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更新2016.06.21
フランクフルト・モーターショー(IAA)2015の職人芸なクルマたち
北沢 剛司
9月17日から27日にかけて開催された、第66回 IAA 2015 フランクフルト・モーターショー。読者の方々はすでにさまざまなニューモデルをご覧になっていることと思います。プラグインハイブリッド車とSUVが目立った今回のショーには、そのほかにもさまざまなクルマや面白いアイテムが展示されていました。今回は、ニュースメディアには載ってこないようなショーの様子をお伝えします。
フランクフルト・モーターショーの会場はあまりにも広大すぎて、1日ですべてを見てまわるのは不可能です。会場内には10棟以上のホールがあり、地元ドイツのメーカーはグループ内で独立したホールでの展示を行っています。なかでもメルセデス・ベンツはFesthalleと呼ばれるクラシカルな外観のホールを昔から使っています。
メルセデス・ベンツのホール内部は劇場のような巨大さで、クラシカルな外観とは対照的です。エスカレーターで一気に最上階まで上がり、回廊を下りながら一方通行で見学するスタイルとなっています。一般公開日には現行ラインアップのカタログが貰えるカウンターが設けられ、来場者は自分の好きな車種のカタログをオーダーしていました。私もC/E/S/SL/G/Mercedes-AMG GTのカタログをリクエストしたのですが、それぞれのボディバリエーションを入れてくれたため、腕が抜けそうなほどの冊数にビックリ!
おまけに純正のウィンドウウォッシャー液、ウィンドウクリーナー、ポリッシングクロス、ウィンドウクリーナークロス、それオフィシャルマガジンなどが紙袋に山ほど同梱されていました。この太っ腹な対応には来場者も大喜びです。
今回は「ブガッティ ビジョン グランツーリスモ」がセンセーショナルなデビューを果たしましたが、メルセデスのホール内にはメルセデスAMG Vision Gran Turismoの実物が展示されていました。「グランツーリスモ6」でプレイしているときは特に気にならなかったボディサイズも、実物を目の前にすると、そのボリューム感に圧倒されます。
ポルシェのブースで個人的に目を引いたのは、新型911でも電気自動車の「ミッションE」でもなく、このポルシェ935 Babyでした。ポルシェ・ミュージアムでしか見ることのできない貴重な車両がなんの囲いもなく展示されていて驚きました。
ポルシェ935 Babyは、排気量2L以下のクラスにエントリーするため1.4Lターボエンジンを搭載したレーシングマシン。新型のポルシェ911が従来の3.4Lおよび3.8L自然吸気エンジンから3.0Lツインターボエンジンにダウンサイジングしたことから、過去のエピソードを持ち出してきたものと思われます。
ポルシェ935 Babyはプレスデイ初日だけの展示で、2日目以降は新色のグラファイトブルーメタリックに塗られた新型ポルシェ911カレラに差し代えられてしまいました。思えば、かつての935 Babyも1977年にわずか2レースを走っただけで舞台を降りてしまったモデル。今回のIAAでも、まさに935 Babyらしい引き際を見せたのでした。
会期中に残念なニュースが入ったフォルクスワーゲンでしたが、プラグインハイブリッド・スポーツカーのゴルフGTEスポーツのスタイリングは注目の的。東京モーターショーでも見てみたいモデルです。
フォルクスワーゲンのブースで気になったのがこのアイテム。その名も「GTI ストローラー」です。ゴルフGTIデザインのジュニアシートは日本でも設定がありますが、こちらはVolkswagen Designがデザインを担当し、knorr-baby社が製造するフォルクスワーゲンの純正アクセサリー。ホイールリムやファブリックがGTIデザインとなっているのが特長で、乳児用と幼児用のシートを付け替えることができます。年末から販売開始予定で、価格は実に999ユーロ(約135,000円)!クルマとのペアルックはハードルが高いようで。
BMWグループは、展示エリアを取り囲むサーキットで「駆けぬける歓び」を体現しています。2009年には戦前のBMW 328 Mille Miglia ロードスターが爆音とともに会場内を走行し、ホール中がガス臭くなる珍事がありました。今回は写真のBMW i8をはじめ、Mモデルも快音とともに会場内をデモ走行。展示会場内をクルマが走りまわる姿は何度見ても新鮮です。
今年で創立50周年を迎えたアルピナのブースには、1981年式のB7 S ターボ クーペが展示されていました。330 psを発揮する3.5リッター直6ターボエンジンを搭載したこのモデルは、アルピナ限定モデルの第一号として製作されたもの。最新の限定モデル「B6 Bi-Turbo EDITION 50 クーペ」に対応した展示に思わず目を引かれました。
アルピナのブースでは、同社の縫いの職人がALPINAロゴの型押しレザーで特製アクセサリーを製作していました。こうした職人の縫製を見ていると、手作業で1台1台丁寧につくられる同社の製造工程が想像できます。
プレミアムDセグメントとして登場したアルファロメオ・ジュリア。展示車両にはブレーキからスポイラー、インテリア類まで、カーボンがふんだんに使われていて驚きました。価格はなんと1,000万円クラスになるようで当然といえば当然ですが、マセラティ・ギブリより高価格になるのは避けたいですよね。スポーツカーの「4C」もそうですが、従来のアルファロメオ・オーナーが買える値段でなくなりつつあるのが気になります。
アルファロメオ・ジュリアとともにさりげなく展示されていたカーボンホイールのプロトタイプ。ケーニグセグなどの一部のスーパースポーツが採用するカーボンホイールがDセグメントにまで普及するのも時間の問題かもしれませんね。
アルファロメオのブースには、新型ジュリアとともに、ジュリアTZ2とジュリアTIスーパーも展示されていました。今回のIAAでは、最新モデルとともに、ルーツとなった往年の名車を一緒に展示する例が数多く見られました。
DSのブースで驚異のニューモデル発見!この「BABY DS」は、メーカー自ら「DSレンジの最新モデル」と謳う1/3スケールの電動カー。1.37mの全長ながら、フロントからサイドスクリーンまでのびるクロームのサーベルをはじめ、DS 5の特徴的なスタイリングを見事に再現しています。
インテリアもウォッチストラップデザインのクラブレザーシート、手縫いのステッチが施されたレザーステアリングなど、本気度満点。この突き抜けっぷりは、DSブランドでなければ不可能でしょう。
Sクラスのストレッチリムジンで知られるドイツのトラスコ社は、会場に防弾仕様のメルセデスGクラスとSクラスを持ち込んでいました。G 63 AMGをベースにした写真の展示車両は、ホイールベースを58cm延長したもの。リアドアは18cm長く、ラゲッジスペースは40cm延長していて、前席とのパーティション部分には巨大なスクリーンが鎮座していました。
ブラバスが手がけるクラシック・メルセデスのレストア部門が「BRABUS CLASSIC」。メルセデス・ベンツ クラシックの公式パートナーでもある彼らが今回出品したのは、600プルマン、300 SLロードスター、W113の280 SL、そしてW111の280 SEカブリオレ。新車レベルに仕上がったレストア車両には2年間走行距離無制限の保証が付けられていて、完璧な作業に対する自信が伺えます。
GPSを利用した車両追跡システムを手がけるebi-tec GmbHのブースで、メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューション2を発見!新型車以上に熱心に写真を撮っていたため、出展者の社長から話しかけられてしまいました。このクルマのオーナーでもある社長はかなりの好き者らしく、自社製品の説明はそっちのけでエボ2話で盛り上がってしまいました。
世界最大規模のモーターショーにふさわしい内容だった今回のフランクフルト・モーターショー。自動車の今後を占う上で重要な存在となっているのはもちろんのこと、新型車から旧車まで幅広く楽しめる展示内容でした。
もしIAAに来場する機会があるときには、ホールごとに効率よくまわることをお勧めします。会場の端から端までは10分近く歩くため、むやみに1日中歩いていると足の疲労度が極限に達してしまうからです。もちろん、履き慣れた靴で行くことを忘れずに。
[ライター・カメラ/北沢剛司]
フランクフルト・モーターショーの会場はあまりにも広大すぎて、1日ですべてを見てまわるのは不可能です。会場内には10棟以上のホールがあり、地元ドイツのメーカーはグループ内で独立したホールでの展示を行っています。なかでもメルセデス・ベンツはFesthalleと呼ばれるクラシカルな外観のホールを昔から使っています。
メルセデス・ベンツのホール内部は劇場のような巨大さで、クラシカルな外観とは対照的です。エスカレーターで一気に最上階まで上がり、回廊を下りながら一方通行で見学するスタイルとなっています。一般公開日には現行ラインアップのカタログが貰えるカウンターが設けられ、来場者は自分の好きな車種のカタログをオーダーしていました。私もC/E/S/SL/G/Mercedes-AMG GTのカタログをリクエストしたのですが、それぞれのボディバリエーションを入れてくれたため、腕が抜けそうなほどの冊数にビックリ!
おまけに純正のウィンドウウォッシャー液、ウィンドウクリーナー、ポリッシングクロス、ウィンドウクリーナークロス、それオフィシャルマガジンなどが紙袋に山ほど同梱されていました。この太っ腹な対応には来場者も大喜びです。
今回は「ブガッティ ビジョン グランツーリスモ」がセンセーショナルなデビューを果たしましたが、メルセデスのホール内にはメルセデスAMG Vision Gran Turismoの実物が展示されていました。「グランツーリスモ6」でプレイしているときは特に気にならなかったボディサイズも、実物を目の前にすると、そのボリューム感に圧倒されます。
ポルシェのブースで個人的に目を引いたのは、新型911でも電気自動車の「ミッションE」でもなく、このポルシェ935 Babyでした。ポルシェ・ミュージアムでしか見ることのできない貴重な車両がなんの囲いもなく展示されていて驚きました。
ポルシェ935 Babyは、排気量2L以下のクラスにエントリーするため1.4Lターボエンジンを搭載したレーシングマシン。新型のポルシェ911が従来の3.4Lおよび3.8L自然吸気エンジンから3.0Lツインターボエンジンにダウンサイジングしたことから、過去のエピソードを持ち出してきたものと思われます。
ポルシェ935 Babyはプレスデイ初日だけの展示で、2日目以降は新色のグラファイトブルーメタリックに塗られた新型ポルシェ911カレラに差し代えられてしまいました。思えば、かつての935 Babyも1977年にわずか2レースを走っただけで舞台を降りてしまったモデル。今回のIAAでも、まさに935 Babyらしい引き際を見せたのでした。
会期中に残念なニュースが入ったフォルクスワーゲンでしたが、プラグインハイブリッド・スポーツカーのゴルフGTEスポーツのスタイリングは注目の的。東京モーターショーでも見てみたいモデルです。
フォルクスワーゲンのブースで気になったのがこのアイテム。その名も「GTI ストローラー」です。ゴルフGTIデザインのジュニアシートは日本でも設定がありますが、こちらはVolkswagen Designがデザインを担当し、knorr-baby社が製造するフォルクスワーゲンの純正アクセサリー。ホイールリムやファブリックがGTIデザインとなっているのが特長で、乳児用と幼児用のシートを付け替えることができます。年末から販売開始予定で、価格は実に999ユーロ(約135,000円)!クルマとのペアルックはハードルが高いようで。
BMWグループは、展示エリアを取り囲むサーキットで「駆けぬける歓び」を体現しています。2009年には戦前のBMW 328 Mille Miglia ロードスターが爆音とともに会場内を走行し、ホール中がガス臭くなる珍事がありました。今回は写真のBMW i8をはじめ、Mモデルも快音とともに会場内をデモ走行。展示会場内をクルマが走りまわる姿は何度見ても新鮮です。
今年で創立50周年を迎えたアルピナのブースには、1981年式のB7 S ターボ クーペが展示されていました。330 psを発揮する3.5リッター直6ターボエンジンを搭載したこのモデルは、アルピナ限定モデルの第一号として製作されたもの。最新の限定モデル「B6 Bi-Turbo EDITION 50 クーペ」に対応した展示に思わず目を引かれました。
アルピナのブースでは、同社の縫いの職人がALPINAロゴの型押しレザーで特製アクセサリーを製作していました。こうした職人の縫製を見ていると、手作業で1台1台丁寧につくられる同社の製造工程が想像できます。
プレミアムDセグメントとして登場したアルファロメオ・ジュリア。展示車両にはブレーキからスポイラー、インテリア類まで、カーボンがふんだんに使われていて驚きました。価格はなんと1,000万円クラスになるようで当然といえば当然ですが、マセラティ・ギブリより高価格になるのは避けたいですよね。スポーツカーの「4C」もそうですが、従来のアルファロメオ・オーナーが買える値段でなくなりつつあるのが気になります。
アルファロメオ・ジュリアとともにさりげなく展示されていたカーボンホイールのプロトタイプ。ケーニグセグなどの一部のスーパースポーツが採用するカーボンホイールがDセグメントにまで普及するのも時間の問題かもしれませんね。
アルファロメオのブースには、新型ジュリアとともに、ジュリアTZ2とジュリアTIスーパーも展示されていました。今回のIAAでは、最新モデルとともに、ルーツとなった往年の名車を一緒に展示する例が数多く見られました。
DSのブースで驚異のニューモデル発見!この「BABY DS」は、メーカー自ら「DSレンジの最新モデル」と謳う1/3スケールの電動カー。1.37mの全長ながら、フロントからサイドスクリーンまでのびるクロームのサーベルをはじめ、DS 5の特徴的なスタイリングを見事に再現しています。
インテリアもウォッチストラップデザインのクラブレザーシート、手縫いのステッチが施されたレザーステアリングなど、本気度満点。この突き抜けっぷりは、DSブランドでなければ不可能でしょう。
Sクラスのストレッチリムジンで知られるドイツのトラスコ社は、会場に防弾仕様のメルセデスGクラスとSクラスを持ち込んでいました。G 63 AMGをベースにした写真の展示車両は、ホイールベースを58cm延長したもの。リアドアは18cm長く、ラゲッジスペースは40cm延長していて、前席とのパーティション部分には巨大なスクリーンが鎮座していました。
ブラバスが手がけるクラシック・メルセデスのレストア部門が「BRABUS CLASSIC」。メルセデス・ベンツ クラシックの公式パートナーでもある彼らが今回出品したのは、600プルマン、300 SLロードスター、W113の280 SL、そしてW111の280 SEカブリオレ。新車レベルに仕上がったレストア車両には2年間走行距離無制限の保証が付けられていて、完璧な作業に対する自信が伺えます。
GPSを利用した車両追跡システムを手がけるebi-tec GmbHのブースで、メルセデス・ベンツ190E 2.5-16 エボリューション2を発見!新型車以上に熱心に写真を撮っていたため、出展者の社長から話しかけられてしまいました。このクルマのオーナーでもある社長はかなりの好き者らしく、自社製品の説明はそっちのけでエボ2話で盛り上がってしまいました。
世界最大規模のモーターショーにふさわしい内容だった今回のフランクフルト・モーターショー。自動車の今後を占う上で重要な存在となっているのはもちろんのこと、新型車から旧車まで幅広く楽しめる展示内容でした。
もしIAAに来場する機会があるときには、ホールごとに効率よくまわることをお勧めします。会場の端から端までは10分近く歩くため、むやみに1日中歩いていると足の疲労度が極限に達してしまうからです。もちろん、履き慣れた靴で行くことを忘れずに。
[ライター・カメラ/北沢剛司]