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オーナーインタビュー

更新2024.08.08

「もう一度、大好きなクルマに」。61歳のオーナーが選んだ1987年式ベルトーネ X1/9(128AS1)

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野鶴 美和


過去に一度手放したクルマが、長い時間を経て「本当に好きな1台」だと気がつき、もう一度そのクルマを愛するカーライフ。とても素敵ですよね。


今回は、10代の頃に出会ったクルマをもう一度手に入れた男性オーナーと愛車を取材しました。


── オーナー紹介



今回の主人公は、仁浦栄二さん。愛車は1987年式のベルトーネ(フィアット)X1/9です。


現在61歳の仁浦さんは、2004年から道路の基盤材を運送する会社を経営しています。59歳のときにこのX1/9を購入したそうです。


巨匠・ガンディーニがデザインした、小型ミッドシップスポーツ


X1/9は、フィアットから1972年に発売され、1982年には販売元をベルトーネに移して1989年まで生産されました。1972年の発売当初の排気量は1300ccでしたが、マイナーチェンジの過程で1500ccに引き上げられています。


このクルマのデザインは、ランチア ストラトス、ランボルギーニ カウンタックなど数々の名車を手がけたマルチェロ ガンディーニ。当時ベルトーネのデザイナーだったガンディーニによってデザインされたコンセプトカーが、量産モデルとなりました。


モデル名の「X1」は、フィアットが進行していたプロジェクトの開発コードで「9」はプロジェクトにおける9番目のモデルを意味します。



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── 仁浦さんのカーライフ&愛車遍歴




仁浦さんは、幼い頃からクルマが大好きだったそうです。まずはカーライフの原点と愛車遍歴を振り返っていただきました。


「私の父親はクルマ好きで、子どもの頃から三菱 コルトなどさまざまなクルマを所有していました。運転免許を取得して最初の愛車も、父親から譲り受けたマツダ ルーチェロータリークーペ(2代目)でした。若い頃からDIYが好きで、ルーチェは4灯のテールライトを2灯にカスタムしていました。


その次に1台目のフィアット X1/9、オニクラ(トヨタ クラウン MS112)、チェイサー、 クラウン(MS125)、クラウン(MS137)と乗り継ぎました。オニクラは今でも好きな1台です。



結婚して子どもが生まれてからは、家族旅行やキャンプに行く機会が増え、使い勝手の良いクルマを中心にトヨタ ランドクルーザー60、エスティマ、マークⅡ、セルシオに乗り継ぎました。


子育てが落ち着くと、趣味のクルマを少しずつ再開しました。日産 フェアレディZ(Z33)、トヨタ プリウス、ダイハツ コペン、レクサス NX、マツダ ロードスター、トヨタ アルファードなどを乗り継ぎ、現在のベルトーネ X1/9に至ります」




▲1500ccの直列4気筒SOHCエンジン「138AS型」


── X1/9との衝撃的な出会い



仁浦さんは、X1/9を2度所有しています。それほど心を奪われたきっかけは何だったのでしょうか。このクルマに出会ったエピソードをお聞きしました。


「19歳の頃、秋葉原へ友人と一緒にカーオーディオを探しに出かけたんです。


秋葉原に到着して駅前を歩いていたときのことでした。1台のX1/9が駅前に停まっていたんです。乗っていたのはカップルでした。ボクシーなデザインやリトラクタブルヘッドライトのカッコ良さ…。衝撃が走ったのを覚えています」



【写真提供/仁浦栄二さん】


「もともとボクシーなデザインのクルマが好きで、X1/9の直線を生かした美しいデザインにひと目惚れしてしまい、欲しくてたまらなくなりました。そして後日、東京のショップでX1/9を購入するため再び上京しました」


そう話しながら、当時乗っていたフィアット X1/9の写真を見せてくださった仁浦さん。1台目の X1/9の車体色はブラックでした。


「ボディカラーは白と黒が好きなんです。歴代の愛車はほとんど白か黒ですね。今乗っている X1/9も最初は別の色だったんですが、アルファード用のホワイトで全塗装しました」



▲1台目のX1/9。フィアットから販売されていた1300ccのモデル【写真提供/仁浦栄二さん】



▲現在の愛車はベルトーネに販売元が移り、1500ccとなったX1/9。ボディカラーは全塗装されている


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──もう一度X1/9に乗りたいと思った理由



▲ハードトップを装着する仁浦さん。ハードトップはボンネットに収納可能


X1/9にもう一度乗りたいと思うまでの、心境の変化を伺いました。


「子育てが終わってから、趣味のクルマを再開しようと国産オープンスポーツを何台か乗り継ぎました。しかし、どのクルマも丸みのあるフォルムを持っているんですよね。ボクシーなデザインが好きなのでちょっと違うな…という気持ちが自分の中にあったようです。


そんな気持ちから、10代の頃に出会ったX1/9が一番好きだということに気がつきました。やっぱりあの直線美が好きなんです。SNSやブログでX1/9のオーナーを見かけると、つい見入ってしまいます。もう一度X1/9に乗ろうと決めて、当時新車で購入していた大型バイクを売却して資金としました」



──現在の愛車との出会い



現在の愛車との出会いを振り返っていただきました。


「大阪にある専門店で、フルノーマルの個体を購入しました。他にも候補にありましたが、整備記録があり、走行距離が明確だったこの個体を選びました。ちなみに私で3オーナー目だそうです」


乗り始めて3年が経ちますがカーライフに変化はありましたか?


「休日になると、県内のビュースポットや、県北の高原エリアなどに走りに行くようになりました。乗るたびに新鮮な気持ちになれますね。ただでさえ個体数の少ないクルマなので、乗れたのは本当に運が良かったのだなと思います。幸せを噛み締めています」



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──仁浦さんの色に染まるX1/9



冒頭で、ボディを全塗装したことにふれましたが、あらためて仁浦さん自身が手を加えた部分を教えていただきました。


「まず、劣化していた内装の張り替えですね。県内の腕の良い職人に依頼しました。ステアリングはMOMOに。ヘッドライトはLED化してあります。足回りもリフレッシュしていて、車高調はD2 JAPANのタイプストリートを。ホイールはバラマンディデザインのベステルというモデルです。15インチのものを履いています」



▲ホワイトパールはX1/9に似合う


「ボディカラーはアルファード用の「ホワイトパールクリスタルシャイン」です。基本的に黒と白が好きなのですが、色味は昔からこだわっていますね。今は予算に応じて豊富な色がありますが、毎日眺める、乗るなら少し値が張っても心底気に入った色にしたいと思います。自分の場合は、理想のホワイトがこの色でした」



▲バラマンディデザインは「メイドインジャパン」の人気ホイールブランド


──部品調達はどうしていますか?



X1/9は個体数が少ない車種だそうです。そこで、部品調達はどのように行っているのかお聞きしました。


「日本で調達できない部品が多く、お世話になっているショップにお願いしてイギリスなどから取り寄せてもらいます。いつ壊れるかわからないので、気になる部品は早めの取り寄せを心がけています。ウォーターポンプのストックは自分で購入しました。ネットオークションでは新品や未使用がたまに見つかるので、チェックは欠かせません」


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──仁浦さんにとって、今の愛車はどんな存在ですか?



最後に、仁浦さんにとっての愛車はどんな存在かを尋ねてみました。


「癒しの存在ですね。休日のドライブが待ち遠しいです。運転するたびにワクワクしますし、このクルマに出会った気持ちも鮮やかに思い出すことができます。大事に乗っていきたいですね」


──取材後記


実は、今回がX1/9を実車で初めて見る機会でもあったのです。


直線を基調とした洗練されたデザインで、イタリアの陽気さが感じられるインテリア。すべてが“粋”なクルマだと感じました。こんな素敵な1台と休日に一緒にドライブできることがうらやましいです。「乗るたびにワクワクする」という気持ちもうなずけます。


今回の取材は、別の取材でお世話になったホンダ NSXのオーナー、片岡大輔さんのご縁で実現しました。暑い中での撮影となりました。


お二人ともありがとうございました。




[ライター・撮影/野鶴美和]

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