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更新2020.11.22
約150台のポルシェが横浜赤レンガ倉庫に集結!エキサイティングポルシェ2020
松村 透
昨年は大阪での開催となったため、横浜赤レンガ倉庫では2年振りとなるエキサイティングポルシェミーティング(以下、EXP)。
今回も、356をはじめ歴代の911、924&944、ボクスター&ケイマン、パナメーラなど、さまざまなモデルが集結しました。その数なんと約150台。偶然、その場に居合わせた観光客の方たちが驚いたのはいうまでもありません。
今回は、そのなかから気になったポルシェをご紹介いたします。
■1. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(911/ナロー)編
日本では「ナローポルシェ」と呼ばれることが多い、歴代911の原点ともいえるモデル。生産から50年前後経過しており、もはやクラシックカーの領域に足を踏み入れている存在といえます。しかし、今回のEXPにはそんなことすら忘れてしまうような現役のマシンたちが揃いました。オリジナル(またはそれに近い)の雰囲気を醸し出す個体がある一方、独自の解釈でカスタマイズされたナローポルシェも。
NPSC(ナローポルシェスポーツクラブ)のメンバーを中心に、オレンジ、グリーン、ブルー、イエローなど、あざかやなのボディーカラーをまとった個体がそろったことで、会場内でも注目を集めていました。911シリーズの原点であるこれらのクルマが、50年後にこうして並べられても現代のモデルと遜色ない(むしろ、存在感では負けていない?)ことを再確認しました。
▲イベント当日、偶然会場に居合わせた観光客の方たちも、まさかこのクルマが50年選手だとは思わないはず。新型コロナウイルスの影響で例年より外国人の方が少ない印象でしたが、お気に入りのナローポルシェをスマートフォンやカメラなどで撮影している姿が見られました。ちなみに…ブルーの個体は筆者の911であります
■2. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(930)編
930型の911も、2ケタナンバーを掲げた完全オリジナルと思しき個体を持ち込んだオーナーさんがいる反面、独自の解釈によるカスタマイズが施されたクルマも多数。フラット(スラント)ノーズと呼ばれるターボや、ガルフブルーのボディーカラーをまとったスピードスター ターボルックなど、マニアにはたまらないかなりレアなモデルがそろったカテゴリーとなりました。
ちなみに、ダークグリーンのボディーカラーをまとった930は、オレンジ色のメアリー・ステュアート型のナローポルシェを手掛けた"Body works db"が創り上げたクルマそのもの。艶めかしいターボボディーの曲線がさらに強調された美しいフォルムは、もはや芸術的ですらあります。そして、イエローのボディーカラーをまとったワイドボディの930は、ランボルギーニイオタJの原寸大のアルミのオブジェを創り上げ、2019年にはイタリアにあるムゼオ・フェルッチオ・ランボルギーニに展示されたという、"カスタムビルド&レストア WATAHIKI"が手がけた作品なのです。
▲オーナーの嗜好が色濃く反映された印象の、EXP2020に集結した930たち。海外に流出した個体があるなか、まだまだ国内にも貴重なモデルがあることを確認できました。ガルフブルーのボディーカラーをまとったスピードスター ターボルックは、筆者が高校生のときにとあるムック本で見掛け、憧れていた個体そのもの。それから30有余年、まさかこうして出会えるとは。まさに眼福の1 台
■3. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(964)編
他のモデル同様、オリジナル派とカスタム派の趣向がくっきり分かれた感のある964。今回は例年に比べてエントリーが少なかったRUFコンプリートモデルも、964カテゴリーでは健在。自然とマニアを引き寄せるオーラを発していました。通称「ターボミラー」を装着した964が多いなか、91年モデルまでのカレラ系に装着されていた角形ミラーのままの個体もあり、さりげなくオーナーさんのこだわりが感じられます(964現役当時、ターボミラーとカップホイールの交換は定番のカスタムでしたね)。
個人的に感動したのは、二ケタナンバーを掲げたルビーストーンレッドのボディーカラーをまとった964RS(しかも、ナンバーが"911"!)。オーナーさんによると、新車当時から現在まで所有されていらっしゃるそうで、この個体は一生乗り続けるとのこと。MATTER製のロールケージが組み込まれたこの964RSは、当時の雰囲気を色濃く残した1台でもあります。一見するとローダウンした964に見られがちですが「違いの分かるマニア」がこのクルマの存在に気づき、夢中で撮影していた光景が印象的でした。
▲ギャラリーの注目を集めていたのは、シルバーのボディカラーをまとったRWBモデル。外国人の方たちも熱い視線を投げ掛けていました。また、20代と思しき若い世代のクルマ好きの方にも刺さる1台のようで、スマートフォン片手にYouTubeチャンネルか何かで実況中継していました。昨今の価格高騰によりなかなか勢いだけで手に入れるのが難しい存在となっている964、早く適正価格に戻ってほしいものです
■4. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(993)編
空冷エンジンを搭載した最後のモデルとしてお馴染みの993。今回のEXPでは、何らかのカスタマイズが施された個体が多かった印象です。なかでも、RWBワイドボディをまとったこちらの993は会場でもかなりの注目を集めていました。同じ列にはリベット留めワイドボディの本家(?)ともいえる993GT2が2台並んで展示されていましたが、少なくとも見た目のインパクトはRWBの方が強烈。このあたりは好みが分かれるところかもしれません。
筆者の記憶では、993GT2のリベット留めワイドボディは当時あまり好意的に受け止められなかった印象があるのですが、いまやボディーワークの定番になろうとは…。ポルシェが生み出すデザインの影響力の高さを改めて実感させられます。
▲かつて993といえば993GT2仕様のウイングに交換するのが定番だった印象ですが、今回のEXPではその種のカスタマイズが施された個体は少なめ。ダックテールやカレラ系の純正エアロキット風のカスタマイズを施した993もあり、1台ずつの微妙な違いを見比べるのが楽しい作業でもありました。そういえば、993ターボや993RSを見掛けなかったので、このあたりは来年のEXPに期待です
■5. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(996)編
実は、すでにポルシェクラシックの領域に足を踏み入れている996。オリジナルよりもカスタマイズされたクルマの方が多い印象でした。空冷モデルまでは何となくセオリーのようなものが見え隠れしていましたが、これが996になると、形にとらわれない自由な雰囲気が感じられたのも事実。もしかしたら「ポルシェ911をベースに自分好みのクルマに仕上げたい」という明確な目的がある場合、996は格好のベース車両となるかもしれません。
「来年のEXPで注目を集めたい!」といまから意気込むオーナーさんにとって、カラーorラッピングやエアロ、あるいはその掛け合わせなど、どの路線で攻めるか悩ましいところです。
▲カスタマイズされた個体が多かった感のある996。個人的に印象深かったのはこちらの996カレラ。前期型をベースに、かなり車高を落としてスタンスっぽい雰囲気を醸し出しています。シンプルなのですが、存在感は抜群。特に、若い方がじっくり眺めていたのが印象的でした。ゲンバラのコンプリートモデルや996GT2など、貴重なモデルが間近で見られるのもEXPならではといえます
■6. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(997)編
思いのほかエントリー数が少なかった感のある997でしたが、GT3RSやターボSカブリオレをはじめとするスペシャルばモデルの姿を確認できました。それにしても、こうしてグリーンの997GT3RSに、1台ずつ仕様が異なる漆黒の997が4台も並ぶと実に画になるだけでなく、背景の赤レンガ倉庫も997のデザインを引き立ててくれています。もし、主催者の方が意図的に並べたとしたら、これは大正解だったように思います。
▲往年のポルシェファンには懐かしい、ロスマンズカラーをまとった997は、個人的にもドストライクな1台でした。997のフォルムに調和するようにラッピングされているだけでなく、実はリベット留めワイドボディ化もされている1台。オーナーさんの類い希なセンスと豊富な経験値を予感させます
■7. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ911(991&992)編
997以上にエントリー数が少なかった991および992。992にいたっては1台のみでした。これはあくまでも筆者の推測ですが、991や992あたりになってくると、911オーナーといえども客層が変わってくるのでしょうか…。その反面、エントリーしている個体はスペシャルモデルであったり、細部にいたるまでオーナーさんのこだわりが感じられるクルマばかり。また、991系はリアウィングの有無でかなり印象が変わることを再確認しました。
欲をいうと、991R、実はGT3だけれどリアウィングなしの"GT3ツーリング"がエントリーされていたら…それぞれの差異や魅力を比較できたように思います。スピードスターやカレラT、タルガなど、さまざまなグレードを展開した991シリーズだけに、来年以降にも期待です。
▲911の現行モデルにあたる992のエントリーは1台のみ。EXP会場でナローポルシェから年代を追って歩みを進めていくと、最後にこの992にたどり着きます。あまりのボリュームの違いに圧倒されます。個人的な主観では、ナローポルシェと比較して2周り以上は大きくなったように感じられます。太った?‥というよりは、体は大きいけれど、意外にも体脂肪は少ない。細身の人が体を鍛えてガッチリ体型になったイメージを抱きました
■8. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェ924/944編
同年代の911系と比較して、あきらかに現存数が少ない印象がある924および944。また今回のEXPでは、914や968のエントリーが1台もなかったのは寂しい限りであります。その一方で、もはやEXPの常連ともいえる924(2ケタナンバー!)や944が並べられていてひと安心。来年以降もこの光景を見たいと願うギャラリー(参加者の方も含めて)は案外多いはず。もし、各モデルのオーナーさんがこの記事をご覧になっているとしたら…。2021年以降のエントリーもぜひお願いいたします!
▲実は、筆者が最初に担当させていただいたオーナーインタビューの愛車もポルシェ944でした。それだけに思い入れの深いクルマであります。同年代の911系に比べて販売台数の割に現存している個体数はかなり少ないと推察されます。現オーナーさんの多くが動体保存を意識されていることを願わずにはいられません
■9. エキサイティングポルシェ2020:ポルシェボクスター&ケイマン編
1996年に初代ボクスターが発売されて以降「ポルシェオーナーデビュー」の役割を担ってきた感のあるボクスター&ケイマン。今回、20代と思しき若いオーナーさんもエントリーされていたようです。その一方で、911系には目もくれず「ボクスター&ケイマン推し」のオーナーさんが確実に増えてきたようにも感じます。
ポルシェ=911の呪縛にとらわれず、オーナーさんの嗜好に応じてカスタマイズされた個体が多かったことも印象的でした。「ポルシェに乗るならやっぱり最後は911でしょ」なんて価値観はもはや過去のものかもしれません。
▲かつて、タダ同然で手に入れることができた国産スポーツカーやボーイズレーサーなどと呼ばれたモデルは軒並み価格が高騰しています。予算をはじめ、駐車スペースや保険などの維持の目処がつくなら、個人的には若い世代の方にオススメしたいカーライフです。20代で中古のボクスターやケイマンを手に入れ思う存分走りまくる。苦労もあると思いますが、それ以上にプライスレスな経験が得られるに違いありませんから…
■10.エキサイティングポルシェ2020:356&パナメーラ編
ポルシェにとって原点ともいえる356も2台エントリー。決して押しの強いデザインではありませんが、自然と人目を惹く存在のようで、偶然その場に居合わせた観光客の方たちがじっくり眺めている姿が印象的でした。その一方、唯一のエントリーとなったパナメーラの姿も。こうして並べていると、ポルシェ一族の顔つきであることを再認識します(今回のEXPでは、カイエンおよびマカンのエントリーはなかった模様です)。
▲かつて、ポルシェ989というコードネームで4ドアのポルシェが発売されるかもしれない…というニュースが駆け巡ったのはもう30年近く前のこと。当時は「ポルシェが4ドアセダン?ありえない」という雰囲気が(少なくとも日本では)あったように思います。それがいまや、EVのタイカンが発売され、SUVがポルシェの屋台骨を支える時代に…。筆者のような典型的なオールドタイプのポルシェファンにとって隔世の感があります
■11.エキサイティングポルシェ2020:日本のポルシェライフを支える各ショップもエントリー
■12.エキサイティングポルシェ2020:まとめ
新型コロナウイルスの影響で、今年は多くのイベントが延期または中止となりました。EXP開催後には「第三波」と呼ばれるほど新型コロナウイルスが急速に感染が拡大しているようです。また、イベント当日は雨がパラついたものの、無事に開催できたことは、関係者の方はもちろんエントリーしていたオーナーさんたちもひと安心だったように思います。
EXPの良いところは「横浜赤レンガ倉庫に新旧ポルシェが一堂に会して眺められる」ことにあります。偶然、その場に居合わせたご家族がお気に入りのポルシェをバックに記念撮影をしたり、その光景を眺めていたオーナーさんが「運転席に座ってみませんか?」とお子さんを愛車のドライバーズシートに座らせてあげたり…。そんな光景があちこちで見られました。
「ポルシェの自慢大会よ」なんてうそぶくおばさまもいました(笑)が、このイベントに参加するために愛車を磨き上げたり、カスタマイズしたり、はたまた購入したり…と、大事なステップでもあるのです。新型コロナウイルスに屈することなく、来年以降もこの後継して開催してほしいイベントですね。
▲日が暮れて照明に照らされるポルシェもまた違った魅力的。オーナーさんによっては、このトライライトアワーに愛車を撮影するためにエントリーしている方もいるとか。新型コロナウイルスに屈することなく、来年以降もこの後継して開催されることを祈るばかりです
[ライター・撮影/松村透]