更新2023.10.17
EUが中国製EVへの反補助金調査開始、制裁措置発動も
外車王SOKEN編集部
欧州委員会は4日、中国製電気自動車(EV)に対する反補助金調査を開始したと発表した。公的補助などを後ろ盾に安値でEVを欧州連合(EU)に輸出し、域内の事業者を圧迫しているかどうかをチェックし、問題があると判断すれば制裁として反補助金関税を課す。
調査期間は最長13カ月間。途中で不当な公的支援があるという確証を得た場合は、調査開始から9カ月後に暫定的な相殺関税を課すことができる。
欧州委のフォンデアライエン委員長は9月13日に欧州議会で行った施政方針演説で、中国製EVに対する反補助金関税を課すかどうかの調査に着手する意向を表明していた。欧州委によると、中国のEVメーカーが公的補助や政府系銀行から低利の融資を受けているほか、税制上の優遇措置適用、部品や資材を政府の肝いりで通常より安価で入手していることなどで不当に競争力を高めているという証拠が「十分に集まった」ことから、正式に調査を開始した。
調査では不当な公的支援による安価での輸出が、域内メーカーにどの程度の影響を及ぼしているかが大きな焦点となる。
欧州委は通常、域内の業界団体からの要請に基づいて反補助金調査に着手する。今回のケースは独自の判断で調査に踏み切った。
中国商務省は4日、欧州委は証拠が不十分なのに調査を開始し、世界貿易機関(WTO)のルールに違反しているとして「強烈な不満」を表明。国内業界団体の中国自動車工業協会(CAAM)も同日、「露骨な保護主義だ」として批判する声明を発表した。
中国製EVはEUでの販売が急激に伸びている。欧州委によると、中国製の欧州でのシェアは8%。25年には15%に達する見通しだ。EUが制裁措置を発動した場合、中国政府が報復措置を講じる可能性が高い。
■中国製風力タービンも標的に
一方、欧州委は中国製の風力タービンに対しても、同様の調査を開始することを検討している。競争政策担当委員を代行するレインデルス委員が6日、仏テレビ局BFMとのインタビューで明らかにした。
英有力紙フィナンシャル・タイムズが伝えた消息筋の情報によると、調査は月内にも開始される見込み。EUによる中国製品の輸入制限に向けた調査が相次ぐことで中国政府が猛反発し、大規模な通商紛争に発展しそうな雲行きだ。
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