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ライフスタイル
更新2018.10.02
EV(電気自動車)は走行中、本当に静かなのか?BMW i3で計測してみた
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JUN MASUDA
BMW i3という、ハイブリッドではなく、完全に電気モーターによって駆動されるエレクトリックカーである。
よって、BMW i3はガソリンやディーゼルといったエンジンを持たない。そのため「運転していると静かで快適」なのだとボクはBMW i3の購入前に考えていた。実際にBMW i3を自分のものとして乗ってみると、「そんなに静かではない」ということに気がづいた。
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実際に騒音レベルを計ってみよう
そこで、ボクはBMW i3と、ランボルギーニ・ウラカンの騒音レベルを、騒音計を使用して計ってみることにした。
いくらなんでも「EVであるBMW i3と、5.2リッターV10エンジンを搭載するランボルギーニ・ウラカンとでは「比較にならない」と思うだろう。
だが、その結果はこうだ。
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この画像の左側はBMW i3、右側がランボルギーニ・ウラカンの「時速60キロ走行時における、車内の騒音」である。
継続画面をキャプチャした状態ではBMW i3が62.5デシベル、ランボルギーニ・ウラカンが69.2デシベルだ。だが、注目したいのは、それぞれの計測画面の右下にある「最大値」で、これを見るとBMW i3が64.2デシベル、ランボルギーニ・ウラカンが69.2デシベルとなっている。
そもそも、ぼくがBMW i3とランボルギーニ・ウラカンの車内におけるノイズを比較しようと考えたのは、「体感上だと、両車の騒音レベルがあまり変わらないように思えた」からであり、この結果はそれを裏付けたものだと言っていいだろう。
なぜBMW i3は静かではないのか?
ここで、なぜBMW i3はエンジンを持たないのに「意外とうるさい」のかを考えてみたい。
BMW i3は、停車時は非常に静かだ。これは間違いない。だが、走り出すとけっこううるさい。
これについてボクが考える理由はたった一つで、「防音や遮音よりも、軽量化を優先している」からだと考えている。
EVにとって軽量化は目下のところ最大の命題でもある。なぜ軽くしないといけないのか?
軽くしないと「航続距離」を稼げないからだ。航続距離を稼ごうと思えば「容量の大きな」バッテリーを積めばいいだけだが、現在、バッテリーの価格は思ったように下がっていない。
これが「EVが高価な理由」でもあるが、車両価格のうち2/3を占めるとまで言われるバッテリーの容量を増やし、さらに車両本体価格を上げると、誰も買わなくなってしまう。
そのため、自動車メーカーはバッテリー容量を増加させたのと(結果的に)同じ効果を得られる、「軽量化」に注目することになったというわけだ。
BMW i3に関して言えば、BMWは車体にカーボンファイバーを使用するなどして軽量化に腐心していることが理解できる。そして、その軽量化はやはり遮音材の少なさ、カーペットの薄さ、内装パネルの貧弱さといったところにも現れる。
おまけにi3のボディパネルは樹脂でできていて、ウインドウも軽量化のために薄肉化されている(ガラスは自動車に使用される素材で、もっとも重い部類だ)。
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その結果どうなるのか?外部からの騒音を拾い、室内がうるさく感じられるのだ。
その騒音には、自車の発するロードノイズ、足回りの振動によるノイズ、そして他のクルマが発するノイズもある。そういったノイズを、一般のガソリン車よりも車内に入れてしまうのがBMW i3である、と言える。
ただ、これはBMW i3に限った問題ではなく、コンパクトクラスのEV全般に共通することだと考えていて、これこそ、EVが「思ったほど静かで快適ではない」理由なのだろう。
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現段階ではガソリン車のほうが静かだ
だが、ガソリン車の場合は、EVほど重量にナーバスではない。
もちろん軽量化は効率化の観点から各メーカーとも重要視しているが、EVのように「騒音が入ることを前提に」まで軽量化は行ってはいない。
ガソリン車の場合、そこまでしなくても燃費を稼ぐ方法はほかにもあるし、ガソリンを入れさえすれば走行距離はどこまでも伸ばせる。
「防音や遮音性を犠牲にして」軽量化を行うのはサーキット走行前提のスパルタンなモデルだけだと認識しているが、これによって数十キロ、ボクの記憶している範囲では30-70キロほど軽量化できるというのだから、これはかなり大きい。
そしてEVの設計者からすると、これは「コストと重量が同時に削れる」方法でもあり、真っ先に防音や遮音を犠牲にしているであろうことは想像に難くない。
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参考までに…ではあるが、前世代のベントレー・コンチネンタルGTのレーシングバージョン、「コンチネンタルGT3」は、市販モデルのコンチネンタルGTに比較して944キロも軽量化されているとされているが、この数字はほかの「GT3」クラスに参加するモデルよりも圧倒的に大きいものだ。
もちろん外板をカーボンファイバーに置き換えたり、といった手法を採用していることもあるが、「高級」を標榜するベントレーには、もともと相当な重量が「防音や遮音」対策に費やされている、と考えてもいいだろう(ベントレー・コンチネンタルGTのガラスは普通のクルマの二倍以上の厚さがある)。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]