ドイツ現地レポ
更新2020.06.18
日本ではカー用品店でも入手できるレーダー探知機、ドイツでは違法
守屋 健
ドイツの高速道路は無料ですから、ETC車載器は必要ありません。ドライブレコーダーをはじめとする車載用カメラは、現在ドイツでは法的な扱いについての議論の真っ最中で、車内に搭載している人はほぼいません。そして、日本では極めて一般的で、逆にドイツではまったく見かけないのが「レーダー探知機」です。
なぜ、ドイツではレーダー探知機をつけないのでしょう?その理由は簡単。「違法だから」です。今回のドイツ現地レポは、日本とドイツではまったく取り扱いの異なる「ドイツのレーダー探知機事情」について紹介します。
スマートフォンアプリの使用も禁止
日本においては、日々進化する警察の速度取り締まりに対し、新しい取り締まりシステムに対応したレーダー探知機をメーカーが開発・販売するという「いたちごっこ」が延々続いているのが現状です。新型のレーダー探知機が登場するたび、その効果を検証する記事や動画が公開される…というのもよく見かけますが、ドイツのインターネットやクルマ雑誌でそうした記事を見ることはありません。
ドイツでは「レーダー探知機の使用は違法だから」です。
単体のレーダー探知機を装備していた場合はその場で没収、破壊される場合があります。近年は、スマートフォンのナビゲーションアプリでも速度違反取り締まりカメラの位置を自動的に警告してくれるものがありますが、運転中にこうしたアプリを使用することは禁止。さすがにスマートフォン自体を没収・破壊されたという話は聞きませんが「そうしたアプリの使用は絶対に避けるべき」という認識が一般的です。
罰金は75ユーロ(約9,100円)。さらに1ポイントの減点が加わります。
ドイツではレーダー探知機の取引や所持自体は合法なのですが、車両内での持ち運びやデバイスの操作は禁止されています。また、レーダー探知機の販売契約が「道徳上好ましくない」とされているため、返品の権利が認められていません。つまり、レーダー探知機を購入して不良品だった場合でも、販売者に対して返品し返金を求める、ということができないことになっているのです。その結果、今のドイツでレーダー探知機を購入しようという人はほとんどいません。
ヨーロッパでは多くの国が禁止対象としている
実はドイツのみならず、ヨーロッパでは多くの国がレーダー探知機の使用を禁止しており、なかにはフランスやフィンランドのように、所持しているだけで高額の罰金を科せられる国もあります。ルクセンブルクやオーストリアは最大5,000ユーロ(約600万円)の罰金が規定されているほか、運転免許停止や懲役刑などの厳しい罰則がある国も珍しくはありません。
在ドイツ日本大使館によれば、日本国内仕様のレーダー探知機をドイツ国内に持ち込み、車内に所持していたところ、警察官に没収・罰金が科せられたという事例もあったそうです。「海外では使用できません」と取り扱い説明書に明記されている電子機器については、使用はもちろん所持についても禁止されている場合があるので、細心の注意が必要ですね。
取り締まりの最新情報はラジオで入手!
では、ドイツで速度取り締まりを行なっているという情報はどこで入手すればいいのでしょうか?もっともリアルタイムに入手できるのは、やはりラジオです。ラジオでは、速度取り締まりをしているエリアを交通情報とともに発信している場合があります。他には、市や州の公式サイトやツイッター、新聞などで速度取り締まりの予告を行なっていることも。この2020年代にラジオと新聞の情報が有益とは、なんともドイツらしいアナログ感だなあ…と個人的に感じています。
地元の人間にとって、道路備え付けの速度取り締まり機器はあまり有効ではないため、移動式機器による抜き打ちの速度取り締まりも並行して行われています。ドイツでは「速度超過による違反金を市や州の財政に補填しているのでは?」という訴えもあったのですが、それについての行政側の回答は「速度取り締まりにかかるコストは、違反金を上回っている。人身事故の約25パーセント、死亡事故の約50パーセントが速度違反が原因または遠因になっており、速度取り締まりは純粋に死傷事故軽減のためだ」というものでした。とはいえ、現在でもこうした議論は継続して行われています。
ドイツで運転していると制限速度を守るドライバーが非常に多いと感じるのですが、その原因のひとつに「レーダー探知機の使用禁止」が大きく役に立っているのは間違いありません。制限速度以上の走行が常態化し、あおり運転などが問題になっている日本でも、こうしたドイツの思い切った取り組みは参考になる部分があると思いますが、みなさんはどう感じますか?それでは、また次回のドイツ現地レポでお会いしましょう!
[ライター/守屋健]