な広告が定期的に入れ替わって掲載されます。
ベルリンやフランクフルトの都市となると、大企業も集まっているので、ユニークでスケールの大きい広告も目立ちますが、背景にうまく溶け込むように上手に工夫されており、決して街の景色を壊すことはありません。小さな街へ行ってみると、小道の間に店それぞれの特徴を表した看板が立ち並んでおり、いかにもドイツのメルヘンらしさを醸し出しています。
一つの街としての「まとまり」を大事にしているドイツ。だからこそ広告掲載にもあらゆる工夫をしています。今回ご紹介したのはほんの一部ですが、街をよく見ると他にも様々なアピールの仕方が見えてきます。ドイツの街並みは綺麗だといわれる理由は国や街のこういった景観を美しく保とうとする意識と努力のお陰なのでしょう。