ライフスタイル
更新2017.12.19
クルマを乗り換えただけで煽られる機会が激減。小型車やエコカーは煽り対象になりやすいのか?
JUN MASUDA
そこで、まず感じたのが「無理に割り込まれたり、煽られることがなくなったな」ということだ。
BMW i3に乗っていて一番悩まされたのが割り込みだった
実際のところ、ボクがBMW i3に乗っていた頃、一番悩まされたのが「無理な割り込み」と「煽り」だ。
ここで詳しく説明してみよう。
人によって、クルマが変われば運転が変わる人がいる。
もちろん、その逆も。
ここでボクはこの良し悪しを語ろうというワケではない(そもそもこれは属人性の問題であって、いいかそうでないかという話ではない)。
ボクについていえば、クルマが変わっても、基本的に運転スタイルは変わらない。
スポーツカーに乗ったからといって公道でその性能を試すような運転はしないし、エコカーに乗ったとしても燃費を稼ぐため、必要以上にゆっくりと走ることはない。
基本的にはどんなクルマに乗ったとしても、法定速度を守り、一定の車間距離をあけて走る。
ボクは、BMW i3に乗る前にはポルシェ・ボクスターに乗っていた。
そしてBMW i3に乗り換えたのだが、しばらくして「なぜこんなに無理に割り込まれたり、割り込まれるのか」と感じるようになった。
はじめのうちは、その理由がわからなかった。
しかし、ある日ふとボクは気づく。
「BMW i3に乗り換えたこと、つまりクルマが変わったことが割り込まれる直接の原因ではないか」。
ボクは、毎日ほぼ同じ時間帯に、同じ道を走る。
そこにはやはり、同じような行動パターンを持つ「同じ顔ぶれ」が何台かある。
イエローの日産フェアレディZや、ライトブルーのパジェロミニ、レッドのランエボⅩ、シルバーのホンダ・インサイト、ホワイトのBMW M3などだ。
そういったクルマたちが、ボクがBMW i3に乗り換えた途端、割り込んだり煽ったりしてくるようになったのだ。
もちろん、彼ら(彼女らかもしれないが)はボクがクルマを乗り換えたこと、つまりボクスターとi3のドライバーが同一人物だとは知らない。
ここで、読者の皆様はこう思うだろう。
BMW i3に乗り換えて、チンタラ走って周囲に迷惑をかけているんじゃないか、と。
BMW i3の加速性能、走行性能は低くない
だが、ここでボクが強調したいのは、BMW i3の走行性能は低くない、つまり「遅くはない」と言うことだ。
BMW i3の0-100km/h加速は7.1秒である。※レンジエクステンダー搭載車は7.3秒
これは、トヨタ86やマツダ・ロードスターよりも速いタイムだ(トヨタ86は7.5秒程度、マツダ・ロードスターは8.6秒程度というテスト結果が出ている)。
しかもEVなので、停止状態や低速域での加速はガソリンエンジン車に比べてずっと優れる。
これはテスラ・モデルSやモデルXが、名だたるスポーツカーたちを加速競争にて打ち負かす数々の動画を見てもわかる通りだ。
事実、ボクはBMW i3について、「かなり速い」「キビキビ走る」という印象を持っている。
その印象は、ポルシェ・ボクスター、アウディTTと比較しても変わることはない。
だから、BMW i3を運転していた時は、けして「ゆっくり走って」いたわけではない。むしろEV特有のトルクを活かしてスポーティーな走りをしていた、と言ってもいいくらいだ。
つまりはポルシェ・ボクスターに乗っていた頃と同じような運転をしていた、ということだ。
だが、ボク自身や運転は変わらなくとも、クルマが変われば周囲にとって何かが違って見えたようだ。
ボクスターに乗っていた頃と変わらない車間距離をとっていても、そこに割り込まれることが多くなった。
同じ速度で走っていても、後ろのクルマが車間を詰めてくることが増えてきた。
そして、割り込まれた後の「サンキューハザード」もなくなった(別にお礼をして欲しいのではなく、単なる事実だ)。
それはポルシェ・ボクスターに乗っていた時とはあまりに差があり、あまりに露骨だった。
アウディTTに乗り換えたら、再び周囲を走るクルマの挙動が元に戻った
そんな状況だが、アウディTTに乗り換えたのち、状況が一変した。
「割り込み」「煽り」がピタリとなくなったのである。
だが、クルマのドライバーであるボク自身が変わることはないし、運転も変わらない。
ただ、変わったのはクルマだけだ。
それでも、毎日同じ道を、同じ時間帯に走る他の車の動きは明らかに変化した。
つまり、周囲のクルマは、前を走るクルマの実際の挙動よりも、そのクルマがどういった種類なのかを見てから行動を決めているのだ、とも考えられる。
スポーツカーだと割り込んだり煽ったりはしないが、BMW i3だと同じ車間距離をあけて走っていても、同じ速度で走っていたとしても、「ゆっくり走っている(もしくは道を塞いでいる)」と感じるのかもしれない。
もしくは電気自動車は「遅い」という先入観があり、そういった遅いクルマの前に出たい、という気持ちがあるのかもしれない。
BMW i3が電気自動車だと知らなかったとしても、後ろから見た時の「細すぎる」リヤタイヤが「スピードとは無縁」のクルマであると直感的に思わせるのかもしれず、そういったクルマが前を走っていることが許容できないのかもしれない。
※BMW i3のリヤタイヤはグレードにもよるが、155もしくは175幅だ。スズキ・ワゴンRスティングレーのタイヤ幅は165を採用している
小さなクルマはそれだけで割り込みや煽りの対象になることも
実際はどういった心理で周囲のドライバーが動いているのかはわからないが、そこで今までボクが乗ってきたクルマはどうだったのか、をふり返ってみた。
ボクが乗ってきた中ではフォルクスワーゲン・ルポ、日産パオ、ミニクーパーSが比較的小さなクルマだ。
そして、それぞれのクルマにおいては、やはり危険な思いをした経験があることを思いだした。
中には一方的な悪意としか感じられないような嫌がらせを受けたことだってある。
反面、大きなクルマ、例えばホンダ・エレメントやレンジローバー・イヴォークついてはそういった記憶は一切ない(確かにそういったクルマの前に無理に入ろうとは考えない)。
そう考えると、やはり「小さなクルマ」「遅そうに見えるクルマ」は軽視される傾向にある、もしくは「前に入りたくなると感じさせる」のは一つの事実と言って良さそうだ。
そしてこうやって考えていると、恥ずべきことであるが、ボク自身にもそういった傾向があることに気づく。
「人のふり見て我がふり直せ」とはよく言ったもので、今からでも「クルマを見て」一方的な判断をするようなことはやめようと思う。
そのクルマにはどんな人が乗っているかわからないのだし、普段はメルセデス・ベンツSクラスに乗っている人が、代車などなんらかの事情によってその小さなクルマを運転している可能性だってあるのだから。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]