ドイツ現地レポ
更新2018.02.22
愛嬌あふれるお顔が印象的!コンディション良好なシトロエン2CVベースのフルゴネット・AKをベルリンにて発見
守屋 健
AKはシトロエン2CVの派生モデル
シトロエン2CVと言えば、CLでも何度も登場したフランスを代表する大衆車のひとつですね。2CVはフランス語でドゥ シュヴォー(deux chevaux)と発音します。deuxは数字の2、chevauxは馬を表すchevalの複数形で、2CVで「馬2頭」「2馬力」という意味になります。実際の出力はもう少し大きく、当初は9馬力からスタートし、最高で32馬力に達しますが、今の基準から考えると驚くほどの低出力です。しかし、最初の9馬力モデルでも最高速度55キロ、後期モデルでは最高速度110キロに達しますから、非常に効率よくエンジンパワーを使うことができる、高効率のクルマということもできるでしょう。
そんなシトロエン2CVをベースに、4つあるドアの後半部分を荷室として軽貨物車両としたのが、AU、AZU、AKと呼ばれるクルマたち。今回写真に収めたのは、背の高いボックスを背負ったAK 400(AK-S)と呼ばれるモデルです。2CVはもともと車高が高くひょろりとした雰囲気のクルマですが、このAKはさらに200mmほど高くなっているので、全高はなんと1,850mmに達しています。全幅は1,500mmほどしかないので、見た目にもかなり縦長な印象を受けますね。2CV独特の「思い切りロールしながら曲がる足回り」を想像すると、高速道路で横風に吹かれたり、荷物満載で急ハンドルを切ったりした場合は、かなりヒヤッとするかもしれません。
華奢な車体に大きなペイロード
「フルゴネット」と呼ばれる、普通乗用車のリアセクションに荷箱を載せたAKのような軽貨物車両は、フランスでは根強い人気があり、現在でもルノー・カングーを中心にいくつかの車種が生産されています。そのはしりとなったのが、シトロエン2CVベースのAKや、ルノー4ベースの4/F4や4/F6といったクルマたちでした。シトロエンAKの直接的なライバルは、まさにルノー4ベースのフルゴネットでしたが、AKの生産終了は1978年とライバルよりも早く、生産台数も61万台前後にとどまっています。
シトロエンAK 400のペイロードは400kg。車重は640kg程度ですから「この華奢な車体にそんなに載せて大丈夫なのか」と心配になってしまいますよね。30馬力そこそこのエンジンで100km/hまで引っ張りあげる性能をもつとされていますが、満載状態では加速もゆっくり、最高速度もそこまで伸びなかったでしょう。それでも低価格と頑丈さ、整備の容易さから、ドイツにおいても一定の人気を得て、花屋・パン屋・牛乳配達などの業務用から、キャンピングカーに改造されての自家用まで、多くのAKが受け入れられて今も活躍しています。
写真のAKは、現在業務で使用している様子はなく、一方でキャンピングカーとしての改造も施されていないので、生産ラインから出たそのままの様子を残している珍しい個体と言えるでしょう。2頭の馬がモチーフのボンネット・マスコットは、日本に輸入される2CVの中にも稀に装着されているのを写真で見たことがありましたが、現物を見たのは初めてでした。全体的に綺麗なコンディションで、Hナンバーも取得している様子から見ると、オーナーがこだわりと愛情を持って維持している様子が伺えます。自家用車ならともかく、こうした商用車がよい状態で残っていくことは大変珍しく、貴重な個体と言えるでしょう。いつまでも元気に、ヨーロッパの路上を走り回ってもらいたいものですね!
[ライター・カメラ/守屋健]