ライフスタイル
更新2021.01.24
25歳のクルマ好きが、15年後の未来に向けてできることは?
長尾孟大
言うまでもなく現在は、自動車を取り巻く環境が急激に変化している過渡期である。動力の電動化、自動運転、カーシェアリングサービスの普及…これらが進展した自動車業界の15年後は、現在とはまったく異なる様相を呈しているのだろう。
自動車の未来がこれからどのように変貌してゆくのか。私なりに考えてみることにした。
■15年後の日本のカーライフはどのようになっているか?
東京都知事が、都内で販売される乗用車について、ガソリン車(HV除く)を2030年までにゼロにする目標を表明したことは記憶に新しい。だが、自工会の豊田章男会長が声明を発表したように、自動車は100%電動化されることはないと考えている。
ほとんどの自動車がハイブリッドなどエンジン+αの形態の動力源を有し、純粋な内燃機関だけで走る車はごく一部の希少な存在になっているであろう。
そして、自動運転の技術が現在よりもさらに進展すれば、自動運転車が街中を走る未来もそう遠くないだろう。15年も経てば、少なくともバスやタクシーといった交通機関は自動運転車になっているのではないかと考えている。
ここ数年間で急速に普及したカーシェアリングも、都市部ではさらに浸透し、自動運転の進展と相まって自動車を所有するメリットはさらに薄まっていくのではないだろうか。
だが、どんなにカーシェアリングが普及しても、誰も自動車を所有しない社会が訪れるとは思えない。なぜなら、自動車は地方では使用頻度の高い生活必需品であるからだ。
そして何より、私達のようなクルマ好きにとっては、「マイカー」とはアイデンティティを示す重要なアイテムだからだ。ファッション好きが、合理性だけを追求して毎日同じ服を着ないように、自動車は自分のキャラクターを示す重要なアイテムとして、多様化していくであろう。
▲夕暮れどきのドライブは、日頃の疲れを忘れさせてくれる
■15年後にも、現在の人気車種は街中を走っているのか?
自動車の未来というと悲観的観測が多いイメージがあるが、現代のクルマ好きがこれから先もカーライフを楽しめるような環境が整いつつある。
それは各自動車メーカーによる「人気車種のレストアサービス」だ。
例えば日産スカイライン、マツダ NAロードスター・RX-7、ホンダ ビートなど、各メーカーごとに愛好家の多い人気車種は、復刻パーツの販売や部品の再生産がはじまっている。
自動車メーカーにはクルマ好きの要望に応えたいという想いがあると信じている。しかし、企業である以上、想いだけでは動けないというのが現実だ。このようなサービスで多少なりとも採算がとれると判斷したからこそ、まずは超人気車種を対象にこのようなサービスを始めたのではないだろうか。
このサービスに継続性が担保されるということであれば、現在の超人気車種はきっと15年後にも元気な姿で街中を走っているであろう。
▲ロードスターといえばNA(初代)という人がいまだに多い
■自動車の「趣味性」がさらに拡張した未来
モータースポーツ分野におけるトヨタの企業努力には目覚ましいものがある。
市販車種でいうと、スープラの復活とホットハッチであるGRヤリスが登場。さらに、GRブランドではモータースポーツファン向けにサーキット向けの高性能エンジンオイルやイグニッションのクリーナーまで発売している。さらに、「GR Garage」という店舗までを展開中だ。
モータースポーツに触れたいと思っている人にとっては、昔よりもむしろ触れやすい環境が整っているのではないだろうか。
このように、自動運転やカーシェアリングの普及で自動車が合理化していく一方で、趣味として自動車に関わるユーザ向けに、趣味性をさらに拡張させたコンテンツや施設は充実していくように思う。
実際、ポルシェはドライビングが楽しめるトラック「PORSCHE EXPERIENCE CENTER TOKYO」を千葉県・木更津に建設中だ。BMWも、海外にはドライビングを楽しめる専用施設を建設しているし、国内でも走る楽しさを体験するイベントを主催している。
▲ニュルブルクリンクを走った際の相棒クリオRS
■15年後の未来に、自動車を楽しめる土壌をいかに残していけるか?
今後の自動車を取り巻く環境を想像すると、動力源の電動化や自動運転、カーシェアリングといった、クルマ好きとしては受け入れ難いトピックが多いように感じる。
私たちクルマ好きにとっては逆境に感じるかもしれない。しかし、いまはピンチでありチャンスだと信じたい。これからクルマの果たす役割というのが、他の家電のような無味乾燥とした「機能」を果たすだけのモノとなってしまうのか、それとも、多くの人の心を動かし、たくさんの学びや発見をくれる人生の相棒となるのか。
時代の分岐点に立たされているクルマ好きとしては、メーカーの取組みを応援していくことが必要なのではないかと感じている。その結果、前述のようなメーカーの取組みが、ビジネスとして回ることで継続的な取組みとなっていく。そうなれば、形は変わっても車好きの遊び場を残るのだ。
これから誕生する未来の子供たちが、自動車の様々な価値に気付き、体験する機会が生まれるに違いない。
とはいえ、きっと読者であるクルマ好きは多かれ少なかれ現状に危機感を抱いているはずだ。このままでは自分たちが好きだったクルマはなくなってしまうのでは?と。その危機感を焦りではなく、クルマの楽しさを発信するエネルギーに変えられたら、15年後の未来は大きく変わるのではないか。そう信じているし、信じたい。
現在、25歳の私が15年後には40歳になっている。15年後にいまの私と同じ年齢になるクルマ好きが楽しめる土壌を残せるよう、自動車メーカーとユーザーが相互に協力し合っていくことが、未来に向けてもっとも大切なことではないだろうか?それにはまず、私自身、行動に移してみることにした。現在、クルマ好きを増やしたい!という想いだけで立ち上げた「株式会社Carkichi」をさらに発展させ、自動車の付加価値を体験できる場所を作りたいと考えているし、その思いを原動力に現在も活動中である。
コロナ禍で難しい側面もあるが、これからもクルマを走らせる魅力を伝えたり、興味がない人の琴線に触れるようなイベントを企画し、継続して開催していきたい。単に批判したり、漠然と考えているだけではなく、行動あるのみだと信じたい。
▲年間参戦しているカートレースの様子
■Carkichiオフィシャルサイト
https://www.carkichi.com/
■Carkichi/YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCt9K6Ai1rvTh35eKbveDYGA
■Carkichi/twitter
https://twitter.com/carkichi_jp
[ライター・カメラ/長尾 孟大]