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更新2018.08.14
実は狙い目かもしれない「デモカー落ち」というクルマの買い方
JUN MASUDA
デモカーというのは、平たく言うと試乗車のことで、ディーラーが試乗車として使用したクルマを譲ってもらう、ということだ。
デモカーはどのタイミングで入れ替わる?
輸入車の場合、多くのデモカーは「1年で」入れ替えられることになる。
これは欧米の自動車メーカーが「モデルイヤー制」を導入していることに起因しており、各自動車メーカーのビジネスイヤーが変われば(欧州だと7月を境に切り替わることが多いようだ)、モデルイヤーも変わることになる。
なぜそういった現象が起きるのかというと、各自動車メーカーは、パーツを仕入れることになるサプライヤーに対し、毎年どれくらいのパーツを買うという見込みを伝え、それによって納入価格の値切り交渉を行うことになる。
「何個パーツを買うからその分安くしてくれ」ということだ(この数量が生産台数を決定することになる)。
そしてまた次のビジネスイヤーになると、「今年は何個パーツを買うから金額を出してくれ」という交渉になる。
そして、その際には前のビジネスイヤーを通じて蓄積された情報をもとに、改良されたパーツを発注する場合があるワケだ。
だから、ビジネスイヤーが変われば、そのクルマはどこかしら改良されていると考えていい。
そして、改良されたクルマを売るのに、前のビジネスイヤーに製造された「改良前の」クルマを試乗車として使用することはできない。
場合によっては、その変更内容は改良とは逆に「装備の簡素化」であるかもしれないし、ボディカラーが変更されているケースもある。
だから、ディーラーは毎年、デモカーを最新モデルへと入れ替えるのだ。
デモカーは何がお得?
デモカーについて、ぼくが「お得」だと考える理由はいくつかある。
それはおおよそ下記の通りだ。
1.オプションがたくさんついている場合が多い
2.無改造である
3.素性が明らか
4.しっかりメンテされている
「1.オプションがたくさんついている場合が多い」についてだが、デモカーは試乗した見込み客に「このクルマ」だと思わせ、購入の際に背中を押す役割を果たす。
だから、通常は「欲しい」と思わせる、魅惑的なオプションが満載だ。
中には、もし新車で自分が買うならば「とうていその費用を払ってまで装着しない」ようなオプションが装着されている場合もあるが、中古車の常として、そういったオプションであっても、中古価格にそれが反映されることは少ない(反映されるとしても、もとのオプション価格が”まるまる”反映されることはない)。
「2.無改造である」「3.素性が明らか」「4.しっかりメンテされている」に関しては、ディーラーが使用してきたのだから当然だ。
個人がオーナーだった中古車には、外観がノーマルで極上のように見えても、機関は「そうではない」ケースだってある。
だが、ディーラーのデモカーであればまず安心で、何かあれば購入したディーラーが責任をもって対応してくれるだろう。
デモカーは何がデメリット?
しかしデモカーとて完全に安心できる物件ではない。
ぼくが考えるデモカーのデメリットは「不特定多数の人が試乗すること」だ。
そしてそのクルマは、試乗する人にとっては「他人の車」なので、自分のクルマのように大事にはされないだろう。
だから、サイドシルやキックプレートはけっこう(もちろん故意ではないが、靴で蹴られて)傷ついていることがある。
そういった場合、ぼくは購入時にサイドステップやキックプレートを新品に交換してくれるように頼むことがある、ということも記しておきたい。
そのほかの懸念としては「デモカーは”他人のクルマだと思って”、もしくは性能を試すためにけっこうムチャな運転」がなされていることがある。
急発進や急ハンドル、急ブレーキなどだ。
こういった経歴のあるクルマはタイヤを見ればわかることが多い。走行距離の割にタイヤの傷みが激しい場合は要注意かもしれない。
加えて、慣らし運転が丁寧に行われていない場合もあり、しかし「デモカーではない」中古車だって、上に挙げたデメリットすべてを満たしていることもあるから、このあたりは個別に判断する必要があるだろう。
デモカーはどうやって買う?
デモカーは上述の通りメリットが多い。
だから、デモカー落ちを狙って購入する人もたくさんいるようだ。
そこでボクは、試乗をした際、気に入ったクルマがあれば、「このデモカーを販売するときが来たら、自分に先に声をかけてくれないか」とディーラーに頼んでおく。
そうすれば、ディーラーはそのデモカーを販売する際、買い手を探したり、そのための手間を節約することができ、Win-Winの関係となるため、「商談成立」となる。
なお、ここで言っておかねばならないのは、「ボクがデモカーを狙うのはどういった場合なのか」。
基本的にボクは新車派だが、逆に「デモカーでしか買わない」といったクルマもある。
その判断基準としては、「新車で購入して、売却するときに大きく値下がりするであろう」クルマだ。
不人気なクルマや、そもそも新車時の価格設定が高いクルマがこれに該当するが、フォルクスワーゲン・シロッコはこの両方に該当していた。
シロッコの中身としてはフォルクスワーゲン・ゴルフだが、その新車価格があまりにも高い。
だから、デモカー落ちとなるのを待って安価で購入した。
ボクはどうしてもシロッコを欲しかったのだが、値下がりを恐れて新車で購入することができなかったのだ。
その他だと、ポルシェ981ボクスターもデモカー落ちで購入した。
ポルシェ981ボクスターは値落ち率が低く、新車で購入しても問題はない。
ただ、ポルシェのオプションは高い。とんでもなく高い。
パッパと欲しいオプションを選んでゆくと、あっという間にオプション代金だけで200万円を超える。
だが、デモカー落ちだと「ふんだんにオプションが付いている」割に販売価格は高くない。
とにかくデモカーを選ぶ理由は様々だが、「できるだけ割安に購入し、満足度も高く、売却時の値下がり損を最小限に抑える」ことができるのがデモカーだとボクは考えている。
一台のクルマをずっと愛する人も多いが、ボクはそうではない。
できるだけ多くのクルマに、できるだけ支出を抑えて乗り継ぎたいと考えている人の参考になれば幸いである。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]