
ドイツ現地レポ
更新2017.11.23
おしゃれで希少な限定車「シトロエン2CVドーリー」をベルリンにて発見!
守屋 健
そんな寒空の下で見かけた、1台のシトロエン2CV。コンディションの良好さに少し心惹かれつつも、何気なく通り過ぎようとした瞬間、「DOLLY」のロゴが目に飛び込んできました。この個体は、2CVの数ある限定車のひとつ、「ドーリー」だったのです。
20世紀を代表する名車のひとつ、シトロエン2CV

CLにもたびたび登場しているシトロエン2CV。20世紀を代表する名車のひとつであることに疑いの余地はありません。20世紀でもっとも影響力があったとされるクルマに与えられた自動車賞「カー・オブ・ザ・センチュリー」では、最終選考の26台の中にノミネートされています。
「カー・オブ・ザ・センチュリー」は世界中の専門家たちの意見をもとに、3年もの期間をかけて候補を絞り込んでいったため、とても興味深いものとなっています。最終選考の26台中、シトロエンは最多の3車種(トラクシオン・アヴァン、2CV、DS)がノミネートされていて、後進のクルマに与えた影響の大きさがうかがえます。

1999年末に発表された最終結果は、1位「フォード・モデルT」2位「ミニ」3位「シトロエンDS」4位「フォルクスワーゲン・タイプ1」5位「ポルシェ911」で、結局2CVは選ばれませんでした。選ばれた多くが大衆車の中、高級車であるシトロエンDSとポルシェ911がランクインしているのは特筆すべきでしょう。ちなみに最終選考に残った26台のうち、残念ながら日本車は1台もノミネートされませんでした。
たとえ「カー・オブ・ザ・センチュリー」のような自動車賞が存在しなくても、シトロエン2CVが長きに渡り、フランスのみならず世界中で愛されている偉大な大衆車であることは間違いないでしょう。1949年の登場時から1990年の生産中止までの42年間、大きなモデルチェンジがないまま387万台以上が生産されました。
シトロエン2CVには多くの派生モデルや限定モデルが存在

長い歴史のうち、多くの派生モデルや限定モデルが存在します。派生モデルをあげていくだけでも、バンタイプの「AU」「AK」「AZU」、ツインエンジンの4WD車「サハラ」、シャシーを流用してFRPボディを載せたクーペ「ビジュー」、「小さなDS」として生まれた「アミ」、後継車として作られるも先に生産を終えてしまう「ディアーヌ」、セダンベースのSUVのはしりとも言える「メアリ」、と枚挙にいとまがありません。シャシーとエンジンの簡素で合理的な設計が、プラットフォームとしての柔軟性すら備えていたのです。
2CVの基本メカニズムはそのまま、カラーリングや装備品だけを変更した限定モデルの数も多く、代表的なものをあげるだけでもかなりの数になります。
・1976年 「スポット」
・1981年 「007」
・1983〜1984年 「フランス3」
・1985〜1986年 「ドーリー」
・1986年 「ココリコ」
・1988〜1989年 「ペリエ」
・1980〜1990年 「チャールストン」
1970年代以降、経済性や入手のしやすさから、2CVのメインターゲットは若者層に移ったため、限定モデルによって自由でおしゃれなクルマにイメージチェンジを図ったのでしょう。限定モデルとして登場した「チャールストン」は好評につきカタログモデルに昇格、最終年まで生産される人気モデルとなります。
ここに紹介する「ドーリー」の名前は、アメリカで1964年に初演されたミュージカル「Hello, Dolly!」から取られました。このミュージカルは大変な人気で、その年のトニー賞を10部門で受賞するなど総なめ。2017年11月現在もブロードウェイで上演されている、ミュージカルの代表的な演目のひとつです。
シトロエン2CVドーリーはわずか3000台生産の限定車

「ドーリー」は3000台が生産されました。ミュージカルの主人公ドーリーのイメージに合わせ、カラーリングは女性向けにツートンカラーが用意されていて、その数はなんと7種類。一説によると、日本にも20台前後が正規輸入されたそうです。現在のヨーロッパでは見かけることが少ない希少車ですが、現地の中古車市場での人気はいまだに高い状態が続いています。
写真の個体も、黄色味がかったクリーム色とあずき色の塗り分けが大変おしゃれで印象的ですね。フロントバンパーはどこかに行ってしまったようですが、それ以外はとても良いコンディションを維持しています。筆者の近所には2台の2CVが生息しているのですが、どちらもかなり走り込んでいてボロボロなので、これほどきれいな状態の2CVは久しぶりにお目にかかりました。
ドイツでは日常的に見かけるベーシックカーであるシトロエン2CV。動力性能の低さはどうしようもありませんが、それでも多くのドライバーが笑顔で運転しているところを見かけると、このクルマが与えてくれる「楽しさ」は老若男女共通で、国境を越えても不変なのだと実感します。そして、このユーモラスな外観で周囲の見る人々に笑顔を振りまきながら、まだまだこの先も長きに渡って走り続けてくれることでしょう。
[ライター・カメラ/守屋健]