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ドイツ現地レポ

更新2018.06.21

まさに公道に浮かぶ小舟!小粋なオープン2シーター「フィアット・バルケッタ」はドイツ人も大好物?

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守屋 健

いよいよ夏本番を迎えているドイツ。ドイツに住む人々は、ドイツの夏が短いということを身に染みて知っているので、天気のいい日にはとにかく野外に出て遊びます。多くの川や湖に囲まれた首都ベルリンで人気のある遊びといえば、ヨットや船でのクルーズ。休日ともなれば、2人乗りくらいの小さなヨットから20人乗りクラスの豪華クルーザーまで、大小さまざまな船が河川に浮かびます。

今回ご紹介するのは実物の船ではありませんが、「小舟」の名の通り、可愛らしいスタイリングがドイツでも人気のイタリアン・オープン2シーター、フィアット・バルケッタです。

抑揚の効いたスタイリングが魅力




1989年に登場した初代マツダ・ロードスターの成功を受けて、1990年代は多くのオープン2シーターがデビューしました。メルセデス・ベンツSLK、MG F、BMW Z3、ポルシェ・ボクスター。それぞれのメーカーが、自社の哲学を反映させたモデルを発表していく中、フィアット・バルケッタは1995年にデビューしました。バルケッタ(Barchetta)とは、イタリア語で「小舟」を意味します。全長3,920mm、全幅1,640mmのコンパクトなボディと、まさに小舟を思わせる抑揚の効いたスタイリングで、フィアット・バルケッタは一躍人気者に。日本にも一時期、かなりの数が輸入されていました。



フィアット・バルケッタは、1995年〜2002年に生産された前期型と、2004年から2005年に生産された後期型(ニューバルケッタの名前で知られています)にわけられます。今回撮影したのは前期型。後期型に比べてシャープでソリッドなスタイリングが特徴です。前期型と後期型で外観の変更はあったものの、内部のメカニズムについては大きな変更点がないまま、最後まで生産が続けられました。

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所有欲を刺激する、各部の作り込み




前期型の生産終了からすでに15年が過ぎましたが、あらためてフィアット・バルケッタを振り返ってみると、とてもはっきりとしたビジョンのもとで作られたクルマだ、ということをひしひしと感じます。可変バルブタイミング機構付きの自然吸気1,747cc直列4気筒DOHCエンジンのスペックは130PS/6,300rpm・164Nm/4,600rpmと、特に高出力なわけではなく、高回転まで回るエンジンというわけでもありません。それに、プラットフォームはフィアット・プントをベースにしているため、横置きエンジンのFFという、頭の固いスポーツカー・ファンからは見向きもされないようなレイアウトを採用しています。



フィアット自身も、当時のライバルたちに比べて、古典的なスポーツカー・レイアウトから大きく異なることをはっきりと自覚していたのでしょう。バルケッタには、生産コストを抑えながらも、独特の作り込みが多く盛り込まれていきます。キビキビとしたコーナリングを実現するために、プラットフォームのホイールベースを短縮。オープンボディとするためにボディの各所に補強を入れながら、車両重量を1,090kgに抑えることに成功します。その結果、最高速度200km/hを達成するなど、必要十分な動力性能を獲得しました。

左ハンドル、5速MTのみという潔い設定




また、イギリスや日本にも販売されたにも関わらず、左ハンドル仕様のみの設定。トランスミッションも5速マニュアルのみ、というかなり潔い設定となっていました。生産を担当していたのは、今は無きカロッツェリア・マッジョーラ。ランチア・デルタHFインテグラーレを生産していたことでも知られています。

エクステリアの見どころは、ボタンを押し込むことで飛び出してくる、イタリアらしい繊細な作りのドアノブ。ドアを開けると、ボディパネル同色のドアの内張りが目に飛び込んできます。写真はクローズ状態ですが、トランクスペースを確保しつつ、幌を開けた時にスッキリと収まる開閉機構も特筆すべき点です。リアのスクリーンはビニール製で、写真の個体はテープで補修してありますね。

そんなフィアット・バルケッタ、フルオープンでのドライブが大好きなドイツの人々が放っておくわけがありません。バルケッタは生産終了までの10年間に57,521台が生産されましたが、その約半数がドイツで登録された、というデータもあります。

日本未導入の後継車・フィアット・124スパイダーや現行マツダ・ロードスターと比較しても、まだまだ衰えない魅力を放つフィアット・バルケッタ。これからの季節、元気に走り回る姿をますます見かけるようになることでしょう。

[ライター・カメラ/守屋健]

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