ドイツ現地レポ
更新2021.01.23
ドイツでは中古車の価格が大変動?コロナ禍で変わるドイツのクルマ好きの過ごし方
守屋 健
そんななか、ドイツのクルマ好きはこのような状況をどのように過ごしているのでしょうか?今は真冬で、積雪や路面の凍結が起こりやすい状況であり「気軽にドライブしよう」という季節ではありません。今回のドイツ現地レポは、ドイツのクルマ好きが今どんな過ごし方をしているのかレポートしていきたいと思います。
■コロナ禍により、ドイツでの中古車の価格が大変動
ドイツでは現在、居住地における過去7日間の人口10万人当たりの新規感染者数が200人を上回っている場合、行動範囲が居住地から周囲15km以内に制限されています。仕事や緊急の用事などの例外はあるものの、規則の上では「気分転換のためのドライブ」ができない状況です。
つまり、国内・国外問わず、旅行はもちろん、ドライブに行くこともできません。ドイツ国内では先述の基準値を超えている地域が極めて多いことから、現在クルマに乗って遊びに行くことは実質不可能といえるでしょう。
そんななかで活発な動きを見せているのが中古車の売買です。中古車取引の件数が増えた、という具体的な数字は見つからなかったものの、ドイツ現地の中古車情報メディアでは、コロナ禍によって中古車相場が大幅に変動した車種を数多く取り上げ「このクルマが今が買いどき」として掲載。特にポルシェ・911は限定モデルを除いて全体的に中古車価格が下がっており、筆者から見てもここ数年でもっとも手が届きやすい時期がきていると感じます。一方、ポルシェに限らず、限定車や希少車に関しては値上がり傾向にあり、高価な中古車を投機の対象として見ている人々も少なくはなさそうです。
お金に余裕があるクルマ好きはともかく、先の見えない状況下で「新しくクルマを買って気分転換」なんてできる人は少ないとは思いますが、それでもドイツの中古車売買は新車販売と比べてかなり盛況のようです。
■オンラインで交流する自動車クラブ
ドイツには数多くの自動車クラブが存在します。ある特定の車種だけを扱うクラブ、古いクルマを持ち寄ってミーティングしたり走行したりするオールドタイマークラブ、サーキットでの走行を主眼に置くクラブ、倉庫を共同で借りてレストアをコツコツ進めるクラブ……それらは現在、まったく活動ができない状況が続いています。
こうしたクラブに所属している人々は、ほとんどの場合交流の場をオンラインに移して活動しています。この機会に新たなパーツの購入・取り付けをやってみたり、パーツに関する情報交換をしたりと、現在許されている範囲で活動している様子です。
ドイツではホイール交換でも車検を通さなければならないほど、カスタマイズに関して厳格ですが、車検場は重要なインフラのひとつとして現在も開いています。また、ドイツでは自宅での洗車は基本的にNGであり、排水施設の整った洗車場でしか洗車できないのですが、洗車場も閉鎖はされておらず、この機会にクルマを綺麗にしようという方も多いとか。とはいえこの時期、道路にまかれた凍結防止剤でクルマはすぐに汚れてしまうのですが……。
■レーシングシミュレーターの躍進
クルマ好きが自宅で楽しむ趣味として長年ポピュラーだったのが、プラモデル製作やモデルカーの収集です。コロナ禍でもこうした趣味は変わらず愛好されているようですが、近年ここに新たな勢力があらわれました。ゲームと片付けてしまうにはあまりにも本格的な「eスポーツとしてのレーシングシミュレーター」が、2020年に大きな躍進を果たしています。
特にドイツ・バイエルン州にあるエンドア社は、2019年に3,880万ユーロだった売り上げを2020年には9,000万ユーロに増やし、前年比約132パーセントという驚異的な成長を果たしました。エンドア社は「ファナテック」のブランド名でハイエンドなドライビングシュミレーター用デバイスを多数開発し、この分野で世界をリードする存在です。ポルシェやBMWなどと協力関係を結び、こうしたブランドから正式にライセンスを受けたクオリティの高い製品は、多くのファンから熱い支持を受けています。
ファナテックの躍進が示すように、自宅でよりリアルなゲーミング環境を構築し、オンライン上で世界中の人々を一緒にレースを楽しむ、という人はコロナ禍で確実に増加しました。走るのが好きだ!というクルマ好きにとっては、こうしたレーシングシミュレーターはかなり魅力的ですよね。もっとも、ドイツではレーシングシミュレーターのみならず、各種eスポーツ市場が急速に拡大し、ゲーミングPCの売り上げもかなり好調のようです。
■「好きなクルマで走り回りたい」という本音はドイツも同じ
いつ収束するかもわからないコロナ禍。今回は現時点(2021年1月現在)でドイツにおけるクルマ好きの過ごし方を紹介してきましたが、やはり本音としては「かつてのように好きなクルマで走り回りたい」に尽きるでしょう。全世界で収束する日がいつになるのはわかりませんが、今はとにかく「うつさない、うつらない」ことを念頭に生活するしかありません。読者の皆さんもどうかお気をつけて!
[ライター/守屋健]