ドイツ現地レポ
更新2017.06.06
憧れのマシンに黒山の人だかり!DTM第2戦ラウジッツリンク観戦記
守屋 健
大きな変更があった2017年のレギュレーション
DTMは毎年レギュレーションが見直されていて、2017年は特に大きな変更がありました。
・ドライバーとピットの無線交信は原則禁止(ピットレーン進入時、黄旗が提示されている時、セーフティカー導入時は除く)
・予選の結果にもポイント加算(1番手3ポイント、2番手2ポイント、3番手1ポイント)
・DRS(ドラッグ削減システム)の使用は12周の間に36回までに制限
・リアウイングの形状変更(1枚→2枚)、DRSはF1同様フラップを開く仕組みに変更
・エンジンのエアリストラクター径を28mm→29mmにボアアップ
・サスペンションとホイールを全車共通化
ピットとの交信ができなくなったことで、ドライバーは自らの判断でDRSを使用することになりました。また、エアリストラクター径の増加により、4リッターV8エンジンの出力は500馬力を超え、ABSなし、TCS(トラクションコントロール)なし、後輪駆動のマシンはさらにシビアなコントロールが求められます。ABS、TCS、4WD等のハイテクデバイス満載だった旧DTMマシンとはかなり趣が異なりますね。2012年以降は、メルセデス・ベンツ、アウディ、BMWのドイツを代表する3メーカーで争われています。
ラウジッツリンク観戦のチケット購入や現地までの交通とは
チケットの購入はDTMの公式サイトか、開催サーキットの公式サイトからインターネットで購入できます。筆者は今回、ラウジッツリンクの公式サイトで買いました。Eメールにチケットが添付されて送られてくるので、プリンターで出力して当日持っていけばOKです。
購入時、ぜひお勧めしたいのが「Fahrerlager」と呼ばれるパドックパス付きのチケットを買う、ということ。会場で回る範囲がぐっと広がりますよ。会場のそばでキャンプができるチケットも販売されています。キャンプしながら週末をサーキットで過ごすなんて、最高でしょうね。
ラウジッツリンクの駐車場は41,000台収容とのこと。筆者は今回、最寄鉄道駅のグロースレッシェンからバス→最寄バス停のMeuro Gasthausで下車、徒歩で会場入りしましたが、同じバスに乗っているDTMファンは一人もいませんでした……。みなさんクルマで来られるみたいです。
▲駐車場から歩いて向かうファンたち
▲大きな風力発電が目を引きます。入場ゲートでは簡単なセキュリティチェックがありますが、鞄を開いて見せるだけで大丈夫です
他レースとはちょっと違う?秘密主義とは無縁のフレンドリーな雰囲気
まずは今日のスケジュールを確認。筆者が着いたのは11:30頃でしたので、この後の予定は……
12:45 ADAC GTマスターズ
14:45 DTM
16:20 ポルシェ・カレラカップ
と、立て続けにレースが続きます。さっそく会場内を探索してみましょう!
▲入場ゲート近くにはメルセデスのブース。さっそくメルセデスAMG C63 DTMがお出迎え
▲みなさんペタペタ触ったりしているのですが、誰もあまり気にしていない様子です
▲BMWのブース。M3、M4、M6には黒山の人だかり
▲DTMの公式ショップ。後ろはタイヤを供給しているハンコックのブース
▲1963年からスロットカーを作り続けている老舗、カレラのブース。子どもも大人も夢中になって楽しんでいました
▲アバルトのブース。ADAC F4はアバルト製1.4リッターターボエンジンを搭載しているので、その繋がりでしょうね
▲パドックパスを提示して、パドック内に入ります。スタイリッシュなアウディのトレーラー
▲トレーラーの間にピットの真横まで行くことができるスペースがあります。ガラス越しに中を覗いてるファンが集まっていますね
▲本戦準備中のアウディRS5 DTM。こんな間近で見られるとは……。秘密主義のF1とは雲泥の差ですが、徹底したイコールコンディション化がこれを可能にしているのでしょう
▲メルセデスAMGのトレーラーと、パドック内のAMGのブース
▲メルセデスAMG GT3。この日のADAC GTマスターズでも同型車が大活躍でした
▲2006年のDTM年間チャンピオンに輝いたベルント・シュナイダー、彼が運転していたAMGメルセデスCクラスです!涙目ヘッドライトも懐かしいですね
▲ADAC GTマスターズに参戦中、GRTグラッサーレーシングのランボルギーニ ウラカンGT3です。少年が愛おしそうに眺めていました
▲ポルシェ カレラカップを待つ911カップカーたち。スタッフは昼食中でした
▲使用済みのスリックタイヤはパドックで配っています。男性のみならず、子どもや女性まで、みんな嬉しそうに持って帰るのですが、一体何に使うんでしょうか……?
▲午前中にレースを終えていた、ADAC F4参加マシンたちが勢揃い
▲一人で押してパドック内を移動します。インテーク横にアバルトのマークが!
▲マシンの解説も行われていました。昨年のBMW M4 DTM、カーナンバー16のティモ・グロックのマシンです。カウルをその場で外して解説が始まります。エンジンの搭載位置がとても低い!そしてみなさんここでもペタペタと触りまくります
▲リアウイングの形状が今年と異なることがわかります
▲ADAC GTマスターズをスタンドから眺めます。カメラを持っている人は少なく、スマートフォンで動画を撮ったりしているくらいで、ビール片手にのんびりと観戦する人が多かったです
▲強固な柵こそありますが、かなりの至近距離をマシンが駆け抜けていきます。ADAC GTマスターズのこの日の勝者はポルシェ911GT3R!
▲耳を保護するために防音イヤーマフを付けている子どもたちが目立ちました。消音器なしのレーシングエンジンの爆音は、大人でも長時間聞き続けるのは厳しいですよね
▲そして防音イヤーマフ、会場でたくさん売っていました。10ユーロ=1,250円くらいでしょうか
▲グッズショップ、飲食店も充実していました。もっとも多かったのは生ビールのスタンドで、女性も男性もみなさんゴクゴク飲んでいました……
▲DTM本戦が始まりました。接触やスピンが起きたり、追い抜きが成功するたびに、観客からは大歓声と拍手が上がります
▲写真ではわかりにくいのですが、Cピラーの前にLEDによる順位表示器が付いていて、これによって一目でレース状況がわかるようになっています。この日の勝者はカーナンバー22、メルセデスAMG C63 DTMを駆るルーカス・アウアーでした!
▲レース終了後のDTMマシンたちは、パドック内に並べられて、こうして間近で見ることができます。スリックタイヤの痕が生々しいですね。写真はこの日5着だった、マイク・ロッケンフェラーのアウディRS5 DTMです
子どもも大人も一緒になって楽しめる、ということ
DTMが終わった後もすぐに帰らずに、ポルシェ カレラカップも見ていくファンが目立ちました。筆者はこの日のレース終了まで残ることができませんでしたが、夜はDJやライブコンサートも予定されていて、朝から晩までお祭り、という感じでした。
カメラを持っている人の少なさには本当に驚きました。レースクイーンの撮影会も無く、大きな望遠レンズを付けた一眼レフを持っているのはプレス関係者くらい。写真を撮ることよりも、友人同士や家族で、実物を前にしていろいろ意見を交わす方が楽しい、といった印象を受けました。
パドック内にいると、ドライバーたちがファンのサインの求めに快く応じていているのを多く見かけました。サインをもらった子どもたちの嬉しそうな顔!きっと忘れられない思い出になることでしょう。防音イヤーマフの装着率の高さや、子どもも一緒に遊べるアトラクションの多さは、特筆すべき点だと思います。こういった家族みんなでクルマを身近に感じられるイベントが、DTM、ひいてはドイツの自動車文化の未来を担っているのだな、と改めて実感させられる一日でした。
[ライター・カメラ/守屋健]