ドイツ現地レポ
更新2017.10.03
日本の全てのクルマ好きに自信を持ってお伝えしたい最高の空間、クラシック・レミーズ・ベルリン
守屋 健
クラシック・レミーズ・ベルリンはクルマ好きのための複合施設
▲クラシック・レミーズ・ベルリンの外観。中央に見えるガラス張りの場所はレストランです。駐車しているクルマの中にはジャガーやアストン・マーティン、ロータス・エスプリの姿も!
以前、カレントライフにて「クラシック・レミーズ・デュッセルドルフ」について紹介する記事が掲載されました(https://www.gaisha-oh.com/soken/classic-remise/)。その記事の中でも触れられていますが、クラシック・レミーズはドイツ国内に2箇所、デュッセルドルフとベルリンにあり、ベルリンの方が規模が大きいようです。今回、取材許可を得て内部を撮影することができたので、普段の「ドイツ現地レポ」よりも写真を増量してお届けします。
▲古い倉庫のような外観とは裏腹に、自然光が入るように工夫された全長100m以上の広大なホール。このホールが全部で4つあります。手前に写っている白い1989年製ポルシェ911カブリオレも売り物で、販売額は69,500ユーロ(約917万円)でした
2003年にオープンしたクラシック・レミーズ・ベルリンのコンセプトは、デュッセルドルフのものと同様に、博物館、販売店、修理・レストア工場、グッズや書籍、アパレル等のショップ、さらにはイベントホールやレストランまでもが一体となった複合施設です。博物館といっても入場は無料で、自由に見学が可能です。また、この施設は中古車販売場も兼ねており、多くのクルマにはプライスタグが掲げられていて、その場で購入することができます。メンテナンスのために入庫している個人所有のクルマ等は、ガラス張りのガレージ(収容台数は88台)に収められているため、オーナーたちが実際に運転しているクルマをガラス越しに見学することができます。
▲メルセデス・ベンツ300SL、ポルシェ356、フェラーリ・ディーノが収められたガラス張りのガレージ。他にも、マクラーレン720Sやランボルギーニ・カウンタック、フェラーリ512BBやロールス・ロイス・レイスなども入庫していました。ホール全体でのクルマの総額はいくらになるのでしょうか?
▲ナローのポルシェ911や356、メルセデス・ベンツ190SLが集まる一角。素晴らしいコンディションのクルマがこれだけ集う様子は圧巻の一言で、じっくり見ようと思うと丸一日はかかるかもしれません。ホール内部にはオイルの匂いがほのかに漂っていて、普通の博物館とは異なる独特の雰囲気です。時折エンジンを始動する音が響いたり、集まった人々の笑い声や話し声もあって、思いの外、賑やかな印象を受けます
▲ジャガー・XK150ロードスターがエンジンを始動している場面に立ち会えました。XK150ロードスターが製造されたのは1958年から1961年の間ですから、すでに60年近い年月が流れているというのに、それを感じさせない美しい状態を保っていました。エンジンも好調そのもの。生粋の英国車ではありますが、ドイツに生息する個体らしく左ハンドル仕様ですね
▲建物の2階部分にも通路が通っていて、もちろん通行可能です。ガラス張りの販売店とその上に乗る往年のフォーミュラ・カー、さらにはガソリンの給油設備と古いオートバイの展示と、情報量が多くて目のやり場に困るほど。年配の方ばかりではなく、20代前半くらいの若い入場者の姿も目立ちました
▲通路の様々な場所に、世界中のサーキットの縮図が埋め込まれています。ご丁寧に完成した年、コーナーの数、距離(キロとマイル!)まで書いてあるあたり、いかにも真面目なドイツ人が作ったという感じで、思わずニヤリとしてしまいました
▲モデルカーのショップ。かなりマニアックなクルマのモデルカーも在庫していました。他にもアパレルのショップや、自動車のシートや内装をモチーフにした家具屋、書籍を販売するお店など、ほとんどがこうしたガラス張りの構造になっていて、開放的で明るい雰囲気です
▲ガラス張りではないガレージも。建物内は自然光によって明るすぎず暗すぎず、ちょうど良い明るさに保たれていました。クラシック・レミーズ・ベルリンの開館時間は、月曜日〜土曜日が8時から20時、日曜日と祝日は10時から20時までと、とても長いのが特徴です
▲ひっそりと停まっていた1969年製シムカ1100GLSのエステートワゴン・タイプ。前輪駆動、4輪独立懸架、前輪ディスクブレーキ、ラック・アンド・ピニオン式ステアリングを備えた比較的安価な大衆車で、フォルクスワーゲンが初代ゴルフを開発する際に参考にしたとも言われています。写真でも状態の良さが伝わってくるようなこの個体、気になるお値段は13,800ユーロ(約182万円)でした
多数のレストア・修理工場が立ち並ぶ
クラシック・レミーズ・ベルリンには様々なレストア・修理工場が入っていて、それぞれ得意分野が異なります。例えば、英国車が得意な工場、イタリア車やフランス車といったラテン系を得意とする工場、現地ドイツ車に強い工場、そしてオートバイの修理やレストアを専門とする工場などです。ほぼ隣り合うようにそれらの工場が連なっている様子は、日本ではまずお目にかかることのできない光景でしょう。それぞれの工場はクラシック・レミーズの他の部分と同様、非常にオープンな雰囲気で、中の様子がよく見渡せます。この「同業他社がひしめき合うシステム」は、それぞれの工場に勤める人たちにとってお互いに大変刺激になるでしょうし、修理に出すオーナーたちにとっても自分の目で判断できるので、メリットはとても大きいはずです。
▲英国車の修理やレストアをメインとした工場。ジャガー、アストン・マーティン、ロールス・ロイス、ロータスなどが入庫していました
▲イタリア車を主に取り扱う工場。アルファ・ロメオの巨大なマークが掲げられています。手前のフィアット500はもうすぐレストア終了、といった趣です
▲こちらはドイツ車のレストアや修理に特化した工場。メルセデス・ベンツのレストアが数台並行して行われていました
▲通りに面した入り口から撮影した写真です。空間の使い方がとても上手ですね。奥にガラス張りの2階建てガレージ、手前に同じくガラス張りのショップと、2階部分に張り巡らされた通路があります。フォード・フィエスタと2台のポルシェ911も気になるところですね
▲1987年製フォード・フィエスタMk2。「今年からHナンバーが取得可能!」とプライスタグに大きく書かれていました。筆者がチェックした中では一番のお買い得車で、お値段は2,790ユーロ(約37万円)!走行距離は88,923kmですから、まだまだ元気に走れるはず。筆者も「こんなクルマを現地の足として使えたら・・・」と妄想が膨らんでしまいました
▲2台並んだ空冷のポルシェ911。左が1983年で49,800ユーロ(約660万円)で販売中。右の1984年式(こちらは走行距離12万kmの表記あり)は48,900ユーロ(約645万円)のプライスタグを掲げていました。どちらもフルノーマルの状態が保たれていて、特に内装についてはヤレもなく美しいコンディションでした
全てのクルマ好きにオススメしたい!クラシック・レミーズ・ベルリン
噂には聞いていましたが、クラシック・レミーズ・ベルリンの凄さは想像以上でした。ブガッティ・ヴェイロンやラ・フェラーリといった21世紀のハイパーカー(この2台は撮影禁止でした)と、1920年代のロールス・ロイスが一度に見られる施設が他にあるでしょうか?しかも、そのほとんどが販売していて、どのクルマも走るために整備されています。ベルリンの中心部からは少し離れた場所にありますが、この地を訪れた際にはぜひ足を運んでみてください。かすかに漂うオイルの匂い、時折ホールに響くエグゾーストノートをBGMに、ゆっくりとクルマを眺めたり、ショップで買い物をしたり、レストランで休憩をしたりすれば、きっと忘れられない一日となるでしょう。
[取材協力]
Classic Remise Berlin(クラシック・レミーズ・ベルリン)
住所:Wiebestrasse 36 - 37, 10553 Berlin
営業時間:8時〜20時(月〜土) 10時〜20時(日・祝)
入場無料
公式サイト:http://www.remise.de/
[ライター・カメラ/守屋健]