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更新2021.01.09

フェラーリはカタログも特別?40年間の変遷からみるフェラーリ・カタログの傾向とは

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北沢 剛司

自動車のカタログには、つくられた時代の最新技術やブレンドの方向性、さらに時代の流行や文化などが色濃く現れます。そのため、古いカタログを見直してみると、面白い表現や新たな発見があったりします。
そこで今回は、スポーツカーの中でも特別な存在にあるフェラーリのカタログに着目。1980年代から今日までの約40年間でカタログがどのように変化してきたか、その変遷を追ってみます。

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■時代によってさまざまな表現があるフェラーリのカタログ


フェラーリのカタログは、実車と同様に人気があります。気軽にディーラーにカタログを貰いにいけるような存在でないのがその理由です。とはいえ、数千万円の車両価格にふさわしい装丁になったのは近年のこと。以前はかなり素っ気ない装丁のカタログを製作していました。まずは、そんな時代のカタログから見ていきます。

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■あまりにも地味すぎる1980年代前半のカタログ


1980年代前半のスポーツカーは、1970年代に始まった排気ガス規制の対応により、パワーダウンを余儀なくされていました。フェラーリも例外ではなく、燃料噴射装置をキャブレターからインジェクションに変更したモデルが軒並みパワーダウンを強いられ、厳しい状況が続いていました。

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写真は、そんな時代につくられた、BB 512iと308 クアトロヴァルヴォーレのカタログです。どちらも非常に地味な表紙で、現在のフェラーリの華やかさとは実に対照的。308 クアトロヴァルヴォーレは、4バルブ化によりエンジンの出力アップを実現したモデルでしたが、カタログにはまだ厳しい時代の名残が見えます。1980年代前半のカタログには、スポーツカーの夜明け前という印象が伝わってきます。

■明るさが戻った1980年代後半のカタログ


BB 512iの後継として、1984年にテスタロッサをデビューさせたフェラーリ。これ以降、同社の各モデルには活気が戻り、カタログにも明るさが戻ってきました。

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写真は、1980年代半ばから後半にかけてデビューした、328 GTB/GTS、412、348のカタログ。328 GTB/GTSと412は伊・仏・英・独の4ヶ国語表記となる標準的なカタログで、348は簡易的なリーフレットカタログです。

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なかでも突き抜けているのがフェラーリ 412のカタログです。注記以外の文字は一切なく、解説やディメンションのデータもありません。エンジンスペックもエンジン性能曲線図のみという潔さ。写真集のように観て楽しむ存在であったことが伺えます。

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フェラーリ F40は、右の本カタログと左の四つ折りリーフレットカタログがつくられました。リーフレットカタログには初期のプロトタイプの写真が使用され、本カタログでは量産型の写真が使用されています。

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F40の本カタログは、フェラーリのカタログのなかでも別格の存在感を誇ります。幅33cm、高さ32.5cmというサイズ自体も大きいのですが、1枚モノの紙を折りたたんだ構成になっているのが特徴。そのため、折りたたまれたページを左右に展開すると、実に3.3メートルにもおよぶ大パノラマが展開されます。同様の構成となる348tb/tsとともに、ビジュアル的に見せるカタログの集大成的な内容でした。

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■一般的な体裁になった1990年代のカタログ


1988年に創業者のエンツォ・フェラーリが他界したことで、フェラーリにはさまざまな改革が訪れます。カタログについても、従来のビジュアル重視型から、きちんとした解説文が入るものへと変わっていきました。

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1992年の512 TR以降のモデルは、A4縦サイズのカタログに切り替わりました。モデルの象徴的なディテールをモチーフにグロス仕上げとした表紙は、当然ながら美しい仕上がりです。その反面、他のメーカーと同じ汎用的なサイズになったことで、フェラーリらしい独自性は薄れました。

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伊・英・仏・独の4ヶ国語で、内外装、エンジン、足回りなどに解説文が加わりました。また、簡易的な白いブックカバーにカタログが収められているのも特徴でした。

■大判に回帰した2000年代のカタログ


2000年代に入ると、それまでのA4縦に代わり、正方形または横長タイプの大判カタログへと判型が変わっていきました。

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横長タイプの冊子はすでにF355やF50などのプレスキットとして登場していたもので、写真の456 GTAの冊子のように、象徴的なディテールの図面をあしらった表紙が特徴でした。360 スパイダーのカタログはプレスキットと同じサイズで、575M マラネロは正方形タイプの判型でした。

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解説文は従来と同じ4ヶ国語表記で、360 スパイダーの場合は、各国の解説文がページをまたいで記載されるという変わった構成になっていました。

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■ハードカバーカタログの登場


2000年代に入り、大判カタログに回帰したフェラーリのカタログは、早くも次の世代に切り替わります。それが現在まで続くハードカバーカタログの登場です。

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2003年のチャレンジストラダーレで初めてハードカバーカタログを製作したフェラーリは、360 モデナの後継となるF430からハードカバーカタログをリリース。続く430 スパイダーと430 スクーデリアもハードカバーとなったことで、V8ベルリネッタのカタログモデルはハードカバータイプに一新されました。

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もちろん、V12エンジンを搭載するモデルについても、モデルチェンジを機にハードカバーカタログを採用。当初は横長の大判カタログだった612 スカリエッティは、のちにハードカバーカタログに切り替わりました。
ちなみに写真右上は、限定モデルだったスーパーアメリカのカタログ。このカタログは白い表紙ですが、なんと表紙のカラバリが9種類もあり、それぞれが実車の生産台数と同じ559部限定というとんでもないカタログでした。実車だけでなく、カタログにも限定版をつくってしまうフェラーリに末恐ろしさを感じました。

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ハードカバーカタログでは英語/イタリア語の2ヶ国語表記になり、フランス語とドイツ語が外れました。また、日本語版が用意されるようになったのも近年のこと。実車のフェラーリに右ハンドル車が増えてきたように、カタログもすっかりローカライズされたものになりました。

フェラーリのカタログは、このように時代とともに変遷を遂げ、非常に立派なものになりました。言い換えれば、観る物から読む物に変わったともいえます。新型コロナウイルスの影響によりデジタル化が進んだことで、フェラーリのカタログがどのように変化していくのか注目したいと思います。

■YouTubeチャンネル「きたざわコレクション」


【編集部追記】
北沢氏のYouTubeチャンネル「きたざわコレクション」でも、フェラーリのカタログについて解説している動画があります。その他、クルマ・ミニカー・鉄道など、同氏ならではのマニアックでありながら分かりやすい解説は必見です!

■きたざわコレクション
https://www.youtube.com/channel/UCMYbYJhgSKdTU12OCNA7gGQ


[ライター・画像/北沢剛司]

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