ドイツ現地レポ
更新2016.07.05
電気自動車やPHEV車シフトへの布石?2030年までにドイツすべての新車を無排気化か
NAO
概要
ドイツのエネルギー・副経済産業大臣ライナー・バーク氏がベルリンにて開催された環境フォーラムにて、「排気ガス削減の目標を達成するには遅くとも2030年までにすべての新車を無排気化しなければ間に合わない。」とコメント。新車の寿命が20年ほどと考えると、購入してから次の15~20年で排気量カットをしていかなければならないのだ。
現在の問題と対策
●電気自動車の普及率
1990年の水準より乗用車の排気ガス削減率は40%を達成している一方で、電気自動車の普及率は低迷している。ドイツで登録された車両のうち、電気自動車の割合は約0.6%。普及しない理由としては、充電ステーションの数が圧倒的に少ないことや、車社会のドイツでは電気のみだとアウトバーンで走るパワーや走行距離がディーゼルやガソリンなどの化石燃料車には勝らない点が挙げられる。
・ドイツ政府は電気自動車販売数を増やすためにインセンティブと充電設備への補助金の支出を約束。他にも購入時の補助金または税金免除も検討している。ハイブリット車購入時の補助金制度は既に中国、ノルウェー、フランスなどで実施されている。2020年までに約500万台の電気自動車の販売、2025年には電気自動車の普及率8%を目標としている
・2020年までにハイブリッド・電気自動車用のバッテリープラグインエリアを600万か所に配置する計画
●排気ガス削減率
1990年よりトラック等の輸送車両のCO2排出量が全く変化していないという事実がある。トラックは全てディーゼル・ガソリンエンジンで走行しており、ドイツの全排気量の約20%が輸送車両からの排気ガスである。
・トラックのCO2排出量に関する対策は未定だが、先に圧倒的に数が多い乗用車から対処していく必要がある。大気汚染の根本的要素を排除しなければ公約達成の道はないという考えがある
●中古車文化であるドイツは中古車を買うのが主流
古くても質が良いものを長く使う文化であることと、道路環境が良く、停車・発進による車体への負荷が少ないので、壊れず長期間乗ることができる。新車がすべてエミッションフリーであったとしても、乗られたクルマがすべて中古のディーゼル・ガソリン車であれば、排気ガスは減らせない。新車購入時のみ課税される税金も、新車買い渋りの原因となっている。日本のように新車文化ではないため、どのようにドライバーたちにメリットを与え、エコカーに切り替えていくかは政府にとって非常に難しい問題である。
2016年1月分では13万台のハイブリット車、2万5000台の電気自動車が登録されたが、3,000万台のガソリン車、1,450万台のディーゼル車の登録数と比べるとはるかに少ない。VWの排ガススキャンダル以降、ドイツメーカーは主力を電気自動車にこぞってシフトチェンジしてきた。VW同様、メルセデス・ベンツも電動化パワートレインに切り替えてきている。他にも警察などの国家機関で使用する車両に電気自動車を採用するなど、国から電気自動車切り替えキャンペーンを行っている状況である。