オーナーインタビュー
更新2020.06.28
シトロエンなしでは生きられない!フラッグシップセダンCXと心を通わせる永野然次さん(50才)
細谷明日葉
久々のオーナーインタビューは、湘南エリアにお住まいの永野然次さん(50才)と、その彼が愛してやまない1987年式シトロエン CX 25GTi。
フランス車の中でも抜きんでた個性を放つシトロエン。その飽くなき魅力を存分に語っていただきました!
血は争えない?!幼い頃よりシトロエン漬けで育った永野さん
永野さんが幼少期を過ごした70年代、まだまだ日本では“ガイシャ=ドイツ車”のイメージが強く、今ほどたくさんは見かけなかったことでしょう。
そんななかでもシトロエンをチョイスするという、ちょっと個性派(?)な家庭で育った彼。
現在の愛車であるCXにたどり着くまで、どのようなカーライフを歩まれてきたのでしょうか。
「まず、祖父がGSAを所有していました。仕事でフランスと取引があったこともあり、文化としては身近だったようです。その仕事を手伝っていた父も、元々クルマが好きでホンダ車を乗り継いでいましたが、出張でフランス文化に触れたためか、やがてBXを購入したんです」
なんと、永野家3世代にわたってシトロエンオーナーとは、筋金入りのシトロエンファンだということが伺えます。
初めておじいさまのGSAに乗せてもらったときは、「なんか変わったクルマだなぁ」と感じたようですが、いつしか『家のクルマ』がシトロエンになってからは、日常の移動も旅行も、すべてBXでこなすのが当たり前となりました。
そんな子供時代を送ってきた永野さん。クルマ=シトロエンの構図は当たり前であり、いざご自身が免許をとってからも、購入するクルマはシトロエン以外はあり得ないと思っていたそう。
「CXは小さい頃に見た際、流線型の独特なスタイルにかなりの衝撃を受けたのを覚えています。ただ、初めてのクルマを買う頃はまだ学生だったので、フラッグシップのお値段はとても出せません。そこで、まずはAXの試乗車あがりを射程圏に入れました。まぁそれでも、父からは学生の身でナマイキだって言われましたけど…(笑)」
手始めに(?)AXからドライビングライフに入門した永野さん。
CXへの憧れはもちつつも、AX→BX(中期型)→BX(後期型)と、順当に歩みを進めていきました。
一時期はお父さまのBXと、2台並べられたこともあったのだとか。
残念ながらAXは廃車となってしまったようですが、2台目のBXは、今もご友人が所有しているそう。
そして満を期した永野さん、いよいよCX購入に踏み出すときがやってきました!
購入から現在にいたるまで…
チャンスが巡ってきたのは今から18年前。
某オークションサイトにて、現在のCXと邂逅しました。
「たまたま見つけた」くらいの感覚で、当時の愛車であったBXも好調だったそうですが、やはり子供のころからの憧れが強かったため、悩んだ末に購入を決意。
幸い、BXの引き取り手も見つかって、いよいよCXとご対面となりました!
購入時の走行距離は10万km弱。シトロエンが西武自動車販売で扱われていたころの正規輸入車で、永野さんで3オーナー目。
「整備記録も新車購入時からすべて残っていました。で、一番最初のオーナーさんの車検証も残っていたんですよ。見てみたら兵庫県神戸市の高級住宅街…。当時の新車価格は高かったですから、合点がいきましたね。もうかなり前のことになりますが、試しに一度、その住所を頼りに現地に赴いてみたことがあるんです」
まさかの古巣訪問です(笑)。
結果的には、その住所には建物こそ残っていたものの、人が住んでいるような気配はなく、空き家だったようですが…「あぁココにいたんだねぇ」と、感慨深い気持ちを味わうことができたそうですよ。
さて、手に入れたといえど、やはり87年式のクルマなわけで…。
ここからコツコツと、永野さんは愛車のリフレッシュに着手しました。
「ガラスコーティングは施工していて、今日(インタビュー当日)も実はコーティングのメンテナンスをしたばかりです。購入後も、いっぺんに全部はできなかったので、ちょっとずつ全塗装をしていきました」
▲カラーは純正色である『ブルーマグネティーク』をキープ
「基本的にオリジナルを保っていますが、なかなか施工先が見つからなかったのはホイールです。塗装部分とアルミの削り出し部分に分かれているのですが、白っぽく酸化してしまったアルミのバフ掛けと、塗分けを受けてくれるショップがなかなか見つからなくって…」
▲凝ったデザインのアルミホイール。塗装部分もほぼ純正に寄せていますが、ハブボルトだけは永野さんの好みでメッキにカスタマイズされています
最終的には、同じCX乗りであるご友人にショップを紹介してもらい、そこで施工してもらうことができました。
今、ひととおりリフレッシュされた永野さんのCXは絶好調!
オドメーターは22万kmに達していて、この1台で日常のすべてをこなしています。
個体の当たりはずれなんていうのも良くある話ですが、やはりフラッグシップモデルなだけあって、特にCXは丁寧に造られていると感じるそうです。
▲サイドの2本プレスラインに着目してもらいたいと説明する永野さん。古いクルマのはずなのに、どこか近未来的な造形美
▲トランクもシトロエンがぎっしり!ハイドロのオイルは蛍光グリーンのような色をしていると、ボトルを開けて見せてくださいました。コアな永野家のみなさまも、代々緑の血が流れているとかいないとか…?!(笑)
入念なお手入れにより、内外装ともに3人が乗り継いだとは思えない美しさ。
「古いクルマでも、きちんと手を入れていれば日常使いに十分耐えうることを実証しているつもりです」
▲リアウインドウは緩やかな凹型の弧を描く
▲エンジンルームにはハイドロニューマチックのスフィアが!
とにかく深い!永野さんのシトロエンライフ
じゃんっ!!
ご覧ください!こちら、すべて永野さんのコレクションです!!
「いつも床がこんななわけじゃないですよ(笑)。撮影用に並べただけです」とおっしゃっていましたが、ものすごい量のカタログやミニカー類……!!!ステアリングまでありますね。
国内外のオークションや通販を駆使して集めた、珠玉のシトロエンコレクションと言えましょう。ご自身が所有していた車種のみならず、シトロエン車関連であればとにかく集めているのだそう。
実に愛で満ち溢れた“MAN CAVE”!
ダブルシェブロンがクルマになったポスターもおもしろいですね!
「これはですね…昔のポスターのデッドストックで、レプリカとかではなく本物なんです。A1サイズなのでかなり大きいですし、お値段も…結構しました。有名なフランスのイラストレーターさんの作品で、この絵自体は知っていはいましたが、それがまさか…横浜の某百貨店の欧州作品ギャラリーで売られていたんですよ!購入には相当悩みましたが…背中を押してもらえたこともあり、買っちゃいました!」
ちなみにこちらの写真は『日本シトロエンクラブ』の会報誌なのですが、なんと永野さんは会員でもあり、会報誌製作にも携わっている重鎮です。
▲本国シトロエン社内誌のデザインを踏襲した会報誌
そしてなんと今回の取材のために、欧州版シトロエンのカタログまで披露してくださいました!
「シトロエンのカタログは、もはや美術作品なんです。表紙をパッとみただけでは何のクルマのカタログなのかもわからないようなデザインだったり、中身も写真集のようだったり…。こんなカタログ、日本じゃあり得ないですよね」
▲配色やレイアウト、何から何まで非常に前衛的。クルマ選びの冊子というよりも、アートを見ているような感覚
このような販促品も含め、永野さんはどっぷりとシトロエンに魅了されているのでした。
ドライブフィールもお気に入り。筆者、突然の試乗体験!
取材中、あまりに楽しくなってしまい、すっかり車両以外の話でも盛り上がってしまいましたが…
コレクションやスタイルだけではありません。CXの独特な乗り味も、永野さんにとって欠かせない惚れ込み要素です。
「ハイドロニューマチックの乗り味と、シートの心地よさは格別です。高速走行時の安定性も素晴らしいですし、長距離移動でも疲れないんです。それにシトロエンの場合、“ただ柔らかいだけのクルマ=つまらない”っていうことではありません。クセのあるショートストロークなブレーキはとっても優秀ですし、ソフトな乗り味でも、ステアリングからはきちんと路面のインフォメーションが伝わってきますから」
百聞は一見に如かず。なんと実際に運転して味わってみて欲しいとおっしゃる永野さん!!
これほどまでに情熱を語っていただいたあとなので、気後れしてしまうのですが…せっかくなので、周囲を少し流させていただくことに。
▲ぱっと見、どう握ればよいのか戸惑いそうなワンスポーク。ですがきちんと10時2時の位置でも指が吸い付く、絶妙な凹凸がついています
▲ヘッドレストの調整もホック式なのが独特
おっしゃる通り、確かにブレーキの踏みしろは極めて少ないです。けれどコントロール性は抜群で、効かせたいときにはキッチリ効く優秀さ。
ハンドルの応答性もよく、決して疲れるほどではない適度なキックバックが手に伝わるので、フワフワした脚回りでもきちんと路面が読み取れます。
加えて、ほんのりコトコトと感じられるOHVの振動も心地よく…。
▲足をかけたくらいで効き始めるブレーキ。目いっぱい踏んでも、沈み込むのはわずか1~2cmほどの感覚
途中、少し速度を上げられる区間があったので、思い切ってアクセルを開けてみると、油圧でコントロールされたステアリングの感覚が変化。
これもハイドロの恩恵で、高速走行を快適にするためにハンドルの重さを変える機構なのだそう。
また、セルフセンタリングも働くため、非常に安定しています。
「このクセをぜひ体験してもらいたかったんですよ!ほかのクルマにはない乗り味でしょう。踏みしろが少ないブレーキの扱いひとつとっても、日々『お、今日は自分乗れてるなぁ。今日はちょっと調子悪いなぁ』とかが体感できるのも、運転の楽しさに繋がっています」
そう話す永野さんの表情はとても輝いていて、18年も乗り続けていながらも、まだまだ日々新鮮さを感じ続けているように見えました。
こういう“個性”が光るクルマは、必ず人を惹きつける力が宿っているもの。
実際にコンビニに停車していた際も、複数名のギャラリーに囲まれておりました(笑)。
大切なCXを運転させていただき感謝です!
一歩、シトロエン車への理解が深まった気がします。
この溺愛っぷりで、他に欲しいクルマはあるのでしょうか…?
「この世には2種類のクルマしかない。シトロエンか、シトロエン以外か」
某タレントさんの名言に、こんな一節があるそうです。
幼いころよりシトロエンの魅力にハマり、CXを溺愛する永野さんに、ちょっと困らせてしまいそうな質問を投げかけてみることに。
オーナーインタビューでは毎度恒例の、手に入れたいクルマ上位3車種と、上がりの1台をピックアップしていだきました。
「憧れの1台はDSですね。2番目は軽快なハイドロ車のBX、3位はAX、軽くてコンパクトで、運転していて楽しいクルマです」
なるほど、シトロエンファンであればDSは孤高の存在ですものね。いつもイベントでは注目度ナンバーワンな気がします。
2位・3位には、なんと以前所有していたクルマがランクイン!
「上がりの1台は…やはり今のCXでしょうか。それなりに苦楽をともにしてきていますから。それと、夢というか理想というか、シトロエンABCD構想を実現させられたら最高です!AX・BX・CX・DSを並べられたらなと(笑)」
実に永野さんらしいご回答!ぜひ、その構想実現させちゃってくださいっ!!
▲ともに欧州仕様のDSカタログ。表紙はハイドロのイメージが表現されているのみで、車名の記載は見当たらず…(笑)
もはや、永野さんにとってシトロエン、そして愛車CXはなくてはならない大切な存在。
趣味の領域を超え、カラダの一部となっているのかもしれません。
ここまで愛してもらえるCXも、永野さんの元へたどり着くことができて、さぞかし幸せを噛みしめていることでしょう。
永野さん、素晴らしいひとときをありがとうございました。
これからも楽しいシトロエンライフを堪能してくださいね!!
オーナープロフィール
お名前:永野 然次さん
年齢:50才
職業:会社員(予備校講師)
愛車:シトロエン CX(25GTi)
ミッション:3速AT
[ライター・カメラ/細谷 明日葉]